「フェルメールとオランダ黄金時代」(中野京子)を読んでいて思わず膝を打った。オランダは何回か行って、人間が作った大地の国という認識はあり、その風土と歴史がオランダの美術と深く関わっていたことまでは理解していたが、その低い大地の上に広がる「大きな空」を見落としていた!


風景画というと19世紀イギリスの画家ウィリアム·ターナーを思い出すが、それより早くオランダの17世紀の画家達は「大きな空」を描いていた。人が造った低地の国土のため、空と対峙し続けてきたのだろう… ヤコブ·ファン·ライスダールの絵画では画面の2/3を空が占めているものもある…


フェルメール「デルフトの眺望」は、マルセル·プルーストに世界で一番美しい絵と絶賛されている。静謐な美しい絵だが、そこに描かれている大きな空に浮かぶ灰色の雲は不安を掻き立てる。


初めてオランダの北海の海岸に立った時の海と夕暮れの残照は、夫の里の米子から夜行列車に乗り込んで目にした日本海の光を思い起こさせた。灰色の雲と光は、想像してた暗さではなく、救いのある明るさ、希望が持てる暖かい光を感じたが、オランダ出身のゴッホは明るい光を求めて南仏に向かった… 


風車と🌷 街角にカリオンが響くオランダ✨

「ヨーロッパの十字路」と呼ばれるアルザスの州都ストラスブール近郊に暮らしていた頃、フランス、ドイツ、スイス、イタリア、そしてオランダへと旅をした。現地に行って一番カルチャーショックを感じたのはオランダだった。それは…
①人 : 大きい人が多く雑踏に紛れると見失う。昔のオランダ人はそれ程大きくなかったが、酪農が発達し、飼料にホルモン剤を入れたため?とか…
②交通 : 国土が平で自転車が多い。運河が張り巡らされ気付けば頭上に海⛵ なぜか路側帯のラインを跨いで車が走り回る。
③言語 : オランダ語は英語とドイツ語を混ぜ合わせた感じだが、皆英語を話せる。(距離的に近いイギリスの放送が流れるので耳で覚えたかと思いきや公文のようなドリルで勉強するらしい)
④食物 : 海産物が豊富でかつてアジアに植民地を持っていたせいか、中華料理もあり。驚いたのはコロッケの食べ方で、パンに乗せて崩して中身を塗りつけて食べる。
⑤観光 : マドローダム!土地のミニチュア模型なんてと思ったのだが、コインを入れると精工な模型が本物のように動き出すのが面白い。その後あちこちで同じ様な所に行った。スイス·ミニアチュールとかミニタリアとかワールドスクエアとか… ついでに老後の楽しみにとあちこちで紙の建物組立模型も買い集めてしまった…

色々思い出してみて、文化的背景が気になり、「ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀」(樺山紘一)
「オランダ人のシンプルですごい子育て」(日経ビジネス人文庫)
とりあえずこの2冊を読んでみよう。面白い発見があるかも知れない…✨

そして再び「大きな空」に戻るが…
高層ビルが立ち並ぶ都会では、空が狭くなった。子供達が帰省するとつくばの空は広いと言う。人々は絶景を求めて海や山に出かけるが、ひょっとして広い空間として空を求めているのではないか?広大な宇宙や雄大な自然の広がる空間を感じるために… 

週1回位の頻度で宝篋山に上る。461mの低山だが17000平方キロメートルの広大な関東平野が見渡せる。雲に包まれると、筑波山の大越邸、つくば駅近くの自宅も見えない日もあるが、晴れれば弧を描く地平線の上に、涸沼、霞ヶ浦、鹿島工業地帯、成田空港、牛久大仏、横浜、幕張、葛西の観覧車、スカイツリー、東京タワー、都心のビル、富士山、浅間山、日光男体山… と見渡せる。頂上の宝篋印塔で祈り、見上げれば大空が広がる。この感覚は、例えば極点に立った時に宇宙と対峙するカンジ?と想像する。
目は恣意的なもので、見たい物しか見えたと認識しない。バランス良く見えるように時々リセットするために空との境界、地平線を見つめる。杉本博司の「海景」シリーズや横山大観の「海潮四題·冬」の水平線を思い出す。芸術家の目が切り取った風景だが、あのバランス感覚こそが「ゼロ·ポイント·フィールド」(田坂広志)なのかも知れない✨

空を見に行こう✨