本日は素材の紹介でなく、ロゴの選び方のコラムを執筆しました。2006年くらいは、こういった啓蒙活動の意味合いの自社ブログを多数発行していたのですが、最近は滞っていたのを数年ぶりに復活する形です。(^^;)また素材紹介も続けていきます。(最終章をSep2018/他May2020に加筆)



ロゴマークの選び方について

※ロゴマーク(シンボルマーク+ロゴタイプ/若しくはSONY,NEC,CANONのような文字とマークを兼任している物)


(1) 欲しいロゴはアイコンやキャンペーンタイトルなのか?自社のブランドなのか?


こういう事を聞きますと、ほとんどの方が「ブランド構築です!」と答えられます。しかし、実際は安売りのアイコンマークみたいなものを手軽に調達して使い回されている方も多いです。

つまり簡単にネットなどでロゴを頼まれる方は、ブランドを構築すべきマークは、どういった条件が必要で、どう使用すべきか、まったくわからないため、見た目の好みだけでTシャツの柄を選ぶ感覚で、素人作品が混ざった安売り投稿サイトでサンプルから好きな柄のマークをピックアップしているのが現状でしょう。
そういった公募サイトの運営会社も「コーポレートアイデンティティ(CI)って何?ロゴって単なる飾りでしょ?」という感覚の人が多いです。
「飾りとしてのマークを安売り」しているのに、それにブランド価値を求めるというのは、100円ショップで買ってきた財布を有名ブランドのように魅せるというくらい無茶な話です。

昨今流行の簡単お手軽低コスト投稿デザインというのを否定はしません。ただ、昔の専門家が手がけていた頃に比べて品質を落としていることを自覚なしに、またそういった知識、選定眼すらないまま、中途半端な感覚で「よし」と思われる時流に対して、誰かが警鐘をならすべきとは考えています。




(2)自社ブランドマークに込める物は何が必要か?


ズバリ、その会社を表すイメージ、その会社の目指していくイメージ、その会社の理念や信条、社会や相手に伝えたいメッセージです。そういった企業のマインド、自社のアイデンティティ(どういった存在の会社か)理念や信条と連動しないビジュアルに関しては、飾りのアイコンマークになってしまいます。

また、マークに込められたストーリー、意味に関しては、ヴィジュアルデザインだけで伝えきれない場合、タグライン若しくはショルダーコピーという短いフレーズのコピーをロゴタイプと一緒に併記します。

私どもの仕事の例では、『技術は夢。幸せをつつみこむ家づくり。』木造住宅建築会社様/『ゆったり・のんびり・自然体』高齢者向け健康情報誌/といったコピーがあります。前者の例では、依頼主様に詳しくお聞きしたところ技術力に関して社長様、幹部様とも自負を持たれていましたので、その部分をクローズアップしています。後者の例は、雑誌のタイトル「楽々」にも合致するフレーズで、持病を持たれて年齢も重ね無理せずにゆっくりと生きていく人に向けたコンテンツを象徴していて、読者の反応も上々の冊子です。

当然ながら、【我が社とは○○だ】【我が社は●●をめざし社会に貢献】という事が抜け落ちている、あったとしても社内で一致していない企業様は、ブランド構築のため有名ディレクターを招いてもお金がもったいないだけになります。CI(コーポレートアイデンティティ)やBI(ブランドアイデンディ)構築の土台自体が存在していないのですから…。


例えば、サッカーチームのユニフォームには胸の位置にチームのエンブレムを縫い付けてあります。

uniform
ここには、大きな大会やリーグで優勝したチームだけが使用できる星のマークが入っている場合もあります。歴史がある強豪チームの場合、先輩達の功績が何個もの星となってエンブレムと一緒に飾られています。だから、ゴールをした選手がユニフォームの胸のエンブレムを引っ張って観客席にアピールするシーンもあります。「この誇り高い紋章に見合うゴール」、「この紋章をつけたチームの一員だ!」ということでしょうか?安いTシャツは100円ショップで変えます。エンブレムのついた公式レプリカユニフォームは、その100倍の値段で沢山の数が売れています。これがブランドストーリー、ブランド価値ということです。

具体的に事例で紹介します。株式会社スズキという社名だけでは、何も伝わらないと思います。

ノーマル(株)鈴木の例

ロゴタイプもなく単に社名を打ち込んだだけでは、「顔の無い会社」「何をやられてましたっけ?」「どちらの会社でしたっけ?」「知ってるような知らないような…」という認知度です。伝わってくるものも全くありません。

では、社名は変更できないとして、以下の様に見せるとどう伝わるでしょう?企業「らしさ」が伝わるのではないでしょうか?


(株)Suzukiデザイン例


表現はクリエイティブに任すべきですが、伝えるべき事は、しっかりと情報資料を用意して制作者に理解して貰わないと自社を象徴するマークは作れないでしょう。

また、マーク作りの専門家だけがわかれば良いということではありません。デザイナーは、言葉や形では上手に伝えきれない、無形の会社が大事にしてきた価値観や創業理念をシンプルな造形に落とし込むのが仕事です。

そのマークを最前線の営業部員が客先で個人判断するため、あるいはパートの事務員が仕事の判断をするための象徴として使わなければいけません。

各国の国旗の由来など賛否両論あるでしょうが、その国の象徴であり、その国らしさを表した旗なのですね。アメリカは元々は、オーストラリアやニュージーランドのような、ユニオンジャックを左上の青いカントンという部分に掲載していたのです。しかし、独立精神がやはりアメリカの象徴なのでしょうね。今は独立した13州の赤白ラインと現在の50州の集まった合衆国というものを形として表しています。

米国植民地旗

画像出典:wikipedia 植民地時代の旗は東インド会社の旗と酷似しています。

マレーシアは、この英国系のカントンが、イスラムの月と星になっています。宗教が国旗に入るのも賛否あると思いますが、そういった考え方がこの国の人には根付いているという象徴です。



アメリカ人の独立精神やマレーシア人の宗教観などは、大きなとりとめのない話になってしまいますが、そういった抽象的な会社の理念、つまり、「●●社は、●●で社会に、顧客に、地域に、社員に、株主や取引先などステークホルダーに貢献していく会社なのである」という事を最前線の1人の営業マンや1人の事務員までが理解し、「このバッジを着けている以上、我社らしからぬ立ち居振る舞い、行動は出来ない」という風に浸透させるというのが、ブランディングマーク作りの意味あいとなるのです。

(3)中小、零細企業がどうブランドマークを浸透させていくか?


よくある例ですが「飾りマークを作って名刺の社名の前にポンと配置してそれで終わり」では、結局なにも起こりません。当然ブランドとしての浸透もしないし、社員も顧客も見込み客も大多数の消費者にも、なにも起こらないということです。


上述のファンの多いサッカーチームの展開例では一般中小企業には該当しにくいし、歴史も浅く、ファンが自ら購入するグッズもなく、全国マーケットに流通させる製品もなく、作業ユニフォームの胸に刺繍を入れているだけ、他はwebページと名刺と封筒以外ロゴマークを使う場所もないという場合どうすれば良いのでしょうか?

それでも自社のことを知って欲しい人達が多く通る所に「自社の顔を少しでも露出させる」のが得策です。
(大通りの袖看板や屋上看板)(webのポータルサイトのバナー)(目抜き通りを走る社用車のボディペイント)(地域のお祭りの協賛広告の提灯)(製品を梱包する段ボールの側面)(定期的に送る印刷物やリッチテキストが可能なEメール)(建築物件の養生シート)(業界紙の協賛広告)(FACE BOOKページ)(ビルの窓に貼られたカッティングシート)(歩道を掃除している人達の着ていたユニフォームの背中のプリント)ロゴマークを世間の人達、知って欲しい人達との沢山の接点にむけて発信しなければいけません。大量な情報発信が無理でも、特定業界への露出、特定エリアに限っての露出、特定者に対しての露出になれば、大きな予算のかかる出稿量でなくても賄えます。

人は自分が既に知っている物は安心します。知らない物は不安を感じます。(好奇心を持つ場合もありますが…)

極端な例ですが、あなたが「外国に向けて自分のwebページを宣伝しなければいけない」という使命を負ったとします。


google画面キャプチャ


業種によってはタウンページでしょうが、こういった場合インターネットで検索することでしょう。
しかし、検索結果は上から順に、知らない業者の名前がラインナップされるだけです。だから上から順にクリックしてみます。検索エンジン会社の広告料金や検索結果の適性化(SEO等)の料金が上位表示ほど高額になる仕組みです。でも、一番上に広告表示された会社が「自分が頼みたいことができる信頼おける会社」かどうかはわかりません。「頼みやすいのか?」「価格はどうなのか?」「仕事の評判は?」単に一番上の欄に高い広告料金を払って出ていたというだけの会社です。


逆に、例えばSNSサイトに日々高頻度でアクセスする時、知人のweb関係者の日記に最新web事情の記事と一緒に出典元としてたまに業者のロゴが出ているとします。

何回か目にしたロゴマークは、「知ってる」という親しみを既に持っています。あなたは検索エンジンの検索結果画面の上から下までのサイトの大量の情報を全て読むとなると辟易してくると思います。体験者のレビューや比較サイトというのもありますが、あらゆるサービスの全てのメニューをインターネット上に公開されている訳ではありません。


シグナルの例

「見た事ある」「ああ、あのマークの会社!!」「このマーク知ってるよ!ちゃんとした会社じゃないかしら?」という親近感や、キチンとしたPRによる信頼感は、逆を返せば、誰もマークの存在を知らなければ意味をなさないということです。

人は錯覚に陥りやすく、「テレビで有名人が宣伝していた」「テレビCMが流れていた」そこまでいかなくても「つるつるの紙にキレイにデザインされた広告が入っていた」「有名なサイト内でデザインされたバナー広告をみかけた」こういった事で勝手に信頼を構築してしまうケースがあります。その時に目にしたロゴマークを良い情報として刷り込んでしまうのですね。だからNOVAや雪印やLive doorというのは、社会問題規模の不祥事を起こすまでは、「ブランド」を鵜呑みにして実情を無視して信頼しきっていた人もいたわけです。

男性がパソコンや機械のスペックを調べて比較購入する場合は別ですが、女性の買い物の選定というのは、感性に頼る部分が大きいので、まったく知らないものと、知っているマークのついている物とでは、商品や受話器を手に取るまでの時間に隔たりがあるのですね。

わかりやすいように、以下にみなれない外国語のバナーと見慣れたイメージと文字の日本語バナーでの比較を記してみました。


日本の広告例




アジアの広告例

どちらか1品を必ず購入しないといけません。
アメリカ人が外国でマクドナルドやコカコーラのマークを見て、わくわく感を減らしながらも安堵感、信頼感を感じる原理です。日本人も知らない交通機関で不定期な出発に泣かされていた最中にJALやANAのマークの尾翼を発見したら、安堵感や郷愁感、信頼感が沸き起こるでしょう。あらゆるシーンで自社象徴であるマークを表示して知って貰うという事は大切なことです。



(4)ブランドのためのデザインとその精度とは?


上述3項目で分かる通り、マークは使用されて(表示されて)初めて価値が発揮されます。ですので、使用例を検証していないマーク(単に枠の中にアイディアスケッチの絵柄を配しただけ)では使用に耐えられるかは、その状態では確認できないということです。
最低限、縦長のスペース、横長のスペース、正方形のスペースどの枠内でもブランドの与える印象を崩さず、同じく墨ベタ地や色ベタ地に白抜きの場合、新聞原稿の場合、金属板に1色で彫り込む場合、大判の看板の場合、小さい名刺の場合の細い罫線やオブジェクトのくっつきかた等全て検証した上での納品が条件となります。また色に関してもあらゆるメディアに備えて、webセーフカラーやプロセスカラー、パントーンカラーなどあらゆる設定でイメージを崩さないように計算した配色が必要です。1案のアイディアスケッチにデジタルソフトで着色したものを簡単納品という程度では、とても賄えるものではありません。親切な制作者の場合依頼者様のソフト状況にあわせてイラストレーターベクターデータ以外に画像形式やアナログ状態の清刷りを納品します。

また、Patina(経年による風格)という言葉があるように、長期の使用に耐えられる設計が必要です。すぐ飽きられる単なる流行物のデザインではいけないし、マークの形など、誰がみても心地の良いカーブラインや安定したバランス、空間の地と図の関係などを磨き上げないといけません。また判別が分かりにくい例等の禁止例などを事前に設定し、大規模な会社では、あらゆる文章の組合せを想定した書体の選定まで行います。またロゴマークとその周囲の余白の量の設定(あまりにもゴミゴミとオブジェクトが重なりあった中に配置して認識されない事故を防ぐ為)も設計していきます。


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以下参考作品(スイスタジオ制作)

東邦メディアプランニング制作

栄田建設ロゴ制作

シンテシスロゴ制作

Formasa Gourmetロゴ制作

Budget Holdingロゴ制作

瑞穂のめぐみロゴ制作



池田屋ロゴ制作


ヴェリタスロゴ制作


家結びロゴ制作

ThreeStarロゴ制作


非接触テクノロジーズロゴ制作



eigo




ここまでの仕事に加え、着手時に大事な発注者様との詳しい聞き取り、表現企画の立案と5〜10案以上のデザインサンプル展開、こういった本格的な仕事をすると、とてもではないですが、安売り公募サイトに投稿するような予算と仕事では採算割れを起こしてしまいます。

実は、私自身は、CIの専門教育を受けてきた訳ではありません。しかし若い修業時代から、横行するお手軽ロゴという物に疑問を感じ、自ら業界の権威の方達の書物を研究してきました。有名な佐藤可士和氏などの仕事でも、依頼者様との聞き取り調査に相当の日数を割いています。そして、「この企業は○●だ」という骨子を作ってから、多くの発信アイテムへ展開しています。シンプルだけど磨き抜かれたフォルム、お客様とお客様の先のお客様からのイメージ、業界でのポジションやイメージ、そういった事をゴチャゴチャとさせずシンボリックに表し多くの媒体へ展開出来るように作るのがデザイナーの努めです。

ロゴを依頼されるときは、しっかりとした考えで間違いの無い業者選定と展開戦略を想定してください。単なるアイコン飾りやチラシキャンペーンのタイトル程度では、その限りではありませんが、企業のロゴマークというのは、多くの優秀な先人達が知恵と技術とセンスを注ぎ込んで作成してきています。安価な値段に誘惑されて学生のトライアル程度の仕事を選ばないようにご注意ください。


(5)追記 具体的な注意点

しかし、ネット上でロゴなどをさがしてみると数十万円の物も数千円の物も同じように検索画面に表示されてきます。一般のノンデザイナーの方の書き込みなどを読んでいると、あまり良し悪し自体を判断出来てられない人も結構いらっしゃるので、より細かく説明します。


安価な(例えば2万円以下)ロゴサービスは、ロゴマーク(シンボルマーク)のみ作成して、ロゴタイプ(社名、ブランド名)は、既存のフォントなどで、そのまま打ち込んでくるケースがほとんどです。文字の設計(特に漢字)は、とてつもなく大変な作業ですので、その部分を切り捨てて安売りしているケースが多いです。

世の中のグローバルブランドは、歴史のある有名なフォントをそのまま使われている事が多いです。数十年、百数十年の歴史の中を生き残ってきた書体は、新参デザイナーが頑張って新ロゴタイプを作っても、なかなか対抗できることの出来ない高い完成度の物です。以下の書体のイメージの見覚えがあるのではないでしょうか?


フォントでのロゴタイプ例



では、そのまんま既存フォントで気に入ったものをロゴとして使えるか?大きな問題があります。特に和文の場合。 商標登録を禁止しているフォントベンダーも多いですし、そればかりか、ロゴとして使用する事を禁止しているベンダーもあります。

なので、「これは我が社のロゴではありません!たまたま、毎回気に入った書体で打ち込んでいるだけで、これをロゴとして使っている訳でないです!」と言い訳しないと、 色々二次使用料金を徴収されたり、裁判に訴えられたりという問題も派生する可能性があるのです。 製作者に必ず確認しましょう。


またマークデザインですが、安価で低クォリティーな物にありがちな特徴として、

•形態をシンプルに磨き込んでいないので、見た目を派手なグラデーションの配色で誤魔化している場合があります。必ず製作者に、色を付けられないシーンの場合(金属プレートにモノクロで描かれる表札、FAX広告や新聞のモノクロ面等)を確認してください。

•安いクォリティーでは、円や四角や三角といった図形はソフトのツールそのままの形状を使用するため、カーブを見た目重視、バランス安定感重視で細かく調整していったりという事がありません。円や四角をそのままジョイントしたような物が多く見受けられます。


•引き算の美学の考え方が出来ていなく、研ぎ澄ませた1本のカーブやラインをシンプルになるまで調整していないので、ショボくてモサっとしたタイプフェイスを誤魔化すために、周囲にフチをつけたり、ゴテゴテ装飾を行うケースがあります。

•カーブ、図と地のスペースのバランス、重心や全体の傾き、配置などまで細かく見て調整していないため、「どことなく不安定さ」を感じるものです。長期で使えません。また文字が判別できないロゴは機能に欠陥ありです。

悪いロゴの例


上記の悪い例は、あくまで企業やブランドのCI、BIなどのロゴマーク前提の話です。チラシのキャンペーンタイトルなどの一回限りの物や、スマホアイコンのように、いくつも作っている物のひとつ程度では、逆に磨き上げる労力とその工賃が不採算となるでしょう。使い分けです。


良いロゴの例


実際の制作現場は、アルファベットなら上記のキャップライン、ベースライン以外にもアセンダーライン、ディセンダーライン等、並んだ時の高さの調整も行いますし、和文ならセンターを通る重心のラインを意識します。特に右へ、左へと揺れた配置の時は、字の流れをしっかり考えバランスの崩れた偏った重心にならないように調整します。

そのためには、文字の形態フォルムだけ見れば良いのではなく、背景の空間のスペースもしっかりと見ています。

プロの現場では、こうやって細やかな調整をして作成しているのです。





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