金曜ロードSHOW!、観ました
自分は放映前日にもブルーレイでまたまた鑑賞していたんだけど(笑)
やっぱり放送は気になるので最初から全部見た
で、
うーん、、、
やっぱり
CMはしょうがないとして、かなりの場面がカットされてましたね
金曜ロードSHOW!という、歴史のある国民的人気番組で『映画 聲の形』を放送してもらえたことは、作品のいちファンとしてとっても嬉しいし
人気番組なので老若男女 日本全国のお茶の間で今日初めてこの作品を見た という人も多いだろうと思うと、放送してくれた日テレさんには感謝なんですけど
だけど
かなり重要な場面が沢山カットされていたことだけは本当に残念です
正直あの放映内容だと、この作品の真の部分は初見の視聴者には伝わらなかっただろうなあ、、、と
もしかしたら誤解して受け取められてしまっているのではないかと
どうしてそう感じるのか
カットされていたシーンで主要なところだけ少し整理してみます
ということで、ここから先は思いっ切りネタバレのお話となります
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まず、この物語では小学6年生で転校してきた聴覚障害を持つ西宮硝子がイジメを受けるようになるわけだけど
そもそも彼女が障害を持っているからという理由で始めからイジメの対象になったというわけではない
クラスから浮いてしまって次第にイジメの対象になっていった経緯が本来はきちんと描かれているのに、まずその部分がまるっとカットされていました
最初の頃はクラスメイト達も転校生の硝子と仲良くしようとコミュニケーションしていました
その場面は放送でも流れていたけど
金ロー放映版ではイジメっ子にしか見えない女子の植野だけど、むしろ最初は植野が耳の聞こえない硝子の面倒を積極的にみてあげていました
放送ではカットされていたシーン
だけど硝子はどうも自ら周りに合わせようとするタイプではなく
そのことを印象付ける合唱のシーン
耳が聞こえないハンデはあるにしても、周囲を観察することなく一人で歌い始めてしまうエピソード
この場面もカットされてました
その様子を見て、それまで積極的に面倒を見ていた植野の気持ちも変化してしまう
と、ここまでの描写がカットされていたので、金ローの放映で初めてこの作品を観た人は、恐らく硝子が聴覚障害者だからイジメにあったという一方的な見方をしてしまったのではないかな?
と感じるのです
実際は硝子がクラスの中で浮いていってしまった理由は耳が聞こえないということだけではないはずなんだけど
そして小学生時代の話の中でも後半につながる特に大事なエピソード
硝子をイジメていた将也自身がクラスメイトからのイジメの対象になってしまって
ここで将也の身に起きていたこと、そしてそれに対して硝子がとっていた行動の場面
小学生時代のエピソードの中でも一番大事だと思われるこれらの場面が、まるごとカットされてしまっていた
クラスからイジメを受けてフラフラと教室に戻ってきた将也は、自分の机に何かをしている硝子を目にして
それを見た将也は腹を立てて硝子につかみかかり、硝子と取っ組み合いのケンカになります
その後硝子は転校してしまうのですが、硝子が転校して初めて将也は自分の机に心無いイタズラ書きをされていることを知り
あのときの硝子はこの自分の机への落書きを消してくれていたということを、彼女がいなくなってから初めて理解したのでした
これらの一連の流れがまるまるカットされていたのですが、このエピソードにはとても大事な意味があって
まず将也自身がもう完全にクラスの中で孤立してしまっていたという状況説明
そして硝子が転校した理由
・・・これも放送で初見の人には誤解されているのではないかなあ、と気になる
硝子が転校したのは自分がイジメられたからというわけではない、、と私は解釈していて
彼女は、自分のせいで将也がイジメを受けるようになった
そしてクラスの雰囲気を悪くしてしまったのも自分のせいだと
そのように思い込んでしまって、それが転校の理由だと思うのですが
その彼女の気持ちが、誰もいない教室で一人で必死に将也の机の落書きを消しているシーンに表れていて
なのでこの場面が無いと、硝子の転校理由は単に彼女がイジメられたから という短絡的な動機に誤解されてしまうのではないかな?と思うのです
そしてこのときの硝子の負の記憶が、後の高校生の展開の中で再び集まった小学時代の同級生や将也の高校同級生など、将也のまわりに一旦は出来つつあった友人関係が再び壊れた時、また自分のせいで将也の人間関係を壊してしまったと思い込むことにつながり
それによって彼女は自分がいるとまわりが不幸になる、だから自死を選ぶ という展開につながっていくわけで
小学生時代の将也の机の落書きの描写がなければ、なぜ硝子が後に自殺しようとしたのか、彼女の気持ちを理解することが難しくなるのではないかな、と感じます
この将也と硝子が取っ組み合いのケンカをする場面は、そのような後のエピソードへの伏線を抜きにしても、「相手に自分の気持ちを上手く伝えられない」 というこの作品のテーマを直接的に表現している、見ていて胸が締め付けられる名シーンのひとつだし
この場面がカットされてしまったのは本当に残念です
将也が高校生になって、いまだに過去を引きずってクラスの中で孤立している、というか自ら他人との関わりを拒絶しているということを描写したシーンもいくつかカットされていました
登校して校内のすべての人間の顔に×マークがついて誰とも心を開くことはない という印象的なシーンは放映版でも出てきましたが、
クラスの誰とも打ち解けることなく、皆自分の悪口を言っているだけだろう と自ら殻に閉じこもっている様子を描いた場面はまるごとカットされてました
さらっと流れていく場面ではあるかも知れないけど、このシーンは今の将也(小学生時代から5年後)の壊れてしまった心の内面を印象付けるシーンでもあって、これ以降の展開での将也の振る舞いや言動につなげていくための大事なシーンだったのでは?と思います
高校生になって一度は自殺まで考えていた将也が、硝子や高校の同級生で友人となった永束らと関わっていくうちに少しずつ心を開き始めたかに見えた頃、
彼の行動によって自然発生的に再会の輪が拡がった小学校時代の同級生たちと一緒に行った遊園地でのエピソード
このときの植野と将也の間に起きた展開もまるごとカットされていました
植野はここでの彼女の行動や言動と、それに対する将也の反応を感じたところから、硝子に対しては自分の考えをハッキリ伝えておこうと思うに至って、この後の観覧車エピソードにつながっていくわけだけど、
このときの植野と将也の話がカットされていたので、金ロー放映版では観覧車に硝子を誘った植野の動機の部分がわからず、植野の行動に唐突感があるように見えてしまいました
植野直花は
西宮硝子とは真逆で思っていることはストレートに相手にぶつけるタイプだけど、やはり彼女も伝えたいことが相手に伝わらなくて不器用なのに頑固な点は硝子と似ていて、本来は登場人物の中でも物語のキーパーソン的な色合いが強いのですが、
それなのに今回の金曜ロードSHOW!では彼女の登場場面のカットが目立ちました
後半で将也が大ケガをして入院していたときに毎日見舞いにきていたことを退院してから知らされた彼が、植野と和解して心を開いたシーンもカットされていました
ここでの彼女の言葉を汲んだうえでないと、ラストで彼女が硝子に対してとった行動への気持ちの変化の助走が少し不足ではないかな?と思いました
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他にもカットされていた場面は色々あったわけだけど
こうして様々な場面をカットされた金曜ロードSHOW!の『映画 聲の形』を通しで見てみた私の感想としては
なんとなく ですが
将也と硝子のラブストーリー仕立てに半分物語が変わってしまっていた印象を持ちました
そのほうが国民的人気番組の金曜ロードSHOW!としては視聴者の受けが良い という判断なのかな??
実際の『映画 聲の形』ではそんな話ではなく、もっと誰もが抱えている「人と理解し合うことの難しさと尊さ」を丁寧に描写していく深いテーマのストーリーだと思うのですが。。。
まあ、129分の映画作品なので
やはり地上波民放番組でノーカットというのは厳しい ということでしょうね