友人で歌手の神野美伽さんと、
先日、この盲導犬への傷害事件についてお話しました。
私たちの共通の意見と疑問は
日本の社会は、盲導犬を理解し、
それを守り、受け入れる体制の整備されていないまだまだ未熟な社会である、
ということでした。
そんな社会で盲導犬が生きることは、
大変な側面があると感じます。
そして、このような恐ろしい犯罪行為を平気でやる
心ない愚かな人間がいることに
言葉で表現してはいけないほどの怒りも感じます。
美伽さんは、
動物愛護以前の問題で、
「何と言う世の中なのか！嘆かわしい」
と言われていました。
本当にそう思います。
被害にあわれた視覚障がい者であるユーザーの方の
大切なパートナーであり、
また体の一部のような存在ですから、
どれほど悔しくて悲しかったことでしょう。
心は深く傷つけられ、
同時に恐怖を感じられたことと思います。
しかし、私と美伽さんには一つの疑問が…
そんな痛い目にあった盲導犬が、
何も反応せずひたすら耐えるなんてことがあるんだろうか
ということでした。
もちろん個体差はあるものの
私たちは、
犬がちょっとでも痛みを感じたときに
どういう反応をするか知っていますし
いくら訓練された盲導犬とはいえ、
ちょっとどころの痛みではないはずです。
また、私はいくつかの盲導犬協会を訪ねたことがあり
美伽さんも盲導犬と協会の方と
一緒にお会いする機会が仕事上幾度もあり、
いろいろとお話を伺っていらっしゃいます。
そこで私もいろいろ教えていただきましたが
本能を抑制して訓練することはなく、
本来、犬が持っている本能を生かしながら訓練するのだと聞いています。
盲導犬になれる犬は、
盲導犬候補として繁殖された犬の中の
ごく僅かな数です。
性格に向き不向きがあるとのこと。
おとなしい、のんびりした性格の犬のほうが向いているらしく
そういう意味では、
被害にあったときの反応が多少薄かったことも想像されますが
だからといって、
やはり無反応で耐えたとは、到底思えないのでした。
このように、
盲導犬のそればかりを報道でクローズアップすると、
何があっても反応するな！
と、トレーニングされているかのように誤解しかねません。
このことについて、
私はいろんな視点から検証したく
他の方にも話をお聞きしました。
京都府視覚障害者協会の副会長さんを存じ上げていますので
今回の事件について、感じられたことをお聞きしました。
今回刺された犬が、
痛みを我慢して吠えなかったという報道に違和感を感じられたそうです。
軽くしっぽを踏んだくらいならわかりますが、
出血するほど、しかも数ヶ所刺されて反応しないとすれば、
何か他に問題があるんじゃないかと思うくらいです、と…。
私もその話をお聞きして、
抱いていた疑問の答えが少しずつ見えてきました。
痛みをこらえる犬を美化するような報道に共感できない、
とも言われています。
私も同感です！
そこばかりを取り上げて、
盲導犬の実像が違う形で報道されているのではないか…
という危険を感じます。
複雑な思いで
報道の内容に不自然さを感じられたようですが、
しかし、真実がどこにあるのかはわかりません。
今もいくつもの疑問が沸いてきます。
今回、副会長さんのところにも、
たくさんの市民からのメッセージが届いたそうです。
「犯人を許さない！」とか、
「痛みをこらえて仕事をした盲導犬が素晴らしい！」
とか、
テレビの報道のコピーのようなものが多かったとか。
メディアは時に、かなり強引なやり方で、
時には不確かな情報で、
人々の注目を集めるためヒーローを作り出し、
真実から反れた形で
発信することがあります。
私たちは、そんなメディアに振り回されず、
冷静な視点で物事を見つめ、
判断していかなければならないと思うのです。
今回、このようなメディアの報道で一番心配されるのは
模倣犯の出現です。
「これが、次の盲導犬へ、
あるいは、見えないという僕達に向かってくるのが怖い」
という視覚障がい者もおられます。
「本当に盲導犬は痛みに反応しないのか」
など、興味本位で傷つけようとする
おかしな人間が現れないことを
心から祈りたいと思います。
そして、盲導犬の実像が、
違う次元で語られることを願っています。
ブログ読者の方が教えてくださった
「全日本盲導犬使用者の会」の緊急声明にも、
ぜひ耳を傾けてみてください！
http://guidedog-jp.net
一般財団法人 動物環境・福祉協会 Eva
