大切なもう一つをなくしたら
『てぶくろの木』
クヌー・ホルスト/作
松村雅子/絵 木村由利子/訳
ブックローン出版
エリーはいつも、手ぶくろをなくしてしまうのです。
ほら、この冬もまた!
せっかくおばあちゃんが赤い手ぶくろを編んでくれたのに。
あなたも覚えがありませんか。
大好きな手ぶくろを片方、なくしてしまった思い出が。
手ぶくろをなくしたほうの手のひらは、手ぶくろをしていなかったときよりも、ずっと冷たい。
エリーだけではありませんでした。お母さんも片方なくして、大あわて。
そんなある夜、月の光の中を、手ぶくろがヒラヒラ飛んでいくではありませんか。
エリーはあわてて追いかけました。
それにしても、どうして手ぶくろが空を飛べるのでしょうか。
あ、鳥です。
てぶくろのなかに、鳥がもぐりこんで、たくさんたくさん、空を飛んでいたのでした。
そして、モミの木に降り立ちました。
そのモミの美しかったこと!
片方だけの手ぶくろが、赤や黄色や青や緑色や、5本指のや、ミトンのや。
クリスマス・ツリーの飾りのように光っていたのです。
鳥たちがエリーに言ったこととは?
エリーは「手ぶくろを返して」と言えたのかな。
ふかふかの毛糸であたたまると、鳥たちは元気になれるのです。
手ぶくろから追い出された鳥はこごえるしかない。
困っている人がいたら、あなたは手ぶくろを片方、差し出すことができますか?