以前、あるメディアの取材を受けたのですが、諸般の事情から掲載されなかったインタビューがあります。

そのときの私の発言要旨を以下に掲載いたしますので、是非ご笑覧ください。

インタビューは2016年の春頃に行われたものです。

 

※※※

Q まずは、杉村さんが政治家を目指すようになった、きっかけから教えていただけますか?

 

A 子供の頃から、なぜかずっと政治家という仕事に憧れがあったんです。

私が脱サラしたのは32歳の頃のことなのですが、もともとはテレビ業界で仕事をしておりまして、ADからスタートして、順調にプロデューサーまで引き立ててもらったこともあり、GYAOの立ち上げが終わってから、会社員としては「やりきった感」があったんです。

 

それで、政治家として功成り名遂げるには、やはり30代のうちに国会議員になりたいなと思って脱サラして、ツテをたどって、政治家の秘書として仕事を始めた、という次第です。

だから、お恥ずかしい話ですが、もともと「この政策がやりたい!」と思って政治家を目指したわけではないんです。

 

ただ、もちろん、政治家として立つ以上は、国家国民の役に立ちたいし、国民の側に立っていたい。

それでコツコツと勉強を始めた、という感じでしょうか。

 

Q なるほど。特に政治的なイデオロギーがあったわけではない、というのは現代的かもしれません。

そこで「特にイデオロギーはなかった」と仰った杉村さんが、現在の公約として真っ先に掲げていらっしゃる「労働者基本法」の話に入らせていただきますが、

まず、なぜこの法律を作るべきだとお考えになったのか、そのきっかけについて教えてください。

 

A 日本は豊かな国で、世界第三位のGDPを誇る国ですよね。それに、大規模な金融緩和をして以降は、名目上の株価もどんどん上がった。

過去最大の利益を計上する大企業も少なくない。企業の内部留保は300兆円を超えるとも言われています。

 

それなのに、なぜ、こんなに国全体が疲弊してしまっているのだろう、と考えたのです。

それはおそらく、単純に「お金が国民にまわっていない」からだろうと。

国全体の利益、GDPが高いのに景気が悪いのは、お金の循環が悪い以外の理由が考えられないだろうと。

 

それで、どうすれば、労働分配率を上げることができるのか、と考えていった結果、それはやはりある程度は行政が介入しなければ不可能だろうと思い至りました。

 

ただし、現政権のように、直接、企業に対して「給料を増やせ」というのは、乱暴すぎます。一見、労働者側に立っているように見えるし、それで恩恵のあった方々も少なくないのでしょうけど、いくらなんでも禁じ手だし、国家主義に過ぎる。

 

さらに問題なのは、いまや国民の3人に1人を占めるようになってしまった、非正規社員の給料こそ上げなくてはならないのに、正社員の給料ばかりがあがってしまい、ますます格差が広がってしまう。

もちろん格差はあっていいのですが、これ以上の格差が広がると、国家も国民も不幸になっていってしまうだけだと思います。

 

我々は、同じ同胞なのですから。

 

さらにより本質的な問題は、時給800円の仕事と、たとえば年収600万円くらいの仕事を比べるとしますよね。

実は、そのキツさはほとんど同じだったりする。これはやはり不公平感がある。

 

なにより、多くの社会的インフラ、たとえば保育士や介護の仕事、あるいは事実上のインフラであるコンビニや格安の居酒屋チェーンなど、社会を維持するのに絶対必要な仕事ほど、賃金が低いということです。

 

もちろん、コンビニにしろ居酒屋にしろ、幹部の方々の並々ならぬ努力によって全国展開をしているのは、たしかでしょう。

しかし、かつての日本は社長と新入社員の給料差が、世界一少ない国だった。

それはこの国の誇りだったと思うし、そういう社会の方が国民は幸せだったのではないか、と考えています。

 

現にいま、日本よりも早く新自由主義を導入し、格差拡大が日本よりもずっと早かったアメリカでおきているトランプ旋風とサンダース旋風を見ていても、そうした思いを強くします。

 

Q なるほど。そのような「左派的」なご意見が、華やかなテレビ業界の、

しかもエンタメ部門の出身であられる杉村先生から出てくる、というのが非常に興味深いですね。

 

A 正直言って、左派と言われてもピンとこないんですよ。

不景気の理由がここまではっきり見えてるんだから、政治家はちゃんとその問題に対処しないと、と考えているだけなんです。

 

おそらく、自分のもともとの考え方や発想は、経営者寄りだと思うんです。

こんなことを話すと怒られるかもしれませんが、

自分の好きな仕事に就いていながら、給料の文句を言って働く人間に対しては、正直イライラしたりもする方なんですよ(笑)

 

でもですね、だからこそ、ただのアルバイト、あるいは生活の糧として仕事を捉えている人に対して、過剰な労働、過剰なサービスを強いたりする風潮はおかしいと思います。

 

これは考え方次第だとも思いますが、いま居酒屋のチェーン店とかに行くと、一流のホテルマンのような言葉遣いをして、かしづいて給仕してくれるウェイトレスさんとか、普通にいますよね。

 

つい考えちゃうんですよ、せいぜいワンコインそこそこの食事をしているだけで、時給1000円にも満たない人に、こんなサービスを受けてしまっていいんだろうかと。

 

 

Q 非常に興味深いお話です。では、なぜ、現状、そのような社会構造になっているとお考えですか?

 

A ひとつの大きな理由として、単純に雇用がない、ということが挙げられると思います。

つまりそれは、「時給800円そこそこで働かざるをえない優秀な人が日本中に存在している」ということです。

 

私は明治大学の出身なんですが、私の頃は就職氷河期で、MARCHレベルでも、就職にあぶれた同級生がたくさんいました。

それに、企業の方も競争が過酷ですから、バイトだからといって、おざなりの接客をさせてはいられない、ということなのでしょう。

 

それ自体は良いことだと思うのですが、しかし、そのアルバイトが学生ならまだしも、20代、30代、さらには40代となってくると、これはちょっと社会問題であると考えます。

なぜなら、そんな給料では家族を養えないし、子供も育てられないからです。

これは、少子化現象の大きな理由のひとつでしょう。

 

もうひとつ理由を挙げると、そんな給料では、貯金ができない。

つまり、必然的に将来、国の福祉を受けることになる、ということです。

 

もちろん、福祉政策自体は可能な限り手厚くあるべきだと私は考えていますが、これは見方を変えれば、企業が労働者を使い捨てた分のツケを税金から支出する、ということになりかねません。

と、考えていくと、やはり労働分配率については、ある程度、国が後押しして労働者の側に立たなくてはならないのではないか、と考える次第であります。

 

Q 非常にロジカルなご意見だと思います。つまり、労働者の給料を上げるということは「基本的な経済政策である」ということですね。

 

A 仰るとおりです。専門的な言い方をすると、日本の不況の原因は「総需要不足」が原因、つまりモノを買う絶対量が不足しているんです。

お金持ちの消費だけでは限界がありますから。

 

中間層を増やして、「ある程度の贅沢ができる」層を増やさないと、国全体にとって損なんですよ。

さらに少子化も加速するから、人口が減っていって、また需要が減ってしまうという悪循環です。

この流れを止めなければなりません。

 

そのためには、政府支出しかないと考えています。

直接給付か、あるいは公共事業か。

公共事業というと拒否反応を示す方も多いですが、特定の業界にお金を出すようなものではなくて、広く、国民全体に「ばらまけば」いいんです。

 

Q 杉村さんのキャッチフレーズである「飯の種をばらまく!!」ですね。

ここで、このフレーズに込めた意味について、お聞かせいただけますか。

 

A よくぞ聞いていただきました(笑)

(以下、インタビュー(2に続く))

 

 

杉村プロフィール

すぎむら慎治

 

★町工場を経営する職人の父の背中を見て育つ
★明治大学 政治経済学部 政治学科 卒業

★日本テレビの情報バラエティを制作
「国民クイズ 常識の時間」(司会:古舘伊知郎・爆笑問題)等を担当
★日本初のネットTV局「USEN-GyaO」の企画立案と番組制作をプロデュース
★政治の道を志し、石井議員の事務所を叩く
クツ磨きとカバン持ちの書生生活を経て、私設秘書として仕える

★私設秘書、公設第二秘書、公設第秘書として、多方面にわたり政治の事務方を担当する