初秋の東北ツーリング(その5)/酷道、険道、淋道は野生動物が怖い | 直球オヤジの自由奔走生活

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座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

交通量がほとんどゼロに等しく、道も狭く、路面も荒れている酷道、険道、淋道を好んで走っているが、怖いのは交通事故や転倒転落ではない。私が一番恐れているのは野生動物の存在だ。今回もこんなことがあった。

酷道、険道、淋道では他の車と
衝突したり、路面に滑って転倒したり、谷底に転落してしまう可能性は普通の道よりも高いだろう。あんな酷い道なんだから、それは当然だと思われるかもしれない。しかし、50年も走っているが意外にもそういうことは起きない。若い時の通過儀礼として転倒は何度かしたが、それ以外は意外にもない。これらはそれなりの経験があって、慎重に走っていれば、起きそうで起きないものであり、他人が思うほど高いリスクではない。むしろ、交通量はほぼゼロに等しいし、絶対的なスピードは低いから、一般的な道路での事故と比べ大きな事故にならないのではなかろうか。しかし、野生動物はこちらが気をつけていてもお構いなし。自己防衛する手段も限られているし、話せばわかる相手でもないからやっかいだ。

私の長い経験の中で、走行中に遭遇した野生動物を列挙するとこうだ。
熊、鹿、猪、猿、狐、リス、蛇。一番怖いのはだが、実際に遭遇したのは北海道でたった一度だけ。それもかなり離れていたし、道路上に佇んでいた熊はその内ノソリノソリと起き上がって森の中へ退いてしまった。鹿は多い。特に北海道ではダントツ一番の遭遇度だ。襲ってはこないが、突然飛び出してきたり、挙動不審な動きをするので衝突が怖い。私も二度ほど「もうダメだぁ」というレベルの経験がある。北海道のバイク店での話では、鹿と衝突して死亡する事故もあるそうだ。もそこそこ見掛ける。数ヶ月前にも地元の山奥の酷道を走っていたら、数メートル先の目の前を山の方から「ザザザッ」と降りてきて、大きな猪が道路を横切っていった。過去に数回遭遇しているが、いずれも目の前を横切るパターンだった。しかし、もし猪と正面から対峙したら鋭い牙で人間を襲うこともあるそうだから怖い。狭い舗装林道で大きなを轢いてしまったこともある。蛇はちょうど道路を横断中だった。それを避けきれず轢いてしまった。バックミラーを見ると道路上でのた打ち回っていた。もちろん私は轢き逃げをした。



こういう道は安全そうだが、北海道ではこのような広い道に熊が寝そべっていた(八戸川内大規模林道(岩手県))

 

 

近年遭遇頻度が富みに高いのがだ。これが怖い。猿は必ず徒党を組んで行動している。一匹や二、三匹程度ならいいが、十匹、数十匹と群れをなしている。走っている道路の先に猿を発見。すると辺りは猿だらけ。猿はすかさず道路から退散して道を開けるが、道路際で待機しているような感じ。広い道路ならいいが、これが狭い道路の酷道、険道、淋道となると別。去年走った福井県の林道では、私が通り過ぎたあと、バックミラーを見たら一匹の猿が猛然と追いかけてきた。慌ててスピードを上げて振り切ったが、嗚呼恐ろしや。五、六年前に走った奥日光の林道では、長いアプローチを経てようやく林道の入口に着き「さあ、ここからダートだ」と前方を見ると、猿が路上にうじゃうじゃいるではないか。その数、数十匹。まるで猿の楽園状態。果たしてここを突っ切るべきか思案した結果、エンジンを空ぶかししたり、ホーンを鳴らしたりして追い払い、何とか蹴散らしたが、もう気が気でなかった。



ここから林道がスタート。その先は暗い森。路面状況よりも、何が潜んでいるかの方が気になる(赤石川林道(青森))

 

今回も同様だった。白神山地を横断する県道28号線でのこと。コースの中程で猿に出くわした。目を合せないために凝視していないので数はわからないが、少なくても十匹以上はいた。ギアを必要以上に落としてエンジン回転を上げて排気音を高め、更にホーンを鳴らし続けながら通過したが、路肩の草むらや木の上に潜んでいる猿どもが突然飛び掛かってこないかとドキドキだった。それこそ、映画「猿の惑星」を思い出してしまう。例え猿に襲われても、私は全身保護具で防護しているから大けがはしないだろう。その点は熊よりはいいが、それでも転倒は必至。近年、こういう「猿との遭遇」シーンが多く、熊以上に猿が怖くなってきた。



こんな道路の両際に多くの猿がたむろしていたら、どうする?(奥岩泉山形林道(岩手県))

こんなシチュエーションは全く怖くない。真に怖い道ではバイクを止める気になれないので、写真はない(赤石川林道(青森))

 

今回もう一つ怖かったのが蜘蛛だ。新潟県の舗装林道に侵入した。入った瞬間、イヤぁ~な雰囲気が漂っていた。なぜなら道の両端から木々が道路上に覆い被さっているから。よって、昼なお暗く鬱蒼としている。暗いだけなら構わないが、こういう状況で気になるのは、木に張られた蜘蛛の巣の存在。私は蜘蛛が大の苦手。ゴキブリは全然OKだが、蜘蛛はダメ。当然蜘蛛の巣も大嫌い。この道路はそういうものに絡め取られかねない状況の林道だった。そうならないためには、道路の中央を走れば蜘蛛の巣に触れる恐れは低くなる。しかし、絶対に対向車が来ないとは言い切れないから、どうしたって走行ラインは右へ左へと振れざるを得ない。そうなると蜘蛛の巣が待ち構えている。普段なら路面の状況、カーブの曲がり具合、対向車の有無を確認しながら走行ラインを決めるのに、ここに空中の蜘蛛の巣が加わる。それはもう超三次元的判断だ。そんな離れ業がいつまでも続けられる訳がないから、恐る恐る低速で走るしかなかった。

 

 


海岸沿いの明るいダートはほぼ大丈夫(能代市付近(秋田県))

 

こうやって書くと酷道、険道、淋道とはなんと恐ろしい道なんだろうか。それでも走るとは、これはまた酔狂なこと。でも大都会の混合交通の中を走るリスクと同じ、いやそれよりはマシだと思えばいいのである。