昨日、日本アカデミー賞の各部門最優秀賞の発表がありました。

 

優秀アニメーション作品賞を受賞した「君の名は。」も「聲の形」も、私的にはどれも素晴らしい作品だと感じて繰り返し映画館へ通っているので、どの作品が選ばれても自分事のように嬉しいのですが、「この世界の片隅に」が最優秀アニメ作品賞を受賞したことは、色々な思いがあってやはり自分的には一番嬉しい結果だったかも知れません。

 

特に「この世界の片隅に」という作品は、主人公の声優がのんさんだというだけでTVメディアからは総締め出しを喰らっているという不遇の状況なので、作品自体にものんさんにも余計に肩入れしたくなります。

(いやですねー、こういう事務所問題だけで尻尾切りする生臭い業界の掟。こんなだから私は現在の新作出来るたびに番宣目的で俳優を繰り返しバラエティ番組に出してくるような、業界仲良しクラブ的TVドラマや実写映画のたぐいは一切見たくもないんです。もっと中身で勝負しろっての!)

 

もちろん作品自体がこの先20年30年後でも色褪せないであろう名作中の名作だと思うので、変な肩入れなど関係なく、堂々最優秀の称号は当然の結果だとは思いますが。

 

それにしても受賞しての片渕監督のコメントがものすごく心に染みました。
心が震える という感じ。

写真はYahoo!ニュースより引用

 

片渕監督のコメント、

「6年以上、諦めなくて良かったです。諦めなくて済んだのは、プロデューサーの丸山正雄さんが『もうちょっと続けようよ』と言い続けてくれたから。もし途中で『もう、いっか』と思っていたら、皆さんの心のなかにすずさんという、小さな、かわいらしい主婦の姿が宿ることがなかった。そう思うと、こういう風に立てているのが、色んな人の支えのおかげなんだなと思っています」

これまでもこの作品を語るうえで良く出てきた「6年の歳月をかけた」というフレーズは、言葉にしてしまうとそこには時間的感覚だけが支配しがちで、私のような凡人にはその間の葛藤まで全てを理解するまでには他の様々な情報を調べるまで気付かなかったりしたのですが。

簡単に「6年」と言ってはならない。
誰しも限りのある人生における中での6年です。
しかもその6年は仕事人生として許された僅か40~50年の中で、普通のサラリーマンならあと10年で引退という年代での6年。
しかもしかも、「この世界の片隅に」という映画作品はその制作初期では企画が映画作品として成立することすら危ぶまれ、大手配給はどこも触手を伸ばさなかったと。


そんな状況の中でも片渕監督は自分が作るという信念だけで、直接画面には出てこないものまで含めて、70年前の時代の考証作業を地道に時には「死にたくなる」と語りながらも、今は消えてしまったその時代の建物や文化を現代に再現させるための作業を続けた、ということをご自身のコラムの中で語られてます。〔片渕須直 1300日の記録〕


作品が成立しないかも知れないのに、自分の仕事人生の残された時間で見ればもうそれほど多くの作品を作り上げる時間があるわけではない中で、そのような熱意と執念をこの作品に注いだのです。

 

それがあっての授賞式でのあの言葉なので、特に私個人的には最近ほぼ毎日少しずつ片淵監督の「1300日の記録」を読んでいて、どちらかというと片渕監督が一番苦しんでおられた年月にタイムスリップしてしまっている感があるので余計に、昨日の授賞式の監督の言葉に重みが感じられて、心が震えるほどの感動を覚えました。


それだけの苦労が結実してひとつの作品として封切られたことだけでも素晴らしいことですが、その作品が多くの人々に無類の感動を与えて拡がり大ヒットとなって、さらには今回の最優秀アニメーション作品賞の受賞にまでつながったのですから、本当に監督のこれまでの苦労が報われたと感じます。

 

本当に本当に、おめでとうございました。

 

私は今日もまた映画館に「この世界の片隅に」を観に行きましたが、今日行った新宿ピカデリーでは、受賞を受けて最初の週末というためか、満席となっていました。

 

今回の受賞でこれからもさらに上映期間が延びてくれれば、観る側の私としては嬉しい限り。

ただ気になるのは、公開期間が延びれば延びるほどDVD/BDの発売は先延ばしかな?

もちろん作品は映画館で観るのですが、DVDで発売されたら監督がこだわり抜いた広島や呉の当時の景色など気になるシーンを静止画で隅から隅までじっくり観察したい思っているけど、それが出来るのはもう少し先になりそうですね。。。