今日は濱口竜介監督の最新作で初海外製作の映画『急に具合が悪くなる』を観て来ました。余命宣告のガンを患う哲学者と、臨床現場に詳しい人類学者が交わした20通の書簡集が原作で、濱口監督がそれにインスパイアされて作った映画です。原作を大胆アレンジしパリを舞台に、偶然出会った2人の女性の心の交流を描いています。パリの認知症介護施設の施設長をしているマリーは、認知症患者を人間らしくケアする“ユマニチュード”と言う技術を推進していましたが、周りの不理解や資金不足や人手不足などで悩んでいました。そんな中で、日本人演出家の真理と偶然出会いました。彼女は余命宣告を受けたガン患者ながら、パリで日本人老俳優の1人芝居を上演していました。その舞台に感動し2人は同じ名前もあって急激に親交を深めます。セーヌ川やマリーの介護施設での長~い会話や、マリーの身体を張ったワークショップや、資本主義の限界を論じる知的な真理のセリフなど、濱口らしい演出が続きます。長塚京三演じる劇中劇の1人芝居がいつしか、マリーの介護施設の“ユマニチュード”と融和していく過程は素晴らしかった。最後は真理の故郷を訪れたマリーが、パリの施設で私が介護すると真理を連れ帰り、2人で作り上げた介護システムに微かな希望の光が見えて終りました。真理の病を乗り越えてマリーに協力する姿には、現代人が見失いかけている協調による希望が見えました。本作で学んだ認知症患者のケアの大切な事。➀“見る”...視野の狭い認知症患者には顔の近くで話す。②“触れる”...安心感を与える為に敏感な所に触れる。③“立つ”...人間の自由の基本は立って歩く事。④“話す”...話をする事で弱った患者の機能を改善する。出演はマリーをビルジニー.エフィラ、真理をモデルの岡本多緒、2人はカンヌで主演女優賞を受賞しました。2人の日本語とフランス語で話すセリフは圧巻でした。老俳優を長塚京三、自閉症の少年を黒崎煌代、2人とも素晴らしい存在感でした。2026年製作の3時間16分の長さを感じさせない見応えあるフランス、日本等の合作映画でした。