全514ページの1/5が終わっていますが、未だに『お惣菜』には辿り着けず。
食物の教科書のようになっていますが、今回は『揚げ物』から始まります。
E.揚げ物の秘訣
□一般的な諸注意
『揚げものというのは、油で揚げた料理の総称です。その種類は魚や獣肉に衣をつけて揚げた「天ぷら」、野菜に衣をつけて揚げた「精進あげ」、その他「かき揚げ」「から揚げ」「さつま揚げ」「まるめ揚げ」など色々の揚げ方があります。いずれも沸き立たせた油の中に、食品を入れて揚げたものです』
「まるめ揚げ」って何だろうと思ったのですが資料が見つかりませんでした。
クロケットは基本小さな俵型ですし、フリットは衣を付けたらふんわりと丸く膨らむので、この辺りなのかなと考えてみました。
揚げ物は高温で短時間に仕上げるので食品の味を失わず、栄養部の損失も少ないとしたうえで『また、揚げ物に吸収しあれた揚げ油も一緒に食べる事になりますので栄養価にも富み、お寒い時分の料理として大変結構です』とされています。
■火加減
適当な火加減は160℃~170℃と書かれています。
『これを試すには、鍋に油を入れて火にかけ、油の表面の泡が消えて、紫色の煙が少し立ちはじめた時、お塩を少し油の中に投じて様子を見ます。その時ジュっと烈しく音を立てたら、油が160℃以上になっていて、材料を入れるのに良い時です。その音に余韻を長く引けば、まだ温度が低く、余韻が短く詰まる程高温になるのです』
令和で「紫煙」と言えば主にタバコの煙を指す言葉ですね。揚げ油で紫の煙というのは初めて見た気がします。発煙点が160℃~170℃の油といえば、ゴマ油(177℃)位だなと思っていたら、先の方で揚げ油として紹介されていました。
■揚げる時の注意
『水気があるとはねますから、水気を切って揚げます。水分の多い材料は、揚がり方が遅くなりますから、甘藷の類はあらかじめ切って、干して置いて揚げるとよろしいのです。』
また、『なるべく一緒に揚がるように、材料を選びきり方にも注意します』とも書かれていました。
『なお、揚げ物をする際には、油に火が移らないように注意し、もし火が移った時は、青菜を入れるか食塩を入れるかします。鍋蓋をするのも1つの方法です。あわてて水を入れてはいけません』
野菜は水分が多いため、高温の火に入れると火傷をしたり、水を入れた時と同じ状態になる為、現在では禁忌とされていますのでご注意ください。
□美味しい天ぷらの揚げ方
『天ぷらを美味しく揚げるには、材料、衣、油、火加減に注意することが最も大切なこつです』
本書では、季節の魚介を紹介した上で、『海老とアナゴは四季を通じて一等です』と解説していた上で、エビの下処理の際に背ワタを取らないと「アタる」原因になると書かれていました。
■衣の拵え方
『メリケン粉(小麦粉)は上等のものに限りますが、それもなるべく4~5か月経った古い粉が良いのです。古い粉のつぶつぶが出来ているのは、篩いでよく通して用います』
古い小麦粉はグルテンの生成がもろくなる、という話がありますので、粘り気を出さない為にあえて古い小麦粉を使う、という事なのかもしれません。
揚げ衣の作り方は以下の通りです。
①丼に卵3個を割り入れ、お箸でかき混ぜる
②小麦粉一合(180cc)と水を入れて軽く混ぜる
※水は多めに入れる
※粉に粒々感があってもいいのでざっと混ぜるにとどめる
『なおこれは秘伝ですが、粉を溶くのは井戸水が最も良いのです。深く掘った井戸の水を用いて揚げた天ぷらは、素人が拵えても玄人程においしくできるのです』
井戸水の温度は一年を通して約14℃らしいです。冷水の定義が~15℃らしいので、天ぷらの頃もには冷水を使う、とされている現在の料理本と同じ見解なのでしょうか。
また、天ぷら衣の卵の量を減らす時は片栗粉を混ぜると良いと書かれています。
・卵 1個
・酒 盃1杯
・小麦粉 630CC
・片栗粉 270cc
・井戸水
『尚、卵の黄身ばかりを用いて作った天ぷらを金ぷらと言い、白身だけを泡立てて作ったものを銀ぷらと言います』
金ぷら、銀ぷらは江戸時代から人気の料理だそうです。「御符内流行名物案内双六」の中でも「すわ町金ぷら」と紹介されています。
□天ぷらの油
『油は純粋の胡麻油で、冬寒くなると凍る油が良いのです』としていますが、好みによってサラダ油やオリーブ油を調合しても良いと書かれています。油は常に新しいものを用いますが、半分だけ新しい油にしても良いとの事でした。
□揚げ方秘訣
『鍋は、唐金製を第一とします。しかし家庭用としては、鉄鍋でもフライ鍋でも良いのです。又お座敷用の天ぷら鍋なら大変結便利です』とし、油は多い程良いと書かれています。
抜粋
①鍋に油を入れて強火にかけます
②油が渦を巻いてムクムクとたぎって来た時、菜箸の先にちょっと衣をつけて油の中に落とします
③衣がジュっと音を立てて広がれば適温です(これを「花が咲く」と言います)
④七輪の場合は口を閉め、ガスなら火力を弱めて調節し、衣を適宜つけた魚を入れる
⑤一度下に沈み、30秒ほどでグラグラと音を立て泡立ってきます
⑥泡立ってきてから1分30秒ほどで裏表を揚げます
⑦魚は一度に2~3個づつ揚げるとよいです
強火で早く揚げる必要がある具材として「イカとハシラ」が紹介されていました。
■お汁と大根おろし
『天ぷらにはお汁と大根おろしを添えていただきます。お汁をとるには、上等の鰹節をなるべく薄くかき、鍋にお湯をグラグラと煮たて、その中にかなりたくさん入れ、それと同時に生水を盃2杯くらい入れ5~6分煮たてから下し、別の器に漉しとっておきます』
抜粋
①醤油162CCを2~3分煮たてて臭みを取ります
②その中に砂糖小さじ2杯入れて少し煮た後、おろし際にミリンを18ML~27ML加え、煮立ったらすぐに火から下ろします
③②に前述の出汁540MLを混ぜて味加減します
『大根はなるべく太く短いものを選びますと辛味が少ないものです。おろしは5分以上置き、水分を摂って添えます』
最後に、こんなことが書かれていました。
『天ぷらは、揚げたての熱いのを揚げる端からいただくようにすれば、最も美味しいのですから、すき焼きと同様、ご家族の方たちなら揚げながらお食べになるのも良いでしょう』
この本を参考にした奥様には、卓上の天ぷら鍋で家族睦まじく天ぷらを食べて頂きたいものです。家族のために台所で揚げながら食べるのなら、家族よりも美味しい具材を食べて良いよ、思います。
金ぷら、銀ぷらから江戸時代の食生活に飛んでしまい、ずいぶんと時間がかかってしまいました。
次回は蒸し物から始めたいと思います。
