北海道での鹿との接触事故から早や2カ月経過した。バイクは元の姿を取り戻し、私のケガも治りつつあるが、いくつもの疑問が残っている。私の場合、わからないことや疑問点を放置すると精神衛生上よろしくないので、ここに書いてひとまず落ち着こう。
1.なぜ鹿は道路上に飛び出してきたのか
北海道を走ればわかるが、鹿(エゾシカ)を目撃することは多い。エリアにもよるが、道東や道北では日に何度か目撃することがある。それを「頻繁に」とか「しょっちゅう」と表現してもいいが、それでも精々日に数回程度であり、場合によっては全く目撃しない日もある。走行距離当たりにすれば、100km走って一度目撃するかどうかというレベル。今回私が鹿と接触した道路の交通量はどうか。その道は道北の浜頓別町と豊富町とを結ぶ道道84号で、無人地帯の山中を貫く快走路。この道で私は転倒し、その後再び走り出すまでの30分位の間、この道路を通過した車は2台のダンプカーのみ。そんな交通量がほぼ皆無に近い超閑散路をたまたま走っていた私のバイクと、たまたまそこを通り掛かった鹿が接触するなんて、あまりにも偶然すぎやしないか。
鹿の方から私の方へ意図的に向かってこない限り、そんな少ない確率の偶然が重なるとは思えない。しいて言えば「当たり屋」のようなもので、道路脇に(ガードレールの外付近)その鹿は佇んでいた。バイクが向こうから走ってきた。「やっと来たな。それっ今だ!行ってやれ」とばかりに道路上に飛び出したというわけ。まあ、それは冗談としても、動物が動くものに反応し、反射的に体を動かし、その結果道路に飛び出てきたというのならありそう。山奥をツーリングすれば様々な野生動物に遭遇するが、バイクが近づいて行けば、大概の動物は道路脇で佇んでいる状態から移動する。道路脇の草むらに逃げ込むことが多いが、場合によっては道路脇から路上に出て、バイクの進行方向と同じ向きに走って逃げていくことも珍しくない(鹿に多い)。今回の行動パターンは、バイクの動きに反応し、道路脇から目の前の道路に飛び出してきたということだろうか。鹿の生態を少し調べてみようかな。
2.なぜ接触した鹿は消えたのか
そうして鹿と接触し、私は大転倒。交通量皆無の快走路だったこともあり、かなりのスピード(推定80~90km/h)で走っていたはず(メーターは見ていない)。そんな状態から、突然不意打ちを食らうかのように、フロント部を蹴っ飛ばされるようにして瞬間的に転倒し、私の体は路面に投げ出され強打した。それでもすぐに起き上がることができ、まずは転倒したバイクを引き起こし路肩に寄せようとしたが、左手に全く力が入らない(骨折していた)。困った。
そこに一台のダンプカーが通り掛かった。大きく手を振ってダンプカーに止まってもらい、運転手さんに「鹿と接触して転倒してしまいました」と話し、その運転手さんに転倒したバイクを起こしてもらった。そしてひと段落したその時、辺りを見渡してもそこに鹿の姿は無かった。鹿のケガなんか全く気にならないどころか、あの野郎!いったいどこに失せたのか。当て逃げだ!逃げられたのなら大したケガではないのかもしれないが、こっちは大ケガだ。
事故現場
バイクを起こして頂いた後、そこに鹿の姿は無かった
路上に草が散らばっている付近から森の中へ逃げ込んだか
3.なぜ鹿はニュースにならないのか
北海道では鹿と接触や衝突する交通事故が多発しているという。道庁のHPでも注意喚起されているが、それによると年間5000件以上の交通事故が報告されているという。しかし、少なくても本土(北海道を除く日本)に住む私においては、熊関連のニュース(新聞、テレビ、ネット)はいくらでも入ってくるが、鹿に関わる記事は見たことが無い。これはなぜだろう。以下のことが考えられる。
ホテルで見掛けた掲示
もっと注意喚起をすべきだ
・熊の方がインパクトがある。一見すると優しそうな鹿より、極悪狂暴面の熊の方がビジュアル的にインパクト大。
・熊の方が死亡リスクが高い。鹿は襲ってこないし、交通事故で衝突しても車が大破することはあっても死に至らない(バイクでの事故死はあるそうだが)。事故の多さよりも、死に至るかどうかでメディア的に熊を優先している。
・熊の方が珍しい。出没(目撃)頻度的には、熊と鹿とでは圧倒的に鹿の方が多い。私は過去通算20回北海道ツーリングをし山奥の林道もかなり走っているが、熊を目撃したのは1回だけ。鹿は100回以上ある。ニュースバリューとしては珍しい方が上。ありきたりな鹿はそのバリューが低いということ。
4.なぜ手が動かないのか
事故から約2カ月、骨折をした左手を手術し約1カ月半、リハビリを開始して約1カ月経つ。骨折はほぼ修復され、痛みも無い。しかし、手首や指の動きはまだまだで、本来の半分程度しか機能しない。自転車は乗れるが、左手でクラッチを操作するバイクはまだ無理。趣味のギターなんか、箸にも棒にも引っ掛からない。
現時点、指も手首もこの程度しか曲がらない
骨は繋がったはずなのになぜ動かないのだろう。入浴時クニクニさせるとかなりほぐれるが、翌朝になると元に戻ってしまう。「手術をしたのだから」とか「長い間、ギプスで固定されていたから」と言われるが、なぜそれが要因となるのかよくわからない。かくも人間の構造とは複雑で精緻なものなんだろう。今度通院した時に、先生に聞いてみよう。
人生において初めての事故らしい事故、ケガらしいケガを負い、初めての入院も経験した今回。初めてづくしのことが多く、疑問点も次から次と沸いて来る。この経験を今後の人生に活かしたいが、もう人生はそんな長く残されていないので活かしきれないかな。でも誰かに活かされたら幸いだ。だから、こうしてしつこく書いている。