杉原梨江子と一緒に読みましょ 木の絵本と森の童話-おおきなきがほしい


『おおきな きがほしい』

 さとうさとる・文 

 むらかみつとむ・絵

 偕成社

 

「おおきな おおきな 木が あると いいな。ねえ おかあさん」

少年かおるのこんな言葉で、絵本は始まります。

自分の大きな木を、かおるは空想してみます。

いっしょに想像してみてください。

うんと太くて、一人で手をまわしたくらいでは抱えられない、大きな木。

木にはてっぺんまで、はしごをかけます。

ぐらぐらしないようにしばっておかなくちゃ。

妹のかよちゃんも昇れるように、つりかごのブランコをとりつけましょう。

木の真ん中あたりには小さな小屋をつくります。かおるだけのお城です。

小屋の中には台所があって、かおるはそこでホットケーキを焼くのが楽しみです。

奥にはもう一つ小さな部屋をつくって、そこにはベッドを置きます。

りすの家や小鳥の巣もあって、ひとりぼっちではありません。

そして、木のてっぺんには、見晴らし台。

町を見下ろすと、自動車なんて、かぶとむしみたいに小さいのです。

「わーい、ぼく、とりになったみたいだ」

ページをめくるたびに、かおるが心の中で思う、大きな木に登ったり、料理をつくったり、

いっしょに遊ぶ自分と出会います。



佐藤さとるさんの物語に、村上勉さんの絵の組み合わせ。
コロボックルシリーズは今でも忘れられません。
二人のぴったり合ったお話の世界にどんなに胸ときめかせたでしょう。
繊細で、優しくて、人の生活の中にすーっと入って、
非日常の不思議な話が不思議ではなくなる不思議…。
大きな木の物語に、ふっと心をゆだねて、
あなたの“大きな木”の宇宙へと旅立ってみてはいかがでしょうか。