木を育てている人に読んでほしい
『木をかこう』
ブルーノ・ムナーリ/作
須賀敦子/訳
風が吹いたら、木はどんな形になる?
風が強かったら? 海辺のように、いつも強い風が吹く場所では?
木が、いつも真っ直ぐに立っていられる場所はこの世にありません。
雪も降らない、暑くもないし、寒くもないところなんて…ないですよね。
まわりにあわせて、いろいろなふうに育ちます。
でも、木はひとつの規則に従って、かたちをつくっていると、ブルーノさんは言います。
「幹だけ長くて、枝が短い木もあります」
「どこもかも、ぐにゃぐにゃの木もありますよね」
「ほそい木もあるし、ふとった木もある」
でも、「よくみると、規則は、やっぱり、規則。」
ブルーノさんが言う、「こんな木、あるよね」の問いかけには、影絵のような黒いシルエットで描かれた木がたくさん!
どれもこれも、見たことある!って、きっとあなたは思うはず。
それくらい、木は身近で、空気のように立っているから。
ただ、あまりに当たり前で気づかないだけ。
ある日、木が伐られるとなると、大事な存在だったんだって、やっと気づく。
絵本をながめながら、思いました。それは、身近なだれかもいっしょです。
遠くに去っていきそうになって、あわてふためく、
わたし。あなたも、かな。
「こんな木のかたち、あるね」と語りかける、それだけの絵本なのに、たくさんのことを考える一冊。
『うさこちゃん』シリーズで有名なブルーノ・ムナーリさんの絵本を、美しい言葉を紡ぐ作家・須賀敦子(すがあつこ)さんが訳しています。