コロナ禍の影響かどうか分かりませんが、不当解雇の相談を受けることが増えています。


私は、雇用政策の大転換として「雇用の許可制」を導入するべきだと考えています。


これだけで労基署の権限が一気に強化され、労働法を遵守しない企業に対しては円滑に行政処分(事業停止命令など)を下すことが出来るようになります。
ホワイト企業には得ばかりの制度です。

 

「雇用の許可制」とは、

事業者が人を雇う際には労働条件や雇用契約内容等を労働基準監督署(あるいは都道府県)に申請させ、行政が適法であることを確認してからでないと労働者を雇えなくする制度です。
違法労働があった場合、労働者が行政に通報すれば、直ちに営業停止とすることも可能になります。

 

飲食店で食中毒が出たら、すぐに保健所がとんでいって、その店は営業停止になります。
なぜ労基法に違反しても、会社は営業停止にならないのでしょうか?
これまで、労働法に違反した企業がすぐに営業停止にならなかったこと自体、そもそも間違っていたと考えるべきだと思うのです。

 

日本国憲法第18条は、 
【何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。】

と定めており、
原則として禁止された事項について、例外的に行政が『禁止を解除』する「許可制」こそ、憲法の主旨にも沿っていると言えるかもしれません。

 

もちろん、働くことが喜びであるに越したことはありません。
しかし、やりがいがある仕事に就いて、なおかつ充分な収入を得ることは、本当に難しい。
労働法や下請法は、そうした前提のもと、全面的に改正していくべきだと考えています。


私の問題意識は、労働基準法13条が骨抜きとなり、基準に達しない労働契約が放置されていることにあります。

だから条文を担保できる仕組みを作るべきと考えているのです。


労基法は労働刑法とも呼ばれますが、実際の運用は刑法よりも民法に近い面があります。
そのため違反事例(労働刑法上の犯罪)の多くが行政に見過ごされてきました。
労基署に相談に行っても「あなたは会社を訴えることができます」と、単に弁護士を雇うことを薦められて相談が終わってしまうケースも少なくないと聞きます。

仕事に追われ生活に追われる国民に、その負担を押しつけることは間違っています。

 

国民生活を守るため、中長期的な労基署の増員は必要であると考えますが、

「雇用の許可制」が実現すれば、増員を最小限に、労働刑法上の犯罪を一網打尽にできる可能性があるのです。


派遣法の導入をはじめ、労働法の体系が骨抜きにされた結果、働く人の給料を不当に安く抑えることで企業が莫大な利益を上げることが可能になりました。
給料に関わらず全力で働く国民性だからこそ、労働行政の適正化が重要だと思うのです。

 

「行政の確認するべき適法性」としては他に、就業規則や安全衛生管理などを想定しています。
また、1人の違法労働によって営業停止に「できる」制度になれば、大きな抑止力が期待できるはずです。


実際の運用では「警告」や「行政指導」が先に来ることになりますが、

労働行政に事実上の許認可権を持たせることで、健全な労務環境と健全な競争の実現につながると信じています。