マンガに出てくる鍼灸描写を紹介していくシリーズ。1つ目は何がエエかなーと考えまして、やっぱ有名な作品がいいかなと思いまして、初回は手塚治虫の「ブラックジャック」にします。
言わずと知れた有名作品。何度もアニメ化や実写化された作品。最近ではスピンオフ作品なんかがアニメ化されたりと、いまだに根強い人気のあるブラックジャックですが、この作品にも鍼が出てきます。
登場するのは単行本11巻「座頭医師」、12巻「湯治場の二人」というお話。
で、どんな感じの描写かというと、まず「座頭医師」。
盲目で無免許のはり師である琵琶丸というキャラが、無料で鍼治療をして治してまわっているのが世間で話題となる。
ブラックジャック 11巻 P.30
琵琶丸はすぐに手術や薬で患者を治したがる医師に対して批判的であり
ブラックジャック 11巻 P.33
「人間のからだなんてものはもともと切ったりすてたりできるしろものじゃねぇ」
「けものや鳥をみな 病気になったって手術なんかしねえよ みんな自分の力でなおすんだ そういうもんさ」
とブラックジャックに語ります。
しかしその後、ブラックジャックの患者の女の子に対し、鍼治療を行うと、ショック症状を起こさせてしまう。
ブラックジャック 11巻 P.43
その患者は、かつて医師に注射を打たれた痛みにより不安神経症となり、身体に針を刺されることを過剰に怖がるようになっていた。そこに琵琶丸が鍼をしたことでショック症状を誘発してしまった。
ブラックジャック 11巻 P.44
幸いブラックジャックが急いで駆け付け、鎮静剤を経口で飲ませ事なきを得る。
その日の夜、琵琶丸がブラックジャックの家を訪れ、カリを返すということでブラックジャックに鍼治療を行う。左の太衝あたりに鍼を打ち、
ブラックジャック 11巻 P.47
「・・・ウム・・・・・・手ごたえあり」
「これでもう一生腸は大丈夫だよ」
「あばよ・・・またいつか会いやしょう」
と言って琵琶丸は去っていく。琵琶丸すげー(笑)
ここでありがたいのは、鍼を打ったから悪くなったワケではないことをちゃんと描いてくれていること。
どーしても鍼てのは痛そうとかコワイとかネガティブなイメージを持った人が多いのでね。ちゃんと問診をしなかった琵琶丸のミスではあるんですが、全体としては鍼は効果があるものとして描いてくれているお話でした。
そしてもう一つの「湯治場の二人」
山奥に住む刀鍛冶の馮二斉(ひょうじさい)に手術で使うメスのメンテナンスをしてもらいに向かうブラックジャック。途中の温泉地で琵琶丸に遭遇する。琵琶丸も自らの使う鍼のメンテナンスを馮二斉にしてもらいに行く途中だった。
馮二斉が鍛えなおしたメスで庭に生えたひょうたんを切ると真っ二つになり、それを合わせると元通りくっついてしまう。るろ剣でもあったねこの描写。
そして琵琶丸の鍼を鍛え終わると馮二斉は倒れてしまう。
琵琶丸とブラックジャックがそれぞれ救命処置を行うが、結局亡くなってしまう。
ブラックジャック 12巻 P.108
その後馮二斉が残した遺書が見つかり、そこには
「天地神明にさからうことなかれ おごるべからず 生き死にはものの常也 医ノ道はよそにありと知るべし」
と書かれていた。
それぞれ違うスタンスで人を治療する琵琶丸とブラックジャックは、馮二斉の最後の言葉に考えさせられる。
この話は鍼がどうのというよりは人間の命に対する考え方がテーマの話でした。ブラックジャックはこーいう話が多いですよね。
どちらも琵琶丸による鍼。鍼は鍼柄もなく、刺し方は押手もなしでプスっと刺す撚鍼とも言えない刺し方。これだけ見るとちとコワい。
しかし治療としては、琵琶丸がひとつやらかしてはいるものの効果があるものとして描かれていますね。
ぜひとも興味のある方は本を手に入れて見てもらいたいですが、いかんせんブラックジャックは古い作品なので画像の単行本版はなかなか入手は難しいかと思います。
しかしブラックジャックはいろんな形で再発売されてて、特に文庫版でかなりの数が出回ってるのでそちらであれば案外と手に入ると思います。ウィキペディアによりますと「座頭医師」は文庫版2巻、「湯治場の二人」は5巻に掲載されてるそうです。
ブラックジャックは集めるのにかなり苦労したのでとても思い入れのある作品ですね。その辺の話も別でしたいです。
てなわけで、こんな感じでこれから鍼灸が出てくるマンガをボチボチ紹介していきたいと思います。