ノゾエ征爾の新作書下ろしを青年座の金澤菜乃英が演出した舞台『りんごが落ちる』を観ました。現代人の心の痛みや生き辛さをユーモアと愛情たっぷりに描いた作品です。そこには生き辛い現代をどう乗り越えるか?への問と答えがありました。久々の主演舞台の初日に突然セリフを忘れラスト10分間を沈黙劇にしてしまった俳優の話しです。その夜に学生時代の後輩が訪ねて来たり、当芝居の演出家女史が来たり、隣の老婆が来たり、兄を心配する妹からの連絡が入ったり、時空を超えて舞台は展開します。舞台の上には生き辛さを抱える不器用で繊細で身勝手な人々が紡がれます。そしてラストには“落ちたりんご🍎”の意味が明かされ、主人公の俳優が忘れたセリフが息子との大切な会話だった事が明らかになります。落ちたリンゴは始めて気づかれテーブルに戻り終始スポットライトが当てられていました。落ちたリンゴは誰も気づかなければ腐ってダメになる。劇中では冒頭で主人公がスーパーで買ったリンゴ🍎が床に落ちて、最後まで誰も気づきませんでした。そのリンゴは2人暮らしの息子と食べるモノだったのです。せめて目に見えるモノだけでもしっかり観ましょうよ!そして大切な人はいつも側にいるんだから。舞台には姿を見せない10代の息子が大切な存在でした。2026年6月28日、新国立小劇場で公演の2時間5分の考えさせる舞台でした。