『木のいのち』
立松和平・文
山中桃子・絵
くもん出版
戦争で焼け野原になった土地に、一本の大きなケヤキが立っていました。
空襲の炎の下を逃げまどう人々を見ていた木。
やがて、戦争が終わり、人々が戻ってきました。
戦争の前と変わらずにまっすぐ立っているのを見て、多くの人が勇気づけられました。
その頃に生まれた、千春という女の子を通して、
この一本のケヤキの様子が語られていきます。
千春が小学生になり、中学生になり、二十歳になり、結婚して、子供を生んで…。
その間に、道路を広げる計画のために、ケヤキを切ろうという話が持ち上がり、
ケヤキを守る運動が広がったこと。
大きなビルが次々と立ったこと。
お母さんの頭がおとろえて、施設に入って行ったこと。
そして、千春の子供が成人して、子供を生んで、一緒に暮らし始めたこと。
千春は歳をとり、ケヤキの見える病室を希望して、入院しました。
生きて、この病院から出ることは二度とないと知りながら。
人の一生のなかに、変わることなく立ち続ける大きな木の姿。
同じ命をもった木がそばにいてくれることの心強さを思います。
いのちがそばにあると、わたしのいのちが喜びます。
ふと見上げた、一本の木が、生きる勇気をくれることを知ってください。
★絵本に登場する木
ケヤキ(欅)/ケヤキ科・落葉高木