「このモデルさんの心を描きました。」

そう、答える、中年のおばさんは、繁々と壁に掛かる絵を覗き込む僕に答えた。

僕は、最初戸惑った。

辿々しいけど、それはまぎれも無く、

僕が12年も前に美術予備校で描いた、まぎれも無く僕の絵だったからだ。



僕は実家に帰る時は、必ず、お世話になった、恩師に顔を見せに行くのだけれど、

その恩師は、80になろうとしているのにまだ現役で、絵画教室をやっている。

きっと、ここに、そのままおきっぱなしになっている、僕の絵を、生徒さんに手本として模写させていたんだろうということは、

一瞬で解った。

そして、あまりにも、誇らしげに、語るそのおばさんの素敵な笑顔をみれたのと、

恩師の僕を、誇りに思ってくれている気持ちが、

もうそれはまぎれも無く「彼女の作品」になったんだ、って事を僕に信じさせた。

表面なんて、内面を語る、1パーセントにも満たないんだ。


なんて、くるくる回る洗濯機をみてたら思いました。