愛と支配は紙一重 | よしすけのツレヅレなるママ 映画日記

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大好きな映画の感想をメインに、読書感想や子育てについてetc…のんびりした日々をゆるゆると綴った日記です

『ミス・マルクス』

(2020年 イタリア他)


STORY
1883年、イギリス。最愛の父カールを亡くしたエリノアは、社会主義者の劇作家エドワード・エイヴリングと出会い恋に落ちる。しかし、不実なエイヴリングヘの献身的な愛は、次第に彼女の心を蝕んでいく。エリノアは時代に先駆けた女性活動家として活躍しながら、苦悩に満ちた愛と政治的信念の間で引き裂かれていく
(映画.comより転載)


社会主義提唱の第一人者で

哲学者、経済学者の

カール・マルクスを父に持つ

三姉妹の末っ子エリノアは

幼い頃から思慮深く賢い子どもだった。


知的で温かい家庭は

幼いエリノアにとって

とても居心地のよい場所だった。



成長するに従って

エリノアは現実に気がついていく。

社会主義者カール・マルクスの家といえども

家庭内のケア労働は

女性の役割だということに…


エリノアは女性である自分は

誰かのために生きることはあっても

自分の人生を生きることはできないと

その矛盾に疑問を感じていた。


そして

亡き父の活動が

エンゲルスの経済的支援により

続けられていたことも

心の中では良しとしていなかったようだ。



やがてエリノアも

本格的に労働運動に関わっていった。

大勢の労働者たちを前に

支配構造の撤廃と権利の平等を訴える

彼女の思想は素晴らしいのだが

労働運動に携わっているのは男性ばかり。


彼女は一般的な労働運動から取りこぼされた

女性の搾取や児童労働に目を向けていたが

男性労働者が

マジョリティである労働運動では

女性や子どもたちのことなど

誰も取り合おうとはしなかった。

ここにも格差と矛盾が存在していた。



エリノアの私生活も

理想とは程遠いものだった。

エリノアとパートナーのエドワードは

妻との離婚が成立しないまま

同棲生活を始めた。


エドワードはとにかく金遣いが荒かった。

誰彼構わずに金を借りてくる。

エリノアが一番世話になりたくなかった

エンゲルスからも借金してくる始末。


エドワードは家を空けることが多く

時折ふらっと帰ってくる。

エリノアと内縁関係を続けながら

ペンネームを使って別の女性と入籍。

病を患っても好き放題で

具合が悪くなると家に帰ってきて

エリノアがケアするのが当たり前みたいな。


エドワードも一応社会主義者だったけど

エリノアの金、才能、時間etc.....を

搾取していた。



自由と自分勝手を履き違えた「クズ男」。

人として全く信用できなかった。

周囲の人たちは誰もみな

エドワードと別れた方がいいと言ったけど

エリノアは別れようとせず

結局は悲しい結末となってしまった…


あらゆる場所

あらゆる形で支配は存在する。

夫婦、恋人、親子…

「愛」が支配に変わると厄介。

しかも自ら嵌っていってしまうから

なお厄介。

一度絡め取られてしまえば

その呪縛から逃れることは難しい。

現代でも同じようなことは

繰り返されているよね。


あの時代

エリノアの思想は

早すぎたのかも知れないけど

いまに通じるというのは

時代は変わっているのに

根本的なことは

まだまだ変わっていないってことでもある。

残念ながら…




カール・マルクスについては『マルクス・エンゲルス』も面白かった↓↓↓


映画の中で

カール・マルクスが山のように遺した

ノートやメモが出てきた。


マルクスのメモといえば斎藤幸平さん。

数週間前のNHKアカデミア(前後編)が

とても良かった。

3.5%の人が動くだけで社会は変わる。

「当事者」でなくても

「共事者」になることはできる。

心強い言葉に勇気づけられたな。