Q 労働規制によって、優れた経営者にスポットライトが当たるとはどういう意味でしょうか?

消費者基本法の話に引きつければ、「ちゃんとやっていた企業にとっては問題ない」ということでしょうか?

 

A まず、一般論として、

たとえば店番をアルバイト一人に押し付けることで価格破壊を実現した結果、

巨額の利益を上げるような企業が退場すれば、その分、社員を大切にしている企業が伸びていく可能性は高いですよね。

 

それから、これは労働者基本法の先にある話ですが、企業に労務監査を義務付けるべきだと考えているんですよ。

公認会計士の仕事をひとつ増やせばいいと思うんです。あるいは社労士でもいいし、弁護士でもいいかもしれない。

 

大企業の労務監査は、実はそれだけで比較的容易に実現が可能だと思います。

監査が通らなければ、大企業は基本的に存続できないわけですから。

 

Q 興味深いお話ですね。

そもそも労働者基本法は、どのような内容になる予定なのでしょうか?

 

A いま現在も猛勉強しながらアイデアを練り続けている段階ですが、

まずは現在、ほとんど機能していない労働監督署をもっと機敏に動かせるような仕組みを作りたいと考えています。

 

現在の労働基準法は「民法(の特別法)」なので、労働監督署は、どうしても「民事裁判」を薦めてしまいがちなんですよ。

それはおかしいよね、と。

 

いま現在の労働監督署にも司法警察権はありますが、どうにも腰が重い。

もちろん、どんどん立件しろとか、そういうお話ではなくて、

そう、たとえば食中毒が出たら飲食店には保健所が査察に入って、しばらく営業停止ですよね。

 

業務停止とまではいかなくても、残業代の未払いやパワハラなどがあまりに酷い企業には、もっと行政がスピーディに警告を入れる。

それだけで、労働者の負担も違うし、結果としてサービス残業も減らしていく方向になる。

 

すると、サービス残業がなくなった分、人を雇わなくてはいけなくなる。

そうなれば、全国的に人手不足がおこる。

そこまでいけば、ありとあらゆる業種の給料が上がっていくのではないかと考えています。

これは机上の空論ではないはずです。

 

Q なるほど。聞けば聞くほど、欠点らしい欠点が見つかりませんね。

ただ、労働の規制強化は時代に逆行している、という批判などは出てくると予想されますが、いかがでしょう?

 

A そもそもこの20年、派遣解禁から始まって、労働の規制を緩和し続けてきて、国が良くなったのかどうか、甚だ疑問です。

まだ労働時間が1.3倍にあった結果、給料も国富も1.3倍になったというのなら分かります。

単に、格差が開いただけ、そして格差が開いたせいで総需要不足を生んだ・・・

 

一部の大金持ちだけが得している結果になっているではないですか。

私は、理由は分からないけれど、同じ日本国民、同胞同士の格差が異常に開くという状況は、生理的に受け入れられないんです。

 

あるいは、グローバリズムに対抗できるのは、国家だけだ、ということなのかもしれません。

 

Q なるほど。よく分かります。他に経済界からの反発は予想されていますか?

 

A 実は、あまり心配していません。

なぜなら、先ほども申し上げましたように、労務状況が優れた企業ならば、むしろそれは積極的に公開したい情報なはずだからです。

反発があるとすれば、いわゆるブラック企業だけ。

 

あえて付け加えるなら、現状で既に労働分配率が限界に近いくらい高い零細企業くらいだと思います。

零細企業の問題は、ちょっと今回の問題とは別だと考えていますので・・・

 

あと、ちょっと話は変わりますが、私はテレビ業界にいたので、

いわゆる「やりがい搾取」なども多く目撃してきました。

 

その問題に関しては、自分の中でも答えが出ていないところではあります。

下積み制度のようなものは、成功の可能性があるのであれば、それは認められるべきだと思いますし。

 

ただ、立場の弱いフリーのクリエーターなどを安い報酬で使うのは、よくないと思います。

とはいえ、こうした特殊な仕事については、国がどうこう言うべきものではないところもありまして、私としては労働者基本法を作ることで、世論によって彼らの生活を良いものにしていければ、と考えています。


そういえば、スティグリッツ教授が安倍総理と会ったときに、「消費税増税先送り」と共に「日本の労働組合は弱すぎる。もっと公的に支援するべきだ」と提言したらしいですね。これには驚きました。

 

Q 労働者基本法制定後には、日本はどのような国に変わっていくと予想されますか?

 

まずは、景気が良くなってほしいですね。

国民が政府・国会に望むものは一番に景気回復でしょうし、国民ひとりひとりの幸福の追求も、国の景気・経済状況に少なからず左右されてしまいますから。

 

そうそう、いま野球のナイター中継ってやらなくなっちゃいましたけど、あれも野球人気の陰りというよりも、仕事が忙しすぎてナイター中継の時間に帰れなくなっちゃったんじゃないかなって。

あと、家族そろって食卓を囲める家庭が増えたらいいなって。

私がよく例えに出すのは「サザエさん」なんですが、波平さんやマスオさんが酒飲んでから帰っても子供たちが起きてるじゃないですか。

あの頃の日本をこそ取り戻したいな、と強く思います。

 

それに、アフター5があった方が、男女交際も盛んになりますよね。

若者にお金の余裕と、それに時間(余暇)が与えられれば、国がわざわざ婚活イベントなんてやらなくて済むのではないかとも思うんですよ。

 

そのあたりの話は、私が、もうひとつの基本政策2として挙げている「奨学金モラトリアム法案」とも繋がってくる話なのですが。

景気回復のためには、子供が増えた方がいいんですよ。そのためには、若者に多くお金が回るようにしないと。

 

今のうちに手を打たないと、結局、年金制度だって破綻してしまいます。

最後になりますが、「バイトリーダー」って言葉が死語になればいいですね(笑)

 

Q なるほど。いろいろとヴィジョンをお聞かせいただいてきたわけですが、

普通、労働問題というと左派の政策という印象ですが、杉村さんのお話を聞いていると、あまり左派といった印象は受けません。

このあたりの理由など、分析してお聞かせいただけないでしょうか。

 

私の世代ですと、いわゆる左翼運動の歴史などは、ほとんど知らない人が多いと思うんですよ。正直、私もそのあたりの歴史には不案内です。

ソ連の崩壊が高校生の頃でした。

社会党も、社民党に変わってからの方が馴染み深いです。

 

それから、先ほど、自分のことを「もともとは経営者寄り」の人間だと申し上げましたけれど、その自分から見ても、いまの日本の労働環境はひどすぎる、ということなのだと思います。

 

それに、いまや池上彰さんのような人までが、マルクスについての本を書いたりする時代なわけですから。

何をおいても、この問題を解決しなくては。それが、政治家としては若い世代に属する人間の務めなのではないかと考えています。

 

Q なるほど。非常に明快ですね。

最後に、杉村さんの国家観・政治的スタンスについて、教えてもらえますか?

 

そうですね。基本的に国民の幸せに国家が奉仕するべきであって、その逆ではない、と考えています。

 

ただ、国民を幸せにするには、やはり国家による適切な介入が必要であると考えてもいます。

その意味で、中福祉・中負担の国家が日本には合っているのかなと考えます。

かつては、日本の福祉のかなり大きな部分を企業が担っていましたよね。

 

私はいつも思い出すんです。

1974年、当時の三木総理が「米国に比べて、日本の失業率はきわめて低い」と誇らしげに語ったそうです。

それに対して、松下幸之助さんがこう言ったんですね。
「日本の会社は、みんな失業者をかかえとるのや。ほんとう言うたら日本でも(失業者が)300万人ぐらい、すぐ出ますえ。出してもよろしいか」って。

 

この頃は冷戦の時代だから、いまとは状況が違います。企業に対して過剰に社会貢献を求めることも、それはそれでおかしいとも思います。

ただひとつ言いたいのは、同じ日本人、同胞じゃないか、ってことなんですよ。

私自身、就職に成功したのも、結局のところラッキーですし、こうしてようやく支部長に就任できたのも運ですよね。

 

自然にノブレス・オブリージュを持った人間が多く育つ、そんな日本にしたいとは常々、考えています。

 

私の国家観は、客観的に見れば、右派に近いのかもしれません。

というのも、グローバリズムに対して、国が適切な規制を施していくというのは、ナショナリズムでもってグローバリズムに対抗することだからです。


ただし、個人的には皇室ファンだったりもするのですが、いわゆる右翼的な国家観を持っているわけではないんですよ。

その意味で、私は平均的な「保守層」なのかな、と思います。

 

自衛隊は日本にとって大切な存在だと思っていますし、それに合憲だと考えています。だから、9条を変更する必要もない。

とはいえ、国民を守るためには、軍事予算や国防体制について大いに議論することも厭わない、という立場ですね。

 

Q 本日は、ありがとうございました。

A こちらこそ、ありがとうございました。とてもうまく私の考えを引き出していただいて、勉強になりました。

 

 

杉村プロフィール

すぎむら慎治

 

★町工場を経営する職人の父の背中を見て育つ
★明治大学 政治経済学部 政治学科 卒業

★日本テレビの情報バラエティを制作
「国民クイズ 常識の時間」(司会:古舘伊知郎・爆笑問題)等を担当
★日本初のネットTV局「USEN-GyaO」の企画立案と番組制作をプロデュース
★政治の道を志し、石井議員の事務所を叩く
クツ磨きとカバン持ちの書生生活を経て、私設秘書として仕える

★私設秘書、公設第二秘書、公設第秘書として、多方面にわたり政治の事務方を担当する