笑い泣き 高齢を生きていく

     ーよし、体を鍛えよう!」の巻

 まさか自分が「高齢者」になるなどとは夢にも思っていませんでしたねデレデレ

しかし今年の誕生日が来ると75歳。今や堂々たる後期高齢者です。

 いやはや、いつの間に歳をとったのでしょう。このあいだ古希になったと思っていたのにもう5年が経っています。時が矢のように流れています。

 コロナ禍があったのがウソのような気がしています。息を殺すようにして過ごした3年余りの時がごそっと消え去ってしまいましたえーん

 

 どうにかして時の流れを遅くできないものか。60を過ぎた頃からそのことに執心しましたがどうも無駄な抵抗に終わったようです。泣く子と地頭には勝てぬ、ではありませんが、時の流れには勝てませんね。当たり前と言えば当たり前なのでしょうが。しかし、これも当たり前と言ってしまえばそれまでですが、高齢になったらなったで「高齢を生きていく」しかありません。

 

 次期衆院選に裏金事件の責任をとり出馬しないと記者会見した自民党二階派の二階俊博議員(85歳)。記者が年齢のことを問うと「お前もその年がくるんだよ。ばかやろう」と捨てぜりふを吐いていました。安倍政権下で、権力が集中する幹事長職に5年余り居座わった人物たろうものがみっともない、「責任とって引退なのに、なんでそんなに偉そうにできる??」「まさに老害の中の老害」じゃないかとあきれられていましたグラサン

 

 もちろん彼とは会ったことも話したこともないので(笑)わかりませんが、彼の胸中を忖度するに、もしかしたら日ごろから「(オレは)歳はとってもしぶとく生きている(く)」という気持ちでいたのに、若い記者に自分の齢のことを持ち出されて、ついカッとなったのかもしれません。もしそうだとしたら気持はわからなくもないですね(笑)。もちろん本当のところはわかりません。しかしそれがどうであれ、くり返しになりますが人は高齢になったらなったで潔く「高齢を生きていく」ほかありません。

 

 さてそれはさておき、数カ月前、74歳になった時、私は発作的に(笑)こう思いましたよ。「よし、体を鍛えよう!」

 

 なぜそう思ったかと言うと、実は、「90歳までは生きたい」ウインクウフフ・・)と密かに思っているからです。ご存じの通り男性の平均寿命は81歳だそうです。しかし私としては、百歳は無理でも90歳まではなんとかして生きたい。

 

 その理由はただ一つ。死にたくないからです(笑)。我ながら ええっ!? それだけの理由で?! と思わないでもありません。何か特別なことをやり遂げたい夢があるというわけではないんです。とにかく、90歳までは死にたくないんですよ(笑)。

 

 だって、75歳から平均寿命の81歳まであと6年しかありません。現在、元気な自分が6年後に死ぬのは理不尽すぎます!・・・と思うのですムキー(笑)。

 

 90歳までだともうあと15年あります。ただそれだって、定年になってあっという間に13年が過ぎましたから15年もあっという間でしょうが、いずれにしろ1年でも長く生きたいですよ。とはいえ、勿論いつどうなるかこればかりはどうなるかわかりません。まさか自分が「高齢者」になるなんて思ってもいなかったのに現にこうして高齢者になっているのと同じように、死も、「自分が死ぬわけがない」「死ぬのは理不尽だ」と思っても「いつかは死ぬ」ということぐらいは私でもわかります。

 

 しかし一方では、もしかしたら「90歳までは生きられるかもしれない」という気がしているのも正直言ってあります。ただ、「気がしている」というだけであって、もちろん確たる根拠があるわけでもなく、落語の「死神」に出てくる死神様のような人から「あんたは90歳くらいまでは行けそうだよニヤニヤ」とかなんとかそう言われたわけでもありませんが。

 

 ・・・・・というわけで、もしも願い通りに私が90歳まで生きられたとしても、少なくとも歩ける状態でいたい。そのためには歩くための足腰の筋力が要ります。

 だから「体を鍛えよう!」と思ったというわけです笑い泣き

                ふたご座             

ハイハイ差別について考える

 ●『砂の器』とハンセン病ハイビスカス

 ここまで何回かにわたってハンセン病に関する話を取り上げて来ました。

きっかけは『差別の教室』(藤原章生・集英社新書)でした。

 ハンセン病の元患者差別について国の責任を認めた2019年の熊本地裁判決にふれられていたことに触発された私は、父(故人)がハンセン病療養所の職員だったことや私自身も少年の頃にその官舎で生活していたことなどが自然と思い起こされ、それに伴ってハンセン病にまつわる話題が芋づる式に涌き出てきたのです。

 

 そこで、やはり『差別の教室』の中で著者が「『砂の器』とハンセン病」というテーマを取り上げているため、最後に、それにも触れておきたいと思います。

              チューリップ黄     

 『砂の器』はご存じの通り松本清張の長編推理小説です。その原作が、1974年に松竹で映画化(野村芳太郎監督)され、その後テレビでもTBS系列で2回、フジテレビ系列で3回、朝日系列で2回と7度もテレビドラマとして放送されていますから多くの方がご覧になっていると思われます。

 

 『差別の教室』で取り上げているのは加藤剛・主演の映画のほうです。

 

 私は映画が封切られて何年か経って東京池袋の文芸座(当時)で見た記憶があります。とても感銘した作品として50年近く経った今でも、映画の名場面と甘く切ないテーマ曲のメロディーを思い出すことができます。

 

 映画はハンセン病を背景とした物語でした。主人公の新進音楽家・和賀英良(加藤剛)は有力政治家の令嬢(山口果林)と婚約し、人気絶頂の中にありましたが、しかしその名声と栄光はラストのクライマックスで題名の「砂の器」のようにもろく崩れ去ります。

                チューリップ赤

 主人公は6歳の少年だった時、ハンセン病(当時はらい病)の父親(加藤嘉)と東北地方の村を追われるように巡礼姿で日本海沿いを放浪し、東北弁と同じ訛があるという島根県の亀嵩(かめだけ)に流れ着きますが、父親は療養所に収容され親子は離ればなれになります。

 

 しかし少年は面倒見のいい駐在所巡査の三木謙一(緒形拳)の手許でしばらく育てられるものの父との別れが堪えられずやがてそこを飛び出します。けれどもその後、何年か経ち主人公は終戦時の戦禍で戸籍の原簿が消失したどさくさを利用して、忌まわしい過去を消し去るために戸籍を変え、名前も元の《本浦秀夫》から《和賀英良》に変えて音楽家として成功していたのです。

 

 そこへ、かつて亀嵩の地で幼い主人公を育てたいわば恩人である、老年で巡査をやめて岡山県下で暮らしていた三木謙一が現れ、瀬戸内海の療養所で淋しく晩年を送っている父親に一目会って成功した姿を見せてやれと主人公に勧めますが、出自がバレ、築いた栄光が崩れることを恐れた主人公は三木を東京の国電蒲田駅操車場で殺してしまうのです。

               チューリップ黄

 事件を捜査していた警視庁のベテラン刑事今西(丹波哲郎)と鎌田署の若い吉村刑事(森田健作)は、最初は被害者の身元すらも解からず難航を極めますが、とうとう、多くの観客の前で自らが作曲したピアノ曲を演奏し、絶頂の極みにいた和賀英良を逮捕するところまで追いつめていくのです。

 

 ●『砂の器』は差別を黙認・肯定している?ガーベラ

 そのハンセン病を背景にした物語である映画『砂の器』について、『差別の教室』の著者はこう述べています。

 

 —――主人公が、「世間体のために過去を抹殺してしまう」ことに、「映画を観た日本人の多くがさほどの疑問も違和感も持たなかった」。「むしろ、主人公に同情さえしている。それはなぜなのか」。

 

 「いまでしたら、ハンセン病の父親がいた過去が明かされることを恥じ、恩人を殺してしまう男に同情する人はいないと思いますが、当時はそれだけ日本社会が差別的だったのです。ハンセン病患者に対しても、黒人に対しても。

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 ですから、自分の地位のためなら、恩人や息子を平気で殺してしまう。あの時代は、テレビドラマの『赤い』シリーズなどもそうでしたが、出生の秘密や過去の過ちを恐れ、それを機に事件が起きる物語が受け入れられたのです。

 

 映画は人殺しをする主人公たちにどこか同情的だし、彼らを捕まえる刑事もずいぶんと情状を示します。観客も違和感どころか、涙さえする。主人公たちはやむにやまれぬ殺人を犯した善き人のように扱われている。

 

 『砂の器』では映画のラストで、(ハンセン病を)《こばむものはまだ根強く残っている 非科学的な偏見と差別のみで》といった文言が入りますが、そういう差別反対を一見装いながら、その差別を黙認し、それは仕方ないことなんだと、肯定しているように思えるのです」―—―。

                もみじ

 しかし、私は著者のこれらの主張に違和感を覚えました。なぜかひっかかるものがあります。何度読み返しても納得できないものがありました。

              やぎ座

■漫画『はだしのゲン』ラブラブを読むにっこり 

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    麦よ出よ

 ●早く迎えに来て欲しいと泣き叫ぶ昭えーん

  終戦になり、ゲンの兄・昭が集団疎開していた山奥のお寺に子供を迎えに親が次々とやって来ましたが、残ったのは昭と広田の二人だけになりました。お互い、迎えに来るのは「わしのほうが 先じゃ」と言い張っています。外は、真夏の太陽がじりじり照りつけるなかセミがミ―—ン ミ―—ン ミ――ン ツク ツク ホ——シ と鳴いています。

 と、そんな中、迎えに来たのは広田の母親でした。「うわ~~ん おかあちゃん わしゃみんなが 死んだんじゃ ないかと どんなに 心配したか しれんぞ」「ごめんよ とうさんや ねえさんが ピカで死んで・・・ かあさん がっかりして くるのが おくれたんよ・・・・」

 

 「ううう・・ とうちゃんと ねえちゃんが 死んだんか・・・」「おまえ これからは しっかり かあさんを たすけて ちょうだいよ」。「さあ 広島へかえろう」「う・・・うん」。

               ショボーン

 親子のやりとりを聞いていた昭は涙をこぼしてつぶやきます。

 「とうとう わし ひとりに なってしもうた・・・ ひとりに・・・」。そして、お寺のお堂に正座して経文を叫びます。「けいしゅてんにんしょ くぎょう ざいひ みめう あんらくこく こんじき しんじゃう にょせんわう」。そこへ住職がきて言います。

 

 「昭 どうやら おまえの 家族や親類は みんな ピカで 死んだらしいのう つらいけど しっかりせんと いけんぞ この寺では おまえだけ  のこったが ほかの寺には おまえと おなじような 子が いっぱい いるんじゃ 近ぢか だれも ひきとりに こない子を あつめて 孤児収容所を つくることに なっている かわいそうじゃが 孤児院へいっても 元気をだして がんばるんだぞ」

               プンプン

 「わ わしは 孤児院へいくのか・・・・い いやだ わしは 孤児院なんかに いきとう ないわい わしのとうちゃんや かあちゃんや 元や 進次や 英子ねえちゃんは 生きとるわい いまに むかえにきて くれるわい」(昭は疎開していたので8月6日に妹の友子が生まれていることはまだ知りません)

 

 「おまえの気持ちはわかるけどのう・・・・」「ばかっ ばかっ 和尚さんのばかっ」。外へ飛び出した昭を見て和尚は嘆きます。

 

 「むごいのう なにも わからん子が ひとりぼっちに なって・・・ 戦争は まったく 罪なことを のこしてくれたよ・・・」。昭は川岸に座って家族みんなが写った写真を見ながら涙ぐんでいます。そして、広田がやっていた花占いを始めます。

 

 「くる・・・」ブチッ。「こない・・・」「こない」「くる」「こない」「くる」「こないっ」。「うわ~ん」。最後にちぎった花びらが「こないっ」で終わったので昭は大声で泣きます。「おとうちゃーん おかあちゃーん はよう わしを むかえに きてくれよ~~」

              えーん

 立ち上がって叫びます。「浩二にいちゃ~~ん 英子ねえちゃ~~ん 元ーっ 進次ーっ はよう きてくれよ~~ わしは 孤児院へ いきとう ないよ~~ みんなのいる 広島へ かえりたいよ~~ おねがいじゃ~~ たのむけえ~~ みんな 生きていてくれよ~~」。「うわ~ん うわ~ん うわ~ん」

 

 ●ゲンと隆太が昭を迎えにいくことに・・チュー

 「ううう ううう」

 床に寝ていたゲンの母・君江が苦しそうな声をあげました。「おかあちゃん どうしたんじゃ くるしいのか どうしたんじゃ 泣いたりして・・・・」と尋ねるゲンに君江は、「ハッ」となって起き、「ゆ 夢を みてたんだね・・・ 昭が しらない 遠い遠い ところへつれていかれて・・・ 泣いて あたしを よんでいたんだよ はよう 昭を むかえにいってやらなくては・・・」と言います。

 

 「ほうよ はよう わしも 昭あんちゃんに あいたいよ・・・」。「だけど こまったね あたしの 体のぐあいが わるくて・・・ それに 赤ん坊の 友子をつれて 二日もあるきつづけないと 昭の いなかまで いけない」

                ニコニコ

 「おかあちゃん わしが いったるよ」「だ・・・だいじょうぶかい 電車もバスも ないんだよ」。「まかしとけ 隆太と いっしょに いってくるよ あるくのは 平気じゃけえ なっ 隆太」「う うん だけど はらがへるのう」。

 

 「エへへへへ それに いなかにいくと イモや米が あるけえ たのしみじゃ」「ほ ほんとか あんちゃん ばんざ——い いこう いこう さあ いそがしい いそがしい」。「チッ あいつは たべることに なると はりきるのう・・・」

 

 ●「お山の杉の子」を歌い殴られる隆太ガーン

 こうして、ゲンと隆太は歩いて、疎開先のいなかに兄の昭を迎えに出発します。

前に、ゲンは生れたばかりの妹・友子に飲ませるお乳がでない母のために田舎へ米を手に入れるために出かけました。私はそれを、物語の原型「行って帰る」パターンだとみなしましたがそれで言うと、いなかに兄を迎えに行くのは、2度目の「行って帰る」です。

 

 しかし前回はゲン1人でしたが、今度は相棒の隆太も一緒の旅です。

 

 「あんちゃん まだ いたるところで 死体を やいとるのう」「う・・・ うん」。

焦土と化した広島の街を歩く2人。死体を焼く煙がたなびいています。

 

 「さあ 元気をだして いこうぜ 昭あんちゃんが まっているんじゃ」「アイ アイ」。そして隆太が歌いはじめます。「むかし むかし そのむかし しいの木林の すぐそばに 小さなお山が あったとさ あったとさ まるまる ぼうずの ハゲ山は いつでも みんなの わらいもの」

             ムキー

 ムッとなったゲン。「ばかたれ その歌を うたうなと いうのが わからんのかっ」と言い隆太の頭をゴ~ン。ギャッ。「ギャハハハ そうか あんちゃん まるハゲ じゃけえのう わるい わるい」

 

 そういえば前にも同じようなことがありました。画家志望だったピカでケガを負った吉田政二さんをリヤカーに乗せてゲンと隆太の3人で写生に出かけた時のことです。

 その時も隆太が「まるまる 坊主の はげ山は~~」と歌ったところで、ゲンがムッとなって隆太をボカッ、「その歌をうたうなっ」と怒り、「く くそっいつになったら わしの頭は 毛が はえる のかのう・・・かなしいのう」というシーンでした。

 

 ●兄に暴力を振るわれた妹を助けたゲンラブ

 じりじり照りつける太陽。

 ミ~~ン ミ~~ン ミ~~ン

 

 「ハア ハア」へたばって道に足を広げて座りこむ隆太。「隆太 なにを しとるんじゃ はようこい」「あんちゃん すこし やすもうよ わしゃ はらがへって うごけんよ きょうは べんとうの イモを 二個しか たべとらんけえ もてんよ」

 

 「がまんせえ」「ひどいぞ いなかは たべものが いっぱい あると いうたけど ないじゃないか くるんじゃ なかったのう」「いつまでも もんくを いうとると おいていくぞ」           悲しい

 とゲンが言うや否や、どこからか「うわ~ん うわ~ん うわ~ん」と泣き声がします。「むっ」とゲンと隆太が声のする方を見ると、農家の前の道の真ん中で、男の子が小さな女の子を「このばかたれ ばかっ ばかっ ばかっ」と言いながらボカッ ボカッ ボカッと殴っています。

 

 「うわ~~ん うわ~~ん うわ~~ん」。「まぬけ——」「あほう」「こいつめこいつめ」と言って、倒れたその子の背中を足でバンバンと蹴ります。「うわ~ん うわ~ん うわ~ん」

 

 「ど・・・ どうしたんじゃ」「ひどい ことを するのう あんな 小さい 女の子を・・・」。「うわ~ん うわ~ん うわ~ん」

 

 「く くそわしゃ がまん できんぞ とめて やるんじゃ 隆太」「アイヨ」。

             ムキー

 「このばかたれ わりゃなんで こんな 小さい子を いじめるんじゃ」。ゲンは、女の子に暴力をふるっている男の子を足で蹴ってそう言います。

 

 「やかましい このさち子は わしの妹じゃほっとけ」。「うわ~~ん うわ~~ん」。「い・・・ 妹・・・・」とゲンが言えば、「わ わりゃ 自分の妹を よくも あんなに なくれるのう」と隆太も驚きます。

 

 「うるさい はよう どこへでも いってしまえっ いらん おせっかいを やくな」「わりゃ 鬼じゃ」。「あんちゃん このままに しておくと あの女の子 殺されるぞ」「ほうじゃ つれて にげて やろうか!」。「わしが あいつの足に かみついて やるけえ そのあいだに」と隆太が言えば、「ようし」とゲン。

               

 そして、「なにを ゴチャゴチャ いうとるん じゃ はよう むこういけっ」と隆太を促します。すると隆太は脱兎のごとく走り男の子の左足の太ももにガブッとかみつきます。           ガーン

 「ギャ イタタタ」。「さあ さっちゃん わしと くるんじゃ」。ゲンはさち子を抱えて、おんぶし、「隆太 はようこいっ」と言ってかけ去ります。「こら—— まて—— 妹を かえせーっ」

 

 ●助けたはずの子に石で殴られたゲンガーン

 「まて——」「やーい ばかたれ ざまぁみろ」。遠くから追いかけてくるさち子の兄に、おしりを突き出して手でお尻を叩く隆太。

 

 そして、さち子をおんぶしたゲンは「ハア ハア」と息を弾ませて、隆太とともに、なおも走ります。「さっちゃん もう だいじょうぶだぞ おまえの あんちゃんは ひどいことを するのう さっちゃんの 家は どこじゃ おくって いってやるぞ おにいちゃんに ひどく なぐられて いたことを おとうさんに おしえて やるぞ おとうちゃんや おかあちゃんは おるんじゃろう」。

 

 ゲンの問いかけに黙ったままのさち子に隆太が言います。「どうしたんじゃ オシのようにだまって・・・」。「そうか よっぽど こわくて ものがいえんのか・・・」とゲン。          ひらめき

 すると、さち子は道道端にある石ころを指出して、「石・・・石・・・」と言います。「・・・石?」。怪訝に思ったゲンは、「あああの石を とってくれと いうとるのか 隆太 とってやれ」「アイヨ」。

 

 隆太が言われた通り石をとってさち子に「どうするんじゃこんな石を・・・」と言いながら渡すと、さち子はその石を両手で持ち上げ、ガツンとゲンの頭に振り落としました。「ああっ」「ううう な なにを するんじゃ」「ヒャー」

 

 さち子はなおも石を持ち上げています。

「うわ~~~ あんちゃん あぶない」。ガツ。

 

  ゲンは「ぐぐぐぐぐ」と両手で頭をかかえてしゃがみます。「お おどりゃ なにをするんじゃ」と怒る隆太。ゲンの背中から飛び降りたさち子は、「ばかっ ばかっ ばかっ」と言い放って走り去ります。

               ムキー

 「まて~~ ばかとは なんじゃ せっかく たすけてやったのに く くそっにげ足の はやい やつじゃ しゃくに さわるのう お——い あんちゃん だいじょうぶか」

 

 「ううう いたい いたい 頭が われそうじゃ・・・・」「しっかり せえよ あんちゃん」いたいよ~~ いたいよ~~」。

 

 隆太がゲンの帽子をとるとデカいたんこぶができています。「アリャ~~ 大きな コブが できたのう エへへへ だけど このコブは モチみたいに うまそうじゃのう たべたくなるよ」。なんと、隆太はベロッ ベロッとそのコブを嬉しそうに舐めます。

 

 「ギャ~~ しみる~~~ ばかたれっ ひとのことだと おもって むちゃをするな」と飛び上がるゲンに隆太は笑って「ごめんちゃい」と謝ります。

               びっくりマークはてなマーク

 しかしそれにしてもゲンは、「親切にして ばかを みたのう さっぱり わからんよ」とさち子の行動を嘆き、それを受けた隆太は、「ほうよ こんどあいつを みつけたら ただじゃ すまさんぞ おぼえて いやがれ」と両手の拳をあげます。

 

 ●またも兄が妹を殴っていたのを見るはてなマーク

 ミ~~ン ミ~~ン

 ミ~~ン ミ~~ン

 川岸に夏の陽とともにセミの声が注いでいます。そこにゲンと隆太の二人が休んでいます。ゲンの禿げ頭の上には隆太が木の枝に紐をむすんでその先で首を結わえたガマガエルがベタっと座ってゲコッ ゲコッと舌を出しながら鳴いています。

 

 「エへへへへ あんちゃん コブが 小さく なったぞ ガマの油が きいてきたんじゃ」

 「ほうかのう カエルは つめたいけえ 気持ちがええよ・・・ そろそろ いこうか すっかり むだな 時間を つぶしたよ 昭 あんちゃんの ところへ はよう いかんと いけんのじゃ」「う・・・ うん」。そう言って二人は立ちあがります。

 

 「まだ 頭が ガンガン する」とゲン。「いや~~ まいった まいった」と隆太。とその時、またもどこかから、「うわ~ん うわ~ん うわ~ん」と泣き声が聞こえます。

              グラサン

 「おおっ」「ああっ」。見れば、またもや農家の前の敷地内で男の子が女の子を「このばかたれ ばかたれ」と殴っています。「うわ——ん うわ——ん うわ——ん」「このあほうっ」ボカッ。

 

 「あ あんちゃん また あの女の子 なぐられているぞ」「いったい どうなって いるんじゃ あいつら」。「く くそ ひどいことを するのう あいつは」「あの女の子も ばかじゃないのか よく だまって なぐられているのう」「ようし あいつは あんちゃんの かたきだ やっつけて やるぞ」。

 

 二人が現場に駆け寄ると、農家のおばさんが男の子に向かって「こら—— おまえは なにを しとるんね 小さい子を いじめて」と怒鳴り声をあげています。「うわ——ん うわ——ん」

              びっくり

 「かわいそうに すっかり キズだらけに されて・・・・」「ほっといて ください わしの妹じゃけん」。「ばかたれっ 妹なら いじめては いけんじゃ ないの どうして あんなに なぐるんね わけを いうて みんさい」。

 

 「はずかしくて いえんよ」「ええから いうて みんさい」。「じ・・・じつは・・・」

 

 近くでやり取りを聞いていたゲンと隆太は、男の子が何を言うのか「・・・・・」「・・・・・」かたずをのみます。

―続く

     チューリップ黄ふたご座チューリップ黄パンダちょうちょチューリップ赤

       2024年4月1日(月)

            おばけくん