たった七色の絵の具で、関係の総てを描ける表現の事を思い、

気を楽にした事がかつてあった。けれど、今、そのことにあまり意味はないように

感じる。 七色でも、七十色でも、七百でも、関係を描ける正確な、表現は、

一つあるかもしれないし、あるいは、一つもないのかもしれない。

世界中の、顔料や、土や、珊瑚(サンゴ)を練り合わせても、描ききれないのが、

そもそも人と人との関係なのかもしれない。

そんなふうに、予め、諦めた所から扱うことを始める時、絵の具は、飴が溶け出すように、舌に、そして、カンバスに馴染んで語り出す気がするのだ。


祖母に最後に会ったのは、去年の夏だった。

手作りの画集を持った僕を見つけて、彼女は、懐かしそうに微笑んだ。

「陽ちゃんは東京でがんばっとるんやろ」

「ウン、今、人気バンドのラルクアンシエルさんの絵を描いて美術館に飾られてるんや
よ、でも知らんよね、」

「高校の時、初めての、ライブで歌ったのがラルクのmilky wayって曲で、歌詞が途中で飛んじゃって、、笑」

なんて、今なら言って少しは安心させられたかもしれない。

その時の僕は「ウン」と軽く乾いた笑顔で答えたのみだった。

画集の一ページ一ページを指でなぞる指を見て、やっぱり、好きだと、思った。

老眼で、殆ど実は図版が見えていないだろうといことを、どこかで勘づいていたから。



そんな彼女も、もう、顔を上げて、僕を見る事も出来なった事を知らされる。

僕は、受話器をおいて、大きく息を吸った。小雨さえ温かく感じた東京の夜だった。




僕は、歌詞を間違えず心の声で歌ったんだ。

実際には、もう僕がどこにいたって、側にいて聴こえてるかもしれない唄を。





ラルク×杉田陽平1

横須賀美術館で「ラルクアンシエル」結成20周年を記念杉田陽平油彩画一点特別展示、/神奈川