今回から、『西洋料理と支那料理』に入ります。
まだ料理までは行きませんが、当時の人たちの西洋料理感が伺える項目ですので、ぜひご覧ください。
総菜向け西洋料理の知識
□はしがき
器具についてー『我々の食卓に変化を与えるため、西洋料理の初歩的な知識は、一般家庭の主婦になくてはならないものとなりました。しかしまだ、西洋料理というと何か特別難しいもののように考えている方もあるようですが、私たちの過程でやる程度のものなら、それほど特殊な知識や材料なしにでもごく簡単に出来ます。器具なども、普通の瀬戸引き若しくはアルミの鍋大中小一揃え、ガス又は炭火の七輪がありさえすれば、結構それで代用できます。尤も鳥の丸焼きなどの場合なら、極めて質素で、実用的な天火一個を慎重すれば沢山でしょう』
出来れば鉄製のフライパンを一つ仲間に入れてほしいとは思いますが、西洋料理のために〇〇と××は最低必要です、と書かずあるもので何とかする姿勢は素晴らしいと思います。
『瀬戸引き』は、今で言うとホーロー鍋です。当時は『琺瑯』という素敵な漢字が充てられていました。
▲ー分量と目方について
『西洋料理はその分量をきめる時、大抵は匙できめ、もっと量の多い場合は目盛りの付いたニューム製の量りコップできめます』
ニュームは「アルミニウム」だそうです。
目安として次のように書かれています。グラム換算は諸説ありますので、できるだけ公的なものと探した結果、立川市のwebサイトに記載されていたものを基準にしています。
量りコップ(計量カップ)1杯は 水1合2勺(216ml) 実際は200ml
バタ(バター) コップ2杯に固く詰めて 1斤(600g) 実際は360g
メリケン粉コップ2杯 1斤(600g) 実際は220g
砂糖コップ2杯と2/3 1斤(600g)実際は347g
1斤の曖昧さ…。
1斤はグラム換算すると600gですが、食パン1斤は600gもないですよね。「日本パン公正取引委員会によると、パン1斤の定義は「340g以上のもの」だそうです。それで見るとバターと砂糖は良さげですが、小麦粉はまだ足りないです。アメリカの1カップは1/2パイントで約240mlですが、これでも全然足りないです。
…ここは軽く流すとしましょう。
□スープについて
『スープはご存じのように、洋食の最初に出す流動物で、丁度日本のお汁にあたるものです。その種類は動物の骨や肉から取ったものと、野菜ばかりから取ったものとがあります』
スープには、清澄(クリーヤ)スープ…コンソメと濃厚(シック)…ポタージに分けています。ポータージは現在のポタージュです。フランス料理ではスープ全般がポタージュと標記され、澄スープが「ポタージュ・クレール」とろみがあるスープは「ポタージュ・リエ」と呼ばれます。ポタージュはフランス料理が確立する過程で洗練されたものなので、洗練(シック)が記載されているのではないかと思います。濃厚=シックではないのではないかなと…。
この書籍では『コンソメは主として午餐に、ポターヂは晩餐に用います』と紹介されていました。
2019年にエリザベス情報が訪日された時の宮中晩餐会で「すっぽんのコンソメスープ」が提供されたという記事もあったので、午餐は軽めなのでコンソメスープで…という事かもしれません。コンソメスープは恐ろしく神経を使う料理なので個人的にはディナーでじっくり味わっていただきたいです。
▲肉のスープストックの摂り方
スープストックは『すなわちスープの土台となるだし』と書かれていて、そのまま提供する時には、肩肉、腿肉などの『相当良い肉』を使い、肉を捨ててしまうなら下股、脛肉などで十分、との事です。
以下、手順に書き換えています。
①滋養分を十分滲出させるために、なるべく小さく切る。骨付の骨は肉から離して一緒に鍋に入れる
②鳥や牛肉を鍋に入れ、水を入れて強火で煮る
③沸騰すると泡が出てくるので、穴あき杓子で掬い取る
④中火に落として3時間くらい煮る
⑤火をごく弱火に落として2時間煮る
最初の煮汁が2/3量になるのが目安との事です。
▲野菜のスープストックの摂り方
『野菜は普通、人参、菜類、馬鈴薯(じゃがいも)を用います。青菜は季節によってキャベーヂ(キャベツ)、白菜、芽キャベツ等を用います。人参は甘味をつけ、青菜は血液を清潔にして便通を良くし、馬鈴薯は澱粉成分に富んでいますから、体内の含水炭素(炭水化物の旧称)を補う働きかけをし、野菜スープ中、主成分になるものですから、いつの場合も野菜スープの時は、この三種の野菜をつかうようにいたします』
『野菜スープを作る場合は、スープがらを利用しないならば、皮をむかずにそのまま入れて、約二時間位煮出します』
ジャガイモを入れて煮出したスープはトロっとして濁っているイメージですが、滋味があって美味しそうです。
▲コンソメ
『極上等の清澄スープを作ります場合は、牛肉、鶏肉、犢(こうし)の腿肉を一緒にして使用すると、牛肉が味の土台となり、鶏は味を良くし、犢はゼラチンを加えて大変スープを軽くしますから、出来上がったものは、本当に美味しい理想的なスープなのです』
この煮出したスープを晒木綿やフランネルで漉した後、塩で調味し、色を付けるために料理用カラメルを加えると記載されています。
『コンソメの名はその中実によって、たとえば素麺が入ったのならコンソメ・オ・ヴェルミセールというように中実によってつけるのです』
ヴェルミセルはパスタの一種で、スパゲティより太くて短かいのが特徴です。昭和初期でしたら素麺で代用というのもありかもしれません。
▲ポターヂ
『これはコンソメと違ってドロドロした色のついたスープです。ポターヂは野菜をよく煮て裏ごしにかけます。玉葱をバタでいため、その中へ裏漉しした野菜を入れて、前のようにしてとった肉汁なり野菜汁などのストックを加えてだんだんとのばし、どろりとした濃厚なスープを作ります。又場合によっては玉葱の細かく切ったのをバタで狐色になるまでいため、そこへ水又は湯を入れて拵えたものを用います。ポターヂの名前は裏漉した野菜の名によってつけます』
ポタージュには、野菜の裏ごしの他にも貝類、魚類などを煮て裏ごしたものもあるとの事です。中実には固くなったイギリスパンを賽の目切りにしてラードで揚げたものをもちいるとの事です。
斤のグラム変換でかなり戸惑ってしまいました。この誤差が今後の西洋料理にどのくらい影響するのか…緊張しつつ次回「魚の料理」に続きます。