ここまで来ると、ありとあらゆることを想定しなければなりません。既に配達局では、今回の輸送事故に関して補償はしないことを決めていたようです。明らかに輸送事故で出来る傷ではないし、シリアルナンバーが剥がされているので実際に配達員が配達した商品でない可能性があるからです。

 

補償できないことを知ったその人が、今度は私の方に矛先を向けて、壊れたものを送ったに違いないと主張し始めるかもしれません。

 

ヤフオクでは写真を10枚掲載できますので、そのたびに出品するプレーヤーの写真を撮り、その写真に撮ったものを送っています。時折、使いまわしの写真を掲載している出品者がいて、写真のものと実際に送られてきたものがあまりにも状態が異なるということで、トラブルになるケースが多いようです。オーディオに関しても写真を使いまわしている出品者がいるので、気を付けた方が良いでしょう。

 

その写真を保管しているので、輸送事故に遭ったと思われるプレーヤーが実際に私が発送したものかどかの証明は出来ます。ただ、その人が、写真は捏造したに決まっている、発送するときにすり替えたに違いない、など主張する可能性もあります。

 

実際、裁判になったときは、その写真がどれだけの証拠能力があるかどうか分かりませんが、確かに写真のものを発送したという証拠はありません。それを証明しろと言われても、ヤフオクに掲載した写真しかありません。

 

輸送事故に遭ったと思われるプレーヤーが、私のものではないという証明をする必要がありますが、ないことの証明するのは、俗に悪魔の証明といい、不可能といわれています。

 

これは参った・・・・どうしたらいいのか・・・

 

もし、そのプレーヤーが私が送ったものであるならば、本体には無数に私の指紋が付いているはずです。仮にそのような訴えを起こされたときは、輸送事故に遭ったと思われるプレーヤーに私の指紋が検出されなければ、それは私が送ったプレーヤーでないことが間接的に証明できます。

 

そっか、その手があったかと、さっそくそのプレーヤーに指紋が付かないよう、薄手のビニール手袋をはめて、検証することにしました。まるで、これから犯罪をしようとする悪人になった気分です。

 

もちろん、本当に検証したかどうかの証拠となるよう、引き取り局の事故担当の人と私の妻を立会人にして、加えて検証中のビデオも撮影して、それを証拠とすることにしました。

 

さっそく、事故担当者が厳重に梱包した発泡スチロール製の箱を開けます。

 

中には、確かに私が発送した箱がありました。私は、発送する際に必ず箱の左上に梱包しているプレーヤーの型番と箱の下半分には配達員に丁寧に運んでもらうために精密機器取扱注意という注意書きを書いています。それがしっかり書いてあったので、私が送った箱に間違いはありません。

 

その箱のふたを開けると、緩衝材に包まれたプレーヤーがありました。ここで、あれ?と思いました。それは隙間を埋めたはず新聞紙が一切ありません。担当者に、緩衝用に詰めていた新聞紙はどうしたのですか?と聞いたところ、配達局で引き取ったときは既にこの状態だったとのこと。

 

おかしい。その人曰く、箱からプレーヤーを取り出したとき、プレーヤーに傷が付いていることを確認して直ぐに箱に戻したと言っていました。それが本当であれば、新聞紙は詰めたままのはず。それが綺麗に取り除かれています。

 

それから、プレーヤーを箱から出したとき、コードが束ねられていませんでした。これもおかしい。私は、発送する際に必ず電源コードは150㎜の黒の結束バンドで束ねています。ニッパでなければ切れないくらいの強度があるので、そう簡単に解けません。それが、ありませんでした。

 

その人は、箱から出して直ぐに箱に戻したようなので、当然コードの結束バンドは解いていないはず。

 

やはり、これは私のプレーヤーではない。

 

そう確信して、作業を進めていきました。

 

フロントの左下角のえぐれた傷を確認。写真通りの深い傷です。それからリアパネルのシリアルナンバーが剥がされてことも確認。よくもまあ綺麗に剥がしたものです。

これも写真通りです。

 

シリアルナンバーがない以上、このプレーヤーが私が送ったものであるか、すり替えたものであるか、どちらも証明できません。それだけシリアルナンバーは、個体を識別するのに大切な番号なのです。よく、盗難車は、エンジンルームにある車体番号が削られていますが、それはその車の出所を知られたくないからで、車の場合は運輸局に登録されているので、直ぐに所有者を割り出すことが出来ます。

 

オーディオなどの電気製品は、そのような登録制度はないので、所有者を割り出すことが出来ません。とはいえ、個体を識別するためには必要な番号なので、この番号を確認することは必要です。ヤフオクでは、ストア系の出品者は必ずといって良いほど、シリアルナンバーの写真を掲載しています。時折、シリアルナンバーにモザイクをかけている出品者がいますが、それはそのオーディオの素性がバレること嫌っているためなので、注意した方が良いです。このシリアルナンバーにモザイクをかけていた出品者とのトラブルもあるので、後日、レポートします。

 

天板のネジを外して、天板を外しました。私のプレーヤーであれば、コンデンサーなどのパーツが交換されているので、一目瞭然です。パーツが交換されておらず、オリジナルのパーツであれば、それは私が発送したプレーヤーではありません。

 

中身を見て、私は絶句しました。

 

これは、自分がメンテナンスしたプレーヤーだ!!

 

そう、コンデンサーが交換されていたのです。確かに、私がいつも使っているコンデンサーです。交換しているパターンもそのままです。私は、ニチコンのFGシリーズをメインに、ESシリーズと最高級シリーズのKZを所々に使用しています。まさに、いつも交換しているパーツが、いつものように使われていました。

 

しばし、絶句したのち、なんでだと、事の状況がつかめずに、しばらく立ち会った事故担当者と私の妻と呆然と立ち尽くしていました。

 

数分、いや数十分でしょうか、中身を隈なく確認していると、あれ?何か違う、あれ、今回送ったプレーヤーで交換したはずのパーツが交換されていないことに気づきました。

 

なんでだ???

 

前回のプレーヤーと同じ型のプレーヤーですが、そのプレーヤーは輸送事故の補償がされているので、配達局が保管しています。そして今回私が送ったと思われるプレーヤーが目の前にあります。

 

なのに、交換したはずのパーツが交換されていません。改めて、今回発送したプレーヤーのヤフオクで掲載していた写真を確かめます。私は、内部の写真を必ず掲載しています。実際にパーツは交換していることを証明するためです。

 

写真を確認しても、交換していたはずのパーツが交換されていません。同じプレーヤーでも、そのプレーヤーの状態を確認し、パーツの消耗具合を確認して、その都度交換するパーツは異なっています。なので、シリアルナンバーがなくとも内部を見れば、いつメンテナンスしたものかを照合することは可能なのです。

 

それにしても、なんでだ??

 

待てよ・・・そういえば、最初に取引をしたプレーヤーは何だったけ??

 

最初の取引から、既に1年が経っていたので、最初に取引をしたプレーヤーがなんであったかすっかり忘れていました。ヤフオクの取引データとパソコンに保存してあったプレーヤーの写真を探して、確認したところ、なんと今回のプレーヤーと同じメーカー同じ型番のプレーヤーでした!!

 

そうなのです。つまり、今、目の前にあるプレーヤーは、私が最初にその人と取引をしたときのプレーヤだったのです!!

 

っていうことは、今回送ったプレーヤーは、その人が現在持っているということになります。ふざけるな!!騙しやがって!!思わず、絶叫してしまいました。

 

やっぱり、中身が入れ替えられていたのは、事実でした。しかも、私が以前その人に送ったプレーヤーでした。そのプレーヤーを傷つけたのは、きっとその人でしょう。壁か地面に擦りつけたのです。それを、輸送事故だと強弁して、配達局に補償させようとしたのです。

 

何でそんなことをするのか・・・

 

今回のプレーヤーが異常に高額で落札されました。おそらく、高額で落札しても、あとで配達局で補償してもらうつもりだったのでしょう。最初に送ったプレーヤーの倍くらいの価格でしたので、ただで今回のプレーヤーを手に入れて、しかもお釣りがくるという計算だったのです。全て、最初から計画された犯行だったのです。

 

目の前にあるプレーヤーは、確かに私がその人に送ったプレーヤーであることは間違いないですが、今回送ったものでないことは間違いないです、と、まるで禅問答のような回答を事故担当者に伝えました。

 

その人が、写真で確認した方が良いと言ったのは、このことがバレる恐れがあったからで、シリアルナンバーをはがしたもの、以前送ったものであることがバレる可能性があるからです。全ては、その人の隠ぺい工作です。

 

 

この件が、詐欺ではなにかと思った最初のころ、カード決済などで取得できるポイントを詐取するためにやっているのかと思っていました。たまに、ホテルなどを予約して実際に宿泊せず、ポイントを詐取する事件が報道されますが、あれのヤフオク版かと思っていました。常習犯であることを知らされたので、その可能性はあったかもしれません。

 

とはいえ、運送会社相手にそれをするにはハードルが高いと思いますが、配達局の担当者曰く、輸送事故の際は、かなり高圧的に激しく大声で抗議していたようで、郵便局はそうすればすんなり補償してくれると思ってしまったのでしょう。

 

最初に取引したプレーヤーは、今回取引したプレーヤーよりも、少し外面が傷や錆などがあったので、おそらくそれが気に入らなかったのかもしれません。なので、同じプレーヤーを落札して、入れ替えようと、そしてその分の費用は郵便局に払わせようと計画したのでしょう。

 

最初から変わった人だと思っていましたが、途中熱心に私のプレーヤーを評価してくれていたので、悪い人ではないと思い直してしまいましたが、やっぱり変わった人でした。

 

今回の件は、誰にも金銭的な損害はありませんでしたが、配達局の担当者も引き取り局の担当者も、このことで通常業務に支障が出ていたでしょうから、かなりの損害が発生しているものと思われます。私自身もこの件のやり取りに時間を取られてしまったので、心身ともに疲れました。

 

その後、その人がどうなったか知りません。おそらく、自分で傷つけたプレーヤーを引き取ったことでしょう。配達局が詐欺未遂事件として被害届を出したということは聞いていないので、無罪放免だったのだと思います。これに懲りて、二度と同じようなことはして欲しくないですが、かなり年配の人のようでなので、その願いも届かないかもしれません。

 

では、前回の輸送事故もそうだったのか・・・

 

前回その人に送ったプレーヤーも同じ型のプレーヤーですが、箱が縦方向にパックリ割れた状態で、確かにかなり高い位置から落下させなければできない損傷でした。補償は受けられましたが、プレーヤーは引き取られています。何のメリットがあったのか・・・やはり、ポイントの詐取でしょうか。

 

配達員曰く、その人は荷物が送られていつもドアを5㎝くらい開けて、玄関の前に置くように指示していたようです。コロナ禍だったので、外部の人と接触したくなかったのかもしれません。配達員が帰った後、玄関先で荷物を開けて、中身だけを家に持ち込んでいたようです。

 

これは私の推測ですが、前回は玄関先に置いてあった荷物を受け取るために、玄関を開けた際に荷物に激しくぶつけたか、後で受け取ろうとしばらく放置していたところ、そのことを知らされていない家族が出かけるときに玄関を開けて、激しくぶつけてしまい、箱が損傷してしまった可能性があります。そうであれば、配達員は箱の損傷に気づくはずがありませんし、本人も配達員がやったに違いないと思ったかもしれません。

 

となると、前回の件も詐欺の可能性は否定できないでしょう。

 

ヤフオクに限らず、ネットで買い物をする人は、詐欺に遭わないよう、常に情報をアップデートし、細心の注意を払い、少しでもおかしいと思ったそれ以上手を出さないことが大切です。それと、法律的な理論武装も忘れずに、ネットのサバイバルを生き抜いてください。