<ドキュメンタリー>被災地の女子高生描く…上映の輪広がる
毎日新聞 10月13日 11時23分配信

主人公の女子高生を取材する榛葉健さん=宮城県南三陸町で、写真家のシギー吉田さん撮影
 東日本大震災の被災地で暮らす1人の女子高生を追ったドキュメンタリー映画「うたごころ」の自主上映会が、全国で開かれている。監督は民放局のディレクターとして阪神大震災の報道にも携わった榛葉健(しばたけし)さん(48)。休暇を利用し手弁当でカメラを回した。「ありのままの被災地を感じ、つながりを持つきっかけにしてほしい」。思いに共感したボランティアの手で上映の輪が広がっている。【竹内良和】

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 ◇「ありのまま」に共感

 映画は、津波で自宅を失った女子高生の4カ月を60分にまとめている。震災を機に父母への思いを深めたり、高校の合唱部の引退コンサートに挑んだりしながら自分を見つめ直す姿を追った。

 榛葉さんが初めて被災地入りしたのは昨年5月。壊滅的被害を受けた宮城県南三陸町に向かうボランティアの合唱グループに同行した。避難所で歌を聞き、泣いていたのがこの女子高生だった。「この2カ月間、歌のない生活だったので……。泣けて泣けて仕方がなかった」。そんな言葉に、製作を決意した。

 毎日放送(大阪市)のディレクターとして阪神大震災などを題材に多くのドキュメンタリーを手がけてきた。今は管理職となり、仕事で現場に行けない。だが「自分にできることをしなければ一生後悔する」と思い、ボランティア休暇などを利用して1人で取材、撮影を始めた。

 「被災者の人生を見せ物にしてはいけない。ありのままを伝えたい」。音楽やナレーションによる過度な演出やインタビューの編集は極力控えたという。がれきの街に吹く風の音や、凸凹になった道を行く車の走行音をカットせず生かした。

 自費製作で広告宣伝費もゼロだったが、昨年8月に大阪で初めて公開されると、映画を見た学生や主婦らの協力で関東、関西や東北に自主上映の動きが広がった。1年余りで20回近い上映会が開かれている。

 「被災地への優しさを感じる」。震災で親族7人を亡くした南三陸町出身の洋画家、外立(はしだて)とし江さん(68)は、親族の住む茨城で上映会を計画している。9月末にあった埼玉県内の上映会で作品を見た春日部市の福原智子さん(58)は「最初は車の走行音や風の音が騒々しく聞こえたが、その意味が分かった。無理に感情移入させようとせず、少女の姿を淡々と描いているのもいい」と話した。

 来春は少女と父母のその後を追った続編を公開する。上映予定は「うたごころ」のホームページ(http://utagokoro.info/index.html)で公開している。


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