(2/8追記 ようやくGoogleマップの埋め込み方法がわかったので、写真のポイントの地図リンクを貼りました)
 
週末の2日間で「この世界の片隅に」の舞台となった広島と呉に訪問してきました。
いわゆる今流行りの「聖地巡礼」ですが、「この世界の片隅に」の場合は今から70年前の世界なので、当たり前ですが映画や原作マンガで出てきた風景がそのまま残っていることは非常に稀です。
「この辺りを舞台としたのかな?」と想像を巡らせて、ひたすら痕跡らしきものを捜し歩く、
そんな旅となりました。
 
今回の持ち時間は、土曜の朝移動で11:30に広島駅に到着してから、翌日曜日の広島駅発17:30までの約1日半。
この短時間で本当に回り切れるのか?
しかも本来ならロケ地として広範でポイントの多い「呉」を日曜日にして時間を取りたかったのですが、あいにく天気予報が日曜日は雨だったので、雨の中の呉市内移動しながらの訪問はさすがにキツイので、土曜の半日で「呉」、日曜は雨の中を「広島」に行動予定を変更。
ますますすべてを巡るのは厳しいか?と不安を抱えての出発となりました。
 
結果的には2日間とも昼食抜きのハードスケジュールながら、予定していたポイントはすべてまわることが出来ました。
効率よく巡るための順路をあらかじめ考えたうえで現地入りしたことが大きいと思います。
もしも順路を考えず、グルメとかの聖地巡礼以外の目的も持って行ったとしたら、当然ですが2日間(実質1日半)で広島と呉の両方を巡ることなど無理だと思います。
 
70年も前の風景の痕跡を探しながらの訪問となるので、それなりに下調べはしました。
参考に出来る手持ちの書物関係は全部参考に、という感じです。
 
映画のパンフレットに始まり、公式ガイドブック、公式アートブック、絵コンテ、公式ロケ地MAPなどの中からヒントとなる絵やコメントを探し、それをGoogleマップやストビューでチェックして、おおよそこの辺りという目印を地図に書き込んで持っていく。
現地でわからなくなったらスマホで地図を開いて位置関係を見直す。
そんな感じです。
 
ここまで書いてみると、なんか苦行のように思われるかも知れませんが、実際は、いやー楽しかったです爆  笑
映画を観てるだけではわからないところも含めて、発見するたびに感激!でした。
 
たった1日半の訪問でしたが、取材(?)した写真や動画の量が膨大で、とても1日のブログでは書ききれないので、何回かに分けてアップしようと思います。
 
今日はまず物語の順番で広島の江波からスタートします。
実際に巡ったのは2日目の日曜日で雨でした。
しかも今回は平和記念資料館を見学する目的もあったので、実質の江波の滞在時間は2時間程度、雨の中なので写真撮影やロケ地探しもかなり限定的にはなりました。
 
前置きはこれくらいで、それでは訪問した地点のご紹介。
 
映画も原作マンガも一番最初に出てくるシーン。
母 浦野キセノがすずに海苔の入った箱の風呂敷を結わいてあげている海岸沿いの道路。


   Googleマップへのリンク

防潮堤で海が見えません(汗)
アングル的には写真の左上側に江波山が少し見える角度ということで、おおよそこの位置で間違いないと思われます。すずちゃんはこの写真では路面のひし形マークの辺りに立って、キセノに風呂敷を結わいてもらっていたイメージ。
 
ではすずの実家、浦野家はどこら辺か?
ここから右側に入った辺りのようなのですが、現在の同地点は住宅が密集していて、位置関係を探るための江波山が見えない(!)
あまりに住宅地でカメラ片手にウロウロするのも住民の方にとっては迷惑な話しなので、浦野家のあったであろう場所の捜索は断念しました。
 
ちなみに江波山ですが、実際に見てみると山とは言えないほど低いです。
浦野家とは違うポイントから撮った写真がこちら。

家の間の隙間に気象台の建物とアンテナが見えますが、これほど低いため、住宅密集地からは山が見えないんです。
 
その江波山には登ってみました。
はたしてすずさんはどのあたりから波のうさぎの絵を描いていて、そして突然の嫁入りの話しに「困ったねー」と海を眺めながら呟いていたのか?


   Googleマップへのリンク
なんじゃこりゃ? ですよね。
海なんてどこにも見えません。今や江波山の南側には広大な埋め立て地の上に住宅が密集していて、見渡す限り建物だらけです。
おまけに松の木は無くて、代わりに何かの木の小枝が見晴らしを邪魔してます。
その上さらにこの日は雨で、遠くの江田島や似島がまったく見えません。
 
まあ、映画の場面から70年も経ってるのだからこんなもんでしょ。と次のポイントへ。
 
すずとすみがはしゃぎながら登校するときに登場した「松下商店」です。


   Googleマップへのリンク
ここは映画の中でほぼそのまま出てきているので一目でわかりますが、ストビューでも閲覧出来るのでレア度は低いです、、、
江波港からここまでの道は、現在では大きな国道2号線で分断されていて、町が南北に分断されている印象を受けました。
 
それではすずが通っていた学校は? というと、多分 旧江波小学校のはずで、旧江波小学校の跡地は保育園と児童館、そして空き地は公園になってます。

   Googleマップへのリンク
この場所が旧江波小学校だということは、ネット検索した昭和15年当時の地図にも載っています。

(日文研HP  所蔵地図データベースより引用)
 
当時の地図を出したついでで言うと、江波は南側の埋め立てだけでなく、浦野家の近くにあった江波港の港内南側部分、そして川沿いに、全体が埋め立てで土地の部分が拡張されているようです。
上の地図と現在の地図を見比べてみればわかります。
 
その影響か、すずが中島本町へ海苔を届けに行くとき、里帰りしたすずが広島市内へ向かうとき、そして兄 要一の葬式の帰りに周作と二人での帰り道、の3シーンで出てくる本川沿いの道路の風景。


   Googleマップへのリンク
今撮影するとこうなるのですが、この写真では右側堤防の端の上に少しだけ覗いている丸子山不動院の建物、これが映画のシーンでは道路より左側に見えているのですが、その位置を探るとこの堤防よりも写真で右側を通っている車道のところになります。
道路からでは堤防が邪魔で川が見えないため、敢えて堤防を降りて撮影したのが上の写真です。
 
つまりは、映画に出てくる風景が正確であれば、今の車道より川の側はすべて護岸拡張されたものと考えられます。
上の古地図と現在の地図で道路の位置関係を比べても、それは明らかだと思われます。
 
ちなみにその丸子山不動院を堤防側から撮影した写真がこれです。

   Googleマップへのリンク
手前が川 というか海 の側になりますが、住宅があるところはもしかすると埋立地かも知れません。
映画の中(すずが嫁入り話しを聞いて草津から船に乗って江波に戻ってくるシーン)での丸子山不動院は、なんか海に突き出た感じに見えたはずなので。
 
さあ、江波の取材というか巡礼?はこれくらい、と思っていたら、思いがけず大事な脇役に出会いました。
「サギ」、白鷲です。

ああ、本当に居たんだ! って感動していたら、また一羽飛んできました。

わぁー、凄い!結構いるじゃん。って思って、辺りをよく探してみたらビックリびっくり

うじゃうじゃと居ましたあーっっ!!
「江波にゃ、ようけおったねぇ」ってすずさんが言ってたこと、本当でした拍手
どうやらこの場所には牡蠣殻が大量に捨ててあって、そこへ集まる魚がお目当てなのか、それとも貝のおこぼれが目当てなのか、とにかくエサがあるから集まっているようです。
   (サギと出会った場所)
 
実際、魚をついばんでるお食事中のサギもいました。

私の地元の川にも主(ヌシ)にしている白鷺がいるのですが、地元のサギと比べると江波のサギはひとまわり小さい感じです。
調べてみるとくちばしが黒くて小ぶりなのは「コサギ」という種類のようでした。
 
さて、すずさんは呉へお嫁入りします。
次は呉での聖地巡礼についてまとめたいと思いますが、江波の何倍もの取材量となったので、果たして何日がかりでアップ出来るか??
写真整理だけで何日もかかりそうです(汗)
 
(2/12追記)
まだまだ広島と呉を訪問した時の写真類の整理に追われていて、呉の聖地巡礼をまとめることが出来ていないのですが、懲りもせず今日も「この世界の片隅に」を映画館へ行って観てきました。
そこで強烈に感じたことは、今日映画を観ているときに土地勘をそこそこ理解した視点で観ることが出来ている自分がいる ということでした。
勿論映画は70年以上も前の景色なので、今回現地で見てきた景色とは違うのですが、それでも「この場所はこうで、こっちへ歩くとどこへ出る」とか、「ここの坂は急なんだよな」とか、それぞれの場面で本当に自分がそこに居たような錯覚を起こすほど、映画の中のシーンが自分の現地訪問の経験とシンクロしてくるんです。
広島の江波にしても呉にしても、映画の中ですずさんが移動する場面場面が、今どこら辺を通ってどっちに向かっているということが、ほとんどの場面で想像がつくんです。

例えばりんさんがすずに長之木への帰り道を教えてあげるシーン。
今日映画で観た時は、「ああ、あそこを曲がれば長之木へ行くな」というのがそのまま理解出来るんです。
この感覚は多分、地元の人かそれとも現地に私のような目的を持って行った人でなければ理解出来ない感覚かと思います。
きっと、「この世界の片隅に」を作られたこうの先生と片渕監督が、史実だけでなくその土地の情景までも作品の中にリアルに再現したからこそ、ここまでの感覚が生まれるのだと思います。
 
まさに「百聞は一見にしかず」
 
「この世界の片隅に」にのめり込んでいる方は、多少無理をしてでも現地を歩いてみることをお勧めします。
作品の見え方がまるで変わります。