杉原梨江子と一緒に読みましょ 木の絵本と森の童話-ねんにいちどのおきゃくさま




















大好きな人と離れ離れになったあなたに

『ねんにいちどの おきゃくさま』

亀岡亜希子/作

文渓堂




大好きな、大好きな、大好きな人がいるあなたに読んでほしい絵本です。
主人公はオコジョのタッチィ。
友だちは、トムサおじいさんです。
タッチィの毛が真っ白になる頃、トムサおじいさんは町へ出かけて行きました。
クリスマス・イブ、“ねんにいちどのおきゃくさま”を迎える買い物をするために。
あまいお菓子にキラキラ輝くツリ―。タッチィも手伝います。
毎年毎年、トムサおじいさんも、タッチィも、この日を楽しみにしているのです。

ところが、ある秋の日、年をとったトムサおじいさんは町で暮らすために、山を下りてしまいました。
ひとりぼっちになったタッチィ。
ねんにいちどのおきゃくさまのことを「わすれてしまったのかしら、わすれてしまったのかしら」
もうすぐクリスマスがくるというのに、心配でたまりません。
そこで、タッチィは町へおじいさんを探しに行くことにしました。
真っ白い雪のなかを、真っ白なタッツィが、町のあかりをめざして歩き始めます。
モミの木の森から、たったひとりで。
町はにぎやかで、人がいっぱいいました。あちこち探しても、おじいさんは見つかりません。
タッツィは涙をポタポタ落とします。白い毛に、水色の涙がにじみます。
でも、ここでへこたれはしませんでした。
タッツィは、どうしたのかな?



私は、タッツィーのことが愛しくて、愛しくてたまらないのです。

たったひとりで山から下りて、一度も行ったことのない町へ、大切な人を探しに出かけたタッツィー。

雪でおおわれた森から遠い町を見つめるタッツィーの後ろ姿。

トムサおじいさんを見つけられなくて、涙をポロポロ流すタッツィー。

絵本の中に言葉はないけれど、「おじいさん、おじいさん、会いたいよ~、どこにいるの?」って、

心の中で叫んでいるタッツィーの声が聞こえてくるのです。




大好きな友だちと離れ離れになったら、探しに行きたい。
待っていないで、探しに行きたい。
もしも会えなかったら、いちばん楽しい場所を用意して、待っていましょう。
きっと、再び会うことができるはずです。
時間がかかっても、きっと。