引っ越しの朝、一番早く来てくれたのはSもっちぃだった。
牛舎仕事を終えてそのままアパートに来てくれたSもっちぃは
ストーブを外したり、ベッドを解体したりの力技を見せてくれた。
それにしても、このクソ重いストーブを一人で梱包するとは。。。

人間?( ; ゜Д゜)


少し遅れてメイちゃんのお母さんが来てくれた。
ちょいと困った時はお父さんも来てくれた。


荷物がすっかり運び出された後は、Sもっちぃは仕事にもどり
メイちゃんのお母さんと掃除をする。
この日に限ってかなり腰痛だった私は思うように体が動かない。
メイちゃんのお母さんがいてくれなかったらアウトだった。

途中で、ソラチが娘たちを連れてお別れに来てくれた。
ソラチも新しい土地の新しい人間関係の中で暮らす。
ソラチ、メイちゃんのお母さん、私の3人はしばし激泣き。


掃除が終わった。いよいよお別れだ。
最後の点検、戸締まりをするために一人でアパートに残った。


このアパートに何人の人が来てくれたんだろう。
検診の後にはスタッフと、研修会の後は講師の先生とこの部屋で語った。
ソラチ一家と釣りの後、釣果をおかずにご飯を食べた。
ソラチの娘たちとかくれんぼして遊んだ。
ボランティアさんと、熱く語った。
その他にもたくさんの人がこの殺風景なアパートに来てくれた。


そして


私が抑うつ状態になって苦しかった時
Sもっちぃが牛乳や食べ物をいっぱい持って来てくれた。
発熱したときは栄養ドリンク、スポーツドリンクをヤマほど持ってきた。
ここで、何度一緒にご飯を食べたのだろう。
いったいどれだけの時間、薄っぺらくて内容のない話に笑ったのだろう。


一人でぼーっと座っていたらSもっちぃからメールが来た。
「見送りできなくてごめんな」


我慢できなかった。
涙をためてあったカメが壊れた。
久しぶりに声を出して泣いた。


メイちゃんの家でランチをごちそうになり、お父さんとお母さんに
お別れを言い、役場で転出証明書をもらっていよいよ町を出る。

「これから町を出るよ」とSもっちぃにメールを送った。

しばらく走っているとメールが届く。

「見送りに出てきた」


えっ?

どこ?どこ走ってるの?

車を止めて電話する。

Sもっちぃ「おっ!すいかちゃん車発見!」

言われてルームミラーをみると、遙か後方にSもっちぃ車が。


町の出口にトンネルがある。
トンネルの脇にある駐車場に車を止め、お別れの挨拶をする。
泣くとSもっちぃに叱られるが、カメが壊れてるのでしょうがない。
でも、ちゃんとお礼が言えて良かった。


いつもこのトンネルが気分の切り替えスィッチだった。
トンネルを抜けると、ダーリンが待つ家に向かって走るのみ。
明るいうちに帰れるかな?
そんな事を考えながら、大好きだった街から旅立った。