こんにちは、舘ぴろしきです。

人生、出会いがあれば別れがあるもの。いつまでも対等に続く関係性などこの世には何もありません。生者必滅会者定離こそが世の理。愛別離苦たるものは生涯に渡って付き合っていかねばならぬものなのです。

………そうはいうものの。

やっぱり、突然の別れに折り合いをつけるというのは易しいことではありません。それを、しみじみ実感いたしました。

7月のことでした。

Yahooニュースにその見出しを見つけたのは。


11カ月間賃金未払い疑い 桑名の水谷新九郎商店を書類送検 三重


ええええええっ!!!

危うく大声を出すところでしたが寸前にこらえ、私は呆然として画面を見つめました。 

水谷新九郎が………書類送検…………???

(あ、ちなみにヤクルトの某内野手とはなんの関係もございませんよ。)

水谷新九郎とは、老舗の水産食品会社。三重県は桑名に名を連ねる名店・総本家貝新から暖簾分けを得て独立した店舗のうちのひとつ。細々した説明は面倒なのでここでは省きますが、他の分家に『新之助貝新』『貝新新七商店』『銀座 貝新 』『日本語 貝新』があるそうです。

閑話休題。この水谷新九郎商店は、母方の実家の付近にあるデパートに店を構えており、帰省のたびによく商品を買っていたのです。なかんずく、アサリのしぐれ煮は貝新の分家の中でもトップクラスの美味しさ。

甘味と辛味の絶妙なバランス、弾力に富んだ食感の妙、後味にかすかに残る磯の香りを含んだ渋み。

これね、白いご飯に載っけて食べるもよし、梅干しや昆布と一緒に出汁でお茶漬けにするもよしで、おかずにホント重宝していたのですけども、昨年のことでしょうか、いつものようにデパートの地下食品売り場に向かいますと、なんと店のあった角にシャッターが閉まってるではありませんか。

臨時休業かな? と思い近づけば、シャッターの表面の波状に合わせてシワの寄った紙が1枚、乱雑に貼ってあるんです。


【無期限休業のおしらせ】


──何ィ!?


そこには、閉店を告げる由、そしてそれが跡継ぎの不在に端を発している旨が淡々と書かれており。

私、茫然として店の前に立ち呆けておりました。あのしぐれ煮が、もう食べられなくなる……?

失意の足取りで退場の途に就く私なのでした。

そして、先月。模試を受けに会場へ電車で向かう途中、ふいに目に入ったYahooニュースの記事………

以下、記事のコピペ↓


賃金を11カ月間支払わなかったとして、三重県の四日市労働基準監督署は12日、最低賃金法違反の疑いで、桑名市本町の食料品製造会社「総本家貝新水谷新九郎商店」と男性経営者(57)を書類送検した。

  送検容疑は令和4年10月―昨年9月、県内などで働いていた40―70代の従業員七人に、定期賃金計約1113万円を支払わなかった疑い。

     同署によると、従業員から申告があり、同署が捜査していた。同社は昨年9月ごろから操業を停止しているという。同署は認否を明らかにしていない

  

…………

……………………………

……………………マジか~………………

そこまで経営困難に陥っていたとは。ヤ、でもそうね、無賃金で労働させるのはさすがに駄目よね。犯罪ですからね。うん。はい。



だとしても。

もうあの味が世に出回ることはないのか、と思うと、一抹の寂しさを覚えざるを得ないわけです。

会者定離、という言葉をしみじみ噛み締めた、夏の午後の出来事でした。

ではまたね!







本文の引用はこちらのリンクから↓

https://news.yahoo.co.jp/articles/c6420024d9e6580334b3c7befedc2932728af06a