京都アニメーションの犠牲になられた方々のお名前が公表されました

 

とても

 

とても・・・

 

 

何とも言葉が出てこないです

 

 

やはり35名という数字で語られる以上に

 

おひとりおひとりの実名が出されてしまうと

 

あまりに重い現実

 

そして

 

どれほど無念であったか。。。

 

 

わたしは今週はEJアニメシアター新宿で上映されていた『リズと青い鳥』と『響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~』を観たのですが

 

エンドロールに出てくるスタッフの中には

 

犠牲者の多くの方のお名前がそこにありました

 

もしかすると『響け!ユーフォニアム』新作の制作に取り掛かっていたところを、犯行に巻き込まれてしまったのか、、、

 

スタッフの方全員で次の作品作りに向けて励んでいらしたのでしょうに

 

あれだけのいくつもの素晴らしい作品を作ってこられて

 

しかしそれが遺作になってしまうなんて

 

誰もそんなこと考えもしなかっただろうに

 

 

作品もそうですが、お一人お一人には誰にも日々の暮らしがあって

 

いつも通りに仕事をして

 

仕事が終わったらその日の生活

 

今度の休日には何をしようか

 

お子さんのいらっしゃる方は家族のことを考えたり

 

季節が巡ったらどこかに行きたいとか

 

そういう日々の幸せもすべて突然に奪われてしまって

 

どれほど無念であったろうか

 

 

実名報道には賛否ありますが

 

35人分のお名前の後ろにあるその大きなものが突き付けられた気がします

 

 

ご遺族のおひとりが涙ながらに訴えられていたこと

 

「我々残った者ができることは、そこで頑張っていたんだということを多くの人に記憶していただく、覚えていただく、忘れないでください、と言うしか出来ないと思います」

 

 

犠牲になられた方々のお名前は、制作に関わられていた作品にはきちんとスタッフロールにお名前が残されています

 

わたしはこれからも京都アニメーションの作品を観るたびに

スタッフロールに刻まれた犠牲者の方々のそのお名前を噛みしめ、その生きていた証を受け止め続けていきたい

 

そう思います

 

 

 

 

チーフスタッフ的なお仕事をされていた方々は、コメントやイラスト、中には実際のお仕事の様子などが公開されているものもあります

 

わたしが過去に集めていた物の中から、いくつかここに記録しておきたいと思います

 

 

 

事件が起きる前、京都アニメーション主催の「わたしたちはいま!! 特別展」というミニ展示が、期間限定で全国を順次まわっていく形で行われていました

 

これは5月にアニメガ京王八王子店で展示されていたときのものです

 

 

このパネルにはちょうど『誓いのフィナーレ』公開直後ということで、作品に関わったチーフスタッフの方々の直筆のメッセージ寄せ書きがありました

 

 

その寄せ書きです

 

 

このイラストはキャラクターデザインと総作画監督を務められた池田晶子さんのものです

 

 

 

 

 

 

もう一枚の寄せ書きです

 

 

こちらのイラストはもう一人の総作画監督を務められた西屋太志さんのものです

 

 

 

 

 

 

 

『響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~』の来場者特典で配布されていた特製コースターは、すべて本作のキャラクターデザイン&総作画監督である池田晶子さんの手書きイラストによるものでした

 

 

池田さんの描かれるキャラクターはいつも若々しく活き活きとして、そして少し色気も感じて、

 

そんな池田さんの絵がわたしは大好きでした

 

 

 

『響け!ユーフォニアム』で言うと、この作品に出てくる主要キャラクターの原案はアサダニッキさんのイラストによるものですが、そこに描かれていない生徒も含めて総勢100人を越えるOBも含めた吹奏楽部員のキャラクターデザインは、すべて池田晶子さんが生み出したものです

 

 

文字通り『響け!ユーフォニアム』の登場人物の母のような存在でした

 

池田さんが残された沢山の生徒達キャラクターが、いつの日かまた新たな物語で活躍することを、今はただ願うばかりです

 

 
(下は映画公開前日の池田晶子さん直筆イラストメッセージです)

 

 

 

 

『誓いのフィナーレ』のもう一人の総作画監督

西屋太志さんは、『リズと青い鳥』『映画  聲の形』のキャラクターデザインと総作画監督なども務められていました

 

西屋さんがお仕事をされている様子は『リズと青い鳥』メイキングの動画で紹介されています

 

 

 

西屋さんは『映画  聲の形』や『リズと青い鳥』では、若者たちの壊れやすく儚い心の内がキャラクター自身に投影されているような、とても繊細なタッチの絵を描いていました

 

 

 

これらの作品だけでなく多くの作品で作画監督や原画を担当されてきた、日本を代表するアニメーターのおひとり

まだ37歳という、若く才能に満ちた、これから先もきっと多くの作品を輩出できたはずの世界に誇れるクリエイターでした

 

 

『誓いのフィナーレ』の劇場パンフレットには、池田さんと西屋さんの対談の記事が掲載されています

 

その中から一部だけ転記させていただきます

(敬称略)

 

西屋:以前の作品では、僕がチェックしたものを池田さんにも見ていただく流れになっていたのですが、今回は後に控えてくださっていなかったので‥‥。

池田:前回は西屋さんが一人で全部見た上で私も全部見るというぜいたくな作り方だったのですが、今回は西屋さんが「全力で池田さんの絵に似せます!」って、すごくかっこいいことを言ってくれましたし、絶対かわいく描いてくれるのは分かっているので、「じゃあよろしく」って任せました(笑)。

西屋:当たり前のことですが、しっかり池田さんの絵の映像にしたいなぁと思っていたので。

池田:そう言ってくれる西屋さんなので信頼してお任せできるんです!

 

 

 

 

 『響け!ユーフォニアム』シリーズで楽器設定・楽器作画監督をされた高橋博行さん

 

メディアの報道では「原画担当」としか紹介されていませんが、この方の存在なくして『響け!』シリーズは成り立たなかったのではというほどの楽器作画スペシャリストの方でした

 

楽器作監の肩書きの通り、『響け!』シリーズに出てきた吹奏楽の楽器は高橋さんの手書きによるものだったからです

 

 

高橋さんも『リズと青い鳥』のメイキングビデオで作画のご様子が残っていますので是非ご覧いただきたいと思います

 

あの楽器ひとつひとつにどれほどの手間をかけて作画されていたのか、

ビデオを見れば驚きしかありません

 

 

 

高橋さんのご活躍についてはアニメスタイル007号 (2015.11月)の監督対談記事に詳しいです

 

(事件のせいですね。元は1700円の雑誌がプレミアついて凄いことになってますが)

 

 

対談記事から原文ママ、一部を引用させていただきます。

 

対談者は

監督の石原立也氏、チーフ演出の山田尚子氏、

インタビューはアニメスタイル編集長 小黒祐一郎氏です

 

 

小黒:そういえば、楽器作監の高橋(博行)さんは、やはり楽器にお詳しい方なんですよね?

石原:いや、正直言うと楽器に強いわけではないですね。 どっちかと言うとメカっぽいものを描くのが得意な人です。 楽器の複雑なパイプの取り回しとか、構造を三次元的に頭の中でイメージできるんですよね。 あれもひとつの才能だなと思います。 作画監督として修正とかを色々やっていたんですけど、結構苦労してもらいましたね。

小黒:楽器は3DCGを使っているんですか?

石原:一応モデルは作ってあります。 あたりと言いますか、レイアウト時の参考用ですね。 レイアウトでそれをあてて、原画でなぞるようなかたちで描いています。

山田:補足すると、3Dにする前に高橋さんが三面図を描いているんですよ。 それに合わせて3Dのメンバーがモデルを作って、高橋さんが「これだったら作画に使える」という域になるまでチェックしてました。 なので、線の省略とか、作画段階で補う部分とか、高橋さんによる抜き差しが凄く沢山あると思います。 あれはもう高橋さんにしかわからない暗号みたいなものですね。

小黒:暗号?

山田:というくらい、高橋さんでないと分からないんです。

石原:あと、影のつけ方とかね。 影は作画でやっているので、3Dで出力する時にはただの線画でしかないんですけど。

小黒:影とハイライトは手で描いてる?

石原:勿論手で描いてます。

山田:手で描いたものって、やっぱりかっこいいんですよ。

(中略)

石原:あと、3Dのモデリングをそのまま使うとなると、セルとの組みをどうやって作るんだ?という話になっちゃいますね。 キャラクターが持ってるだけじゃなくて、指を使って操作したりすると、合わせるのが途端に大変になる。

山田:もう絶対大変ですね(笑)。

石原:僕は最初、物量的にも楽器は3Dじゃないと無理だと思っていたんですよ。

(中略)

小黒:楽器への映り込みも作画しているんですよね?

石原:キャラの影が映り込んでいたり、光の加減が変わったりしていると思いますけど、キャラがはっきりと映り込んでるところはなかったんじゃないですか?

小黒:キャラはないですね。 漠然とした映り込みっぽいハイライトが描いてありましたが。

山田:それも高橋さんのかっこいいところですね。 「どういう脳内構造だったらこんなん描けるんですか?」ってよく聞きます。

小黒:じゃあ楽器については、高橋さんの手がかなり入っている?

山田:ほとんど全部と言ってもよいかと。

小黒:全部!?

石原:かなり研究はしていましたね。ユーフォとトランペットは会社に実物があったので、一生懸命見てましたもん。

 

(アニメスタイル007インタビュー記事より一部引用  以上)

 

 

そのようにして描かれた楽器の原画の線は本当に職人技です

 

 

こちらはパンフレットの表紙より

 

このユーフォニアムの立体感のある造形、そして陰影やハイライトのひとつひとつが、高橋博行さんでなければ表現出来ない絵であったということは、上にあげたインタビュー記事の通りです

 

 

高橋さんは人気作『けいおん!』でもギターなどの楽器やラジカセなど小物の作画監督を担当されていて、京都アニメーションの楽器を扱うアニメにはなくてはならない大きすぎる存在でした

 

…報道の方々はこのことをよくご存じないようで、高橋さんの功績については何も触れられていないのがとても残念でしたので、ここで詳しくご紹介させていただきました

 

 

(下は映画公開10日前の高橋博行さん直筆イラストメッセージです)

 

 

 

ここに書かせていただいた方々の他にももちろん、犠牲になられた方が作品に残されたものは沢山あり過ぎて、とてもここにすべてを書けるものではありません

 

これからもファンの一人として作品を観ることで亡くなられたスタッフの方々を偲び、素晴らしい作品の中に残されたお仕事のひとつひとつを大切に受け止めていきたいと思います

 

犠牲になられた方々のご冥福をお祈りします