古き良き「なあなあ」の日本社会 | 酔竜の館 新館

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先日愛知県春日井市の特別養護老人ホームで食事中に食べ物を喉につまらせ死亡した件の裁判で、施設側の注意義務違反を認定、特養側に損害賠償支払い(1370万円!)を命令をしたとのニュースがありました。このケースは別に虐待を疑うものがあったようで、ご家族の心証としては納得はできますが、もしこれが判例として残るようなら問題です。

 

認知症高齢者の食事の際の問題点としては、飲み込みの機能が落ちている(よくむせる、口の中にためてなかなか飲み込まない、など)、そしてかき込むように食べる(窒息の危険大)、などあります。一人に対して一人が食事介助にあたりますが、そういう嚥下困難の方が増えると職員が足りません。

 

このような状況で今後窒息で死亡したら施設の責任が問われるようになれば、安全策をとらざるを得ません。少しでも嚥下機能に問題のある方は胃瘻でないと入所できませんと言われるかもしれません。

 

そうでなくても病院には結構な認知症の高齢者が多く入院され、介護が加わるのでスタッフにはかなり肉体的精神的ストレスが増えています。治療のためという名目で身体拘束(点滴をしている間のミトン、ベッドからの転落予防の四点柵、立ち上がって転倒を予防するための車椅子の安全ベルト)は可能ですが、もちろん手足をベッドにくくりつけることは今はできません。

 

なおこれらの身体拘束は施設では全部できません。これで転倒・骨折したら施設スタッフの監視不十分という見方は厳しすぎるはずですが、クレームはありますし今後裁判になることもあるでしょう。そうなると徘徊する方は入所できません、精神面で問題のある方は精神科で治療をしてください、となるでしょう。

 

日本の社会は昔から「なあなあ」で成り立ってきました。本音と建て前の使い分けに近いでしょうか。規則としてはきちっとするけど、実際の運用はグレーゾーンをもうけて暮らしやすさ重視で、と。医療もそんな感じだったと思います。私が病院勤務になった四半世紀前はそんな感じが残っていました。

 

今のきっちりした社会は得をする人より損をする人がはるかに多くなっているはずです。せめてクレームを言う家族が減ればもう少し患者さん本位の治療・介護が続けられると思うのですが、厳しいです。