今、ブータン国王と王妃が来日されていますね。


今年の夏に訪れたブータンを思い出して、

国王のスピーチで私たち日本の事を思ってくれている事に改めて感動しています。



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国王のロイヤルウエディングが行われたプナカゾンという
素晴らしいお城のようなお寺があります。
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その、プナカ市に訪れたときに

県知事からお話を伺いました。


本当に素晴らしいお話だったので、少し長いのですが、
ここにのせておきます。私も、知事に質問しました。ぜひ最後まで、
お話を読んで頂けたら嬉しいです。







2011年8月30日
プナカ県知事のお話 於:プナカキャンプ場


プナカ県知事のお話 プナカは、ブータンの首都がティンプーに移る前、ブータンの首都でした。
母なる川であるモチュと、父なる川であるポチュに恵まれた、 豊かな自然に恵まれた美しい町です。
今年はこの川の合流点にあるプナカゾンで行われる、第5代国王のロイヤルウエディングという大切な事業も控えています。

皆さんは、都会であるティンプーに行かれたと思いますが、いまでもブータンは7 0%が農村で、人口の90%が農民です。農村がブータンだ、と言っても過言ではありま せん。 基本的に農民は自給自足です。 食べ物を人々が豊かに生産できる事によって、 ブータンはフードセキュリティーがしっかりしており、それが人々の安定にもつながって いると思います。

農村の人々には「他人の顔に、ほほえみがあるのが幸せ」という考え方がいまでも 残っています。人々は「足る」を知り、謙虚な美しい心を持っています。私はこれがブー タンのGNHの指数が高い理由だと思います。

私は今、プナカの県知事をしていますが、私の仕事は、農村の人々の幸せのために、 村民の僕となって働くことです。日々、「民に仕えるもの」になるために努力していま す。この「民に仕える」という考え方は、現国王から得た言葉です。第4代国王が就任さ れたとき、国王は人民にこのようなスピーチをされました。「私は国王に就任しました が、国王のように暮らしたいとは思っていません。この国のすべての人々のための僕となりたいと思っています」と。
私はその言葉に感銘し、私もプナカの人々の為の僕になりたいと思い働いています。そして、多くのブータン人と同じように、私自身も人として自分 の内面を高め、善き者になりたいと、努力しています。


さて、今わたしはプナカの知事をしていますが、その前にはブータンの他の4つの県 の市長をしておりました。その意味で、プナカだけでなく、ブータンについてもお話しさ せて頂くことができればと思います。

ブータンは20の県からなる国で、公園のように美しい国です。オーガニック農業も 盛んです。これは、他の国とのアクセスが悪い事が幸いし、化学肥料などをあまり取り入 れなくて済んでいることも幸いしています。またプナカの近く、「ガサ」という県では、 この10年間、ガサ市長がオーガニック農業を推進してきました。そのおかげで「ガサ」 はオーガニック県になりました。私もプナカをこれからオーガニック県にしていきたいと 思っています。ここは農作物が育つ温暖な気候に恵まれており、私はここが簡単にオーガ ニック化すると思っています。いまでは、世界中でオーガニックの大切さが理解されてき ています。ブータンでは、これから国土全体をオーガニック化する決意を議会で意思を固 めているのです。

ブータンはGNHが一位であると言う事で、世界に知られていますが、なにも私たちが 世界中で一番幸せな国というわけではありません。私たち国民一人一人が、世界で最も幸 せな国になろうと努力している国なのです。

私からのブータンの説明はここまでにします。これよりは、皆さんから質問を受け付 けて答えていきたいと思います。

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(プナカ市長と、ツアーを主催してくださった辻信一さん)



==質疑応答==

Q. ブータンを訪れて、とても美しい国、という印象を持ちました。知事にとって、 ブータンの「美しさ」とはなんでしょうか?

知事答え:

ブータンは自然環境に恵まれた美しい所です。その中でも強いて一つあげるとすれ ば、それは私たちの前を流れる、母なる川「モチュ」だと思います。この川は人間のみな らず、動物、そして、農作物へ水をもたらし、私たちに豊かさをもたらしてくれます。恵 みをもたらしてくれる河に、ブータンの人々は感謝しています。そして、なによりも、こ の自然環境を守る国民一人一人の美しい心が、ブータンの一番の「美しさ」だと私は思い ます。

Q. GNH の基本理念の中に
*豊かな自然環境の保全と、持続可能な利用
*文化遺産の保護と、伝統文化の継続振興
がありますが、それは人々の幸せにどのように関係しているのでしょうか?

知事答え:

環境を守る事は、GNHにとってもっとも大切な要素です。なぜなら、自然環境は私たちが生存していく基盤だからです。この自然が守られているおかげで、私たちは良い空気 を吸って健康に生きていけます。私たちを養ってくれる食べ物は、すべて自然からもたら されているものです。自然は動植物の豊かさを支えてくれています。自然なしでは、私た ちの幸せはありえないのです。自然環境を守っていく事は、私たちの幸せにつながってい ます。

文化を守ることの大切さは、ブータンに限らず世界中のどの文化もとても大切なものです。
ブータンがブータンである理由はなぜでしょうか?それは私たちに固有の文化がある からです。文化は私たち国民一人一人のアイデンティティーにもつながっています。 ブー タン人にとって、私が私である所以が、ブータンの伝統文化なのです。

ブータンは 中国やインドという超大国に挟まれた、 外国に比べてとても小さな国で す。このブータンが、諸外国に押しつぶされず、ブータンという独立国家でいられたの は、なぜでしょうか? それは、私たちに伝統文化があったからです。 私たちはブータン 人であることを伝統文化を通じて、ひとりひとりが自分が誰であるかを理解するのです。

ブータンは、大きな地球から見れば、点のように小さな国にすぎません。それにも 関わらず、この国に多くの人が訪れてくれるのはなぜでしょう? このブータンには、自 然が豊かに残っている、ということもありますが、それに加え、ブータンの伝統文化の価 値が重要であるからだと、私は思います。 ですから、GNHを高め、個人が幸せになるた めには、環境と文化がとても重要なのです。

Q.ブータンは美しい国ですが、農村を訪れたときに、ゴミが放置されているのがきになりました。知事はゴミの問題について、どうお考えでしょうか?

知事答え:

ご指摘されたように、ブータンではゴミ問題は現在重要な課題になっています。ゴミ は主に、インドやバングラディシュなど外国からの輸入品のパッケージとしてブータンに もたらされています。それまで、ブータンではプラスチック製品はありませんでした。 人々は物は全て、オーガニックで朽ちれば土に還るものを使っていたので、プラスチック が土に還らずいつまでもゴミとしてある、ということを理解できていない、または実感し ていない人々が、まだいる事は否めません。この問題については、教育が重要になってい ます。私もゴミの問題に取り組んでいます。

Q.今回初めてブータンを訪れてみて、日本の原風景とも呼べるような、昔の日本によ く似ていて懐かしい国だと思いました。日本では近代化によって、開発が進み、自然環境 は文化も失われつつあります。そして地震災害に伴い、311に原発事故も起こしてしま いました。私たち日本人になにかメッセージをいただけますか?

知事答え:

ご質問の通り、私も日本そして日本人の方々に大して、深い親近感を持っています。 ブータンと日本は距離は離れていますが、多くの類似性があり、深い縁があるように思い ます。 大昔、ブータン人と日本人は同じ民で、地球規模の大きな災害が起きたときに、それぞれ分かれて暮らすようになった、という説を言う人もいます。ですから、ブータン人も日本に対して深い親近感を持っているのです。 今回311の災害で、ブータン人も大変心を痛めました。国王はじめて、多くのブータン国民が、日本の為に全国民が祈るという事を国を挙げて行いました。日本の復興の為 に基金をつのるキャンペーンを震災後初め、それは今も続いています。 私が日本に対し てしてアドバイスを言えるようなことはないのです。私には、日本の幸せを祈ることしか できません。でも、強いて1つだけ挙げるとすれば、どうかこれから、「原子力から、手を引く。使うのをやめる」ということをやってほしいと思います。

Q.人々が幸せになった後には、なにがあるのでしょうか?幸せのその先がわかりませ ん。教えてください。

知事答え:人々がある程度の条件を満たせば、幸せは持続すると思います。

Q.ブータンでは近代化に伴い、テレビメディアが導入されています。テレビは人々に 悪影響を与える部分があるとおもいますが、その点についてはどうお考えでしょうか?

知事答え:

ブータンでは1998年にテレビが導入されました。その際に、国王は「国民の皆が テレビを求めているので、私は導入に踏み切りました。テレビには、良い効果があります がそれと同時に悪い効果もあります。どうか、皆さんテレビの悪い効果をはねのけてください」と懸命に演説しました。テレビの影響によって、幼い子供は悪い行動を起こしたりします。テレビが導入されて、親は教育の苦労が増えたと思います。

Q.知事ははじめに、自分自身を高めて人として善い者になりたいとお話しされました。
日本の政治家は、選挙時に「国が良くなるため、国民が良くなるため」に努力をしますが、人として、自分自身が善くなるようにと、努力している人はあまりいません。知事 にとって、ご自身の内面を高めていく、とはどのような事なのでしょうか?

知事答え:

まず、お話しするのは、日本と違い、知事は選挙で選ばれるのではありません。ブー タンでは知事は任命制なのです。ですから、自分は選挙をしたことはなく、人々に任命さ れ、プナカ市民の公僕として、村民の僕となって働くための仕事をしています。

さて「自分自身をたかめる」、人として成長する、ということは、ブータン人皆がめ ざしていることです。仏教を通して、人々の為に尽くすことで自分自身を高めていくこと、それを目指すことが「自分自身をたかめる」基本です。

自分を高めていく事が幸せにつながっている事を、ブータン人は知っています。私は 知事として日々働いていますが、なにも財産は持っていません。土地も家もビルも何も 持っていません。自分自身の仕事を持ち公僕として仕事を行い、私個人の物質的な富を求 めることはしてきてはいません。

だから私は幸せなのです。私は、何一つ失う物はありません。 得た物を失う事を恐れ

る事はないのです。 最後にみなさんが心に謙遜と、顔にいつでも微笑みがあるように、どうぞ他の人々と

仲良く幸せにくらしていけますように。