さて、前回のブログでも触れた訳詩と作詞についてです。

 

今回のコンサート最後の方ではシャンソンも歌いました。

 

実はこれまで私にとってシャンソンは《触れてはいけない領域》でした。

 

フランス人が慣れ親しんだ曲を外国人が歌うことを彼らはどう思うのか。

まあ言ってみれば、美空ひばりさんの曲を外国人が歌って果たしてどうなの?と我々日本人が思うのに似ているのかな・・・と。

 

しかしいくつかの曲はクラシック歌手でもいけそうと思い・・・・

《さくらんぼの咲く頃》、《聞かせてよ愛の言葉を》、《すみれの花咲く頃》等々は以前からアンコールで歌っていました。

しかしごくごく一部のレパートリーにとどめていました。

 

レッスンを始めて随分経った頃、この分野を得意とし多くの演奏の機会があるヴァンソンからジョゼフ・コズマのシャンソンの楽譜を「これ歌ってみたら?」と渡されました。

 

発表の場はなくとも言葉の勉強になるのなら、と前向きにとらえ勉強してみることにしました。

 

それまでのヴァンソンとのレッスンの日々でフランス語のディクションを鍛えられたおかげで、以前感じていたほどには違和感のないフランス語で歌えそう・・・・

と言うことで2023年10月のパリのコンサートではアンコールではなくプログラムの中で歌うことにいたしました。

ちょうどコンサートの日がコズマの誕生日だったこともそのアイディアを後押ししてくれました。

 

初めはオズオズと始めたコズマの曲ですがレッスンの時、特に『枯葉』を歌う時に《音楽的化学反応》と私が勝手に名付けている或る特殊な現象が起こることを度々感じました。

 

これは一般の方に説明するのは難しいのですが、歌手とピアニストの間で《気が回る現象》といえば少しお分かりいただけるでしょうか?

フランス語だったら《Complicité》という言葉で表現できると思うのですが(←これを日本語にすると《共犯関係》???)

 

ともあれ、そういう経緯で10月のパリのコンサートで歌うことになったコズマのシャンソン。

 

コンサートの準備を進める中で、ヴァンソンが『枯葉』は日本でも有名か?と尋ねるので「日本語の歌詞も存在するくらい有名」と答えたところ、その日本語歌詞に興味を示しました。

そこでコズマのみならず、ピアフのいくつかの楽曲も日本語歌詞で披露しました。

 

日本語がわからないヴァンソンにはそれはそれで可愛らしく聞こえたようですが、歌った当の私は歌いながら「へえ〜ここがこういう歌詞になるのか〜」と驚きの連続でした。

これは訳詩などではなくもはや《作詞》!

なまじフランス語がわかるとこう言う芸当はできないだろうな・・・・

 

しかし、日本人の心に響く美しい言葉で歌うためには完全に《日本語で作詞》してしまう方が効果的である、と言うこともよ〜くわかりました。

 

とは言えクラシック音楽畑の私はメロディーと歌詞は切っても切れない関係にあると考えているので、やはり曲想を重要視するなら日本語で歌うのはやめた方が良いという結論に達しました

 

当初10月パリのコンサートで、1番はフランス語の歌詞で、2番は日本語の歌詞で、と言う案も出ましたが結局日本語で歌うことはやめました。

 

そしてこの度の東京のコンサートでも全て原語で歌いました。

 

今回のコンサートでは越路吹雪さんが生前舞台でお使いになったブレスレットをお守りとして身につけて歌いました。

このブレスレットについては以前のブログ、こちらをご覧くださいませ。

 https://ameblo.jp/suizi/entry-12508681837.html


長くなると嫌われますので(笑)今日はここまでです。


つづく......