奨学金制度は国家的な大失策でした。

私には、日本社会の抱える矛盾・世代間格差の問題が、この奨学金制度に集約されて噴き出しているように思えてなりません。

 

大学数の増加、奨学金制度、そして就活の文化。

この3つが最悪の組み合わせとなり、

日本の若者の教育機会を奪い、格差を拡げる結果を生みました。

政府と国会は、その現実を直視するべきです。

 

順を追って説明します。

大学数の増加により、多くの若者に大学進学への道が開かれました。

「大卒」資格を目的に、学問のためでなく進学する学生が多く生まれました。

 

私はもともと、学生本人が望むなら、大学院までの教育費を無償化するべきだという立場です。

しかし現状、様々な事情から中卒・高卒で社会に出た若者が納税した血税が、大学への助成金として「逆再分配」を生んでいます。

この不公平は、直ちに是正されなければならないと考えています。
 

そもそもすべての大学は「最高学府」であり、高校レベルの知識を教えるような水準では困ります。

まして、分数のできない大学生、本を読まない大学生に、大卒資格を与えるなど言語道断でしょう。

 

そして「大卒」資格を得るために、より具体的にいえば、就活チケットを手に入れるために、奨学金を借りる学生が生まれます。

むかしから苦学生は存在しましたが、当時の国公立の学費は、学生が働きながら払える金額でした。

 

なにより、当時は学生アルバイトを社員の頭数と同じように扱い、徹底的に働かせるような職場は稀だったと思います。

飲食店などで顕著ですが、いまはどこもギリギリの人数でシフトを回していますから、学生が働こうとすると、どうしても学業が疎かになります。

 

しかも当時と違い、仕送りの金額も減っています。おそらくこれは大学生の「親世代」の格差が開いたことに由来します。

こうした「アルバイトを兼業する学生」の多くが奨学金制度を利用しているのです。

 

こうして、大学に入ってもバイトに忙殺されて学業に身が入らない学生が増えました。

その状況にトドメを差すのが、日本の就活文化です。

 

新卒一括採用に対応して、大学3回生から就活を始めるので、

大学生活の4年間でまともに勉学に打ち込める時間は、その半分ほどになってしまいます

 

それでも学費は4年分払うのです。

これはおかしい。何のために大学に行くのか。

何のために大学を増やしたのか。

まったくもって、本末転倒です。

 

多くの奨学金を活用する学生にとって、

構造的に、最高学府で受けられるべき教育が施されなかったのです。

高額な奨学金を払っても、かつての「大卒」が得られたような就職は存在しなかった。

 

そのツケを若者に払えというのは酷な話です。

 

いま、日本学生支援機構の毎年の回収金(奨学金の返済額)は、およそ5~6000億円ですから、

毎年5000億円分、若者の需要が借金返済に消えているのです。

これでは文化もイノベーションも起こらないでしょう。


私は、こうした誤った社会構造を放置したことを、政府として、国民に謝罪するべきだと考えます。

そして、国民が不当に払い過ぎた「過払い教育費」を返還するべきだと考えます。
 

 

具体的には、現在貸し出し中の奨学金の総額が9兆円です。

よって、予算9兆円で、奨学金徳政令が実施できます。 


さらに8兆円あれば、
旧日本育英会が日本学生支援機構に改組した2004年以降の奨学金(過払い教育費、5千万×16年分)を返金できます。


04年は『2000年大学入学組』で、ストレート入学だと今年で39歳になる世代ですので、若い世代にお金が行き渡ります。

 

そのお金が消費や投資に回れば、文化も日本経済も復活するでしょう。

 

「過払い教育費をお返しする」という趣旨を徹底して、さらに10年ほど広げても良いでしょう。

なお、財源については国債を想定しています。

国債の「60年償還ルール」を廃止することで対応可能です。

 

もちろん、「奨学金を借りなかった学生」にも多くの事情が存在すると思います。

無理をして親が払った学生もいれば、奨学金を借りるよりはと、すぐに働きに出た若者も多いはずです。

 

中卒・高卒で社会に出た方には、

社会人教育の無償クーポンを用意するか、社会を支えて頂いたことへの感謝を込めて「お見舞い金」を出すか、あるいは大胆な税控除を行うなどして、徹底して不公平感を減らしていければと考えています。


奨学金無償化も、奨学金徳政令も、奨学金の返還も、
「教育費は国が負担して然るべきもの」との国民的な合意を得ることからしか始まりません。

 

その合意形成に向けて、努力していきたいと思います。

 

 


※※※
党大会では、代表より「家計・教育・科学の3つのKへの投資を強く主張していく」とのメッセージが打ち出されました。

私も引き続き、
博士号取得者を無条件に受け売れる研究施設の新設
●「(奨学金などの)過払い教育費」の国民への返金

を訴えて参ります。