ちょっとイイ駅、変わった駅/東京、不要不急の鉄道の旅(その3) | 直球オヤジの自由奔走生活

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座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

大都市近郊の鉄道の旅はローカル線のような風情はないが、それでも時には変わったものが見られる。今回の旅で「おっ!」と感じたいくつかのをご紹介。

 

1.大都市の秘境駅(京王 府中競馬正門前駅)

 秘境駅は僻地だけではない。大都市にもある。通勤電車がバンバン行き交う京王線の東府中駅から、短~い支線が出ている。それが京王競馬場線。その行きつく先は文字通り競馬場で、「府中競馬正門前」駅が終点である。

 

主要駅の一つである東府中駅の片隅から、二両編成の電車に乗ったのは私を含め3人だけ。出発したと思ったら、殆ど加速もせずに乗車時間約2分で到着。その日競馬は開催されておらず、駅は全くの無人状態。その駅のホームの広いこと。さぞや競馬開催日には人が押し寄せるのだろうが、この日は大都市の秘境駅の様相。再びさきほど乗って来た電車に乗り込み東府中駅に戻る。乗客は私一人だった。

 

 

無人の広大なホーム

 

2.下町の頭端駅(東急 蒲田駅)
 東急電鉄というと田園都市線や東横線のイメージが強く、おしゃれでハイソな私鉄というイメージを抱く。でもそんなメジャーな路線だけでなく、下町をのんびり走る地味な路線も多い。そんな東急のいくつかの路線が未乗だったので、始発駅のある蒲田へと向かった。蒲田という街は通り過ぎてしまうことが多く、降りたことがなかったが、やけに中華料理屋が多い町だなぁというのが、京急蒲田駅からJRや東急の駅がある蒲田駅まで歩いた時に抱いた感想だ。

 

そんな蒲田駅に隣接している東急百貨店の下から、東急多摩川線池上線というちょっとマイナーな路線が出ている。この駅がなかなかイイ感じだった。他の路線に繋がっていない終着/始発駅の場合、頭端式ホームで構成された櫛形の駅であることが多いが、この駅もそう。大きな屋根の下に4つの乗り場がある。この手の駅で日本一の駅は阪急電鉄の大阪梅田駅が有名で、思わず「オオオッ!」と声が出てしまうほどの素晴らしい駅だが、さすがにそこまでではない。しかし、東急の蒲田駅も大屋根の下に短い編成の車両が整然と並び、ここから多摩川方面と五反田方面へと二方向へ別れてゆく。蒲田という下町にこんなイイ感じの駅があったなんて、全くノーマークだっただけに、こんな駅を見つけると一層うれしくなってしまうのである。

 

どうってことない風景だが、この櫛形のホームの駅は終着/始発駅ぽさ満開で実にイイ

 

3.木になるリニューアル(東急 旗の台駅)
 東急池上線に乗り、蒲田駅を出て五反田駅方面に向かう途中、「旗の台」駅で東急大井町線と接続する。この旗の台駅がイイ。旗の台の池上線のホームを「木になるリニューアル」と称して、木を多用して改修したそうだ。このデザインが秀逸。木の柔らかさと優しさがにじみ出ている。

 

伸び伸びと上に反り、ぬくもりを感じる木の天井

 

二つ隣の戸越銀座駅も同じように木を用いてリニュアールされ、この駅はグッドデザイン賞(2017年度)や土木学会デザイン賞(2018年度)を受賞している。普段、巨大な駅の再開発プロジェクトばかり注目されるが、こんな小さな駅にも注目して欲しいものだ。

 

4.山梨のマチュピチュ(JR 四方津駅)
 この存在は30年ほど昔から知っていたが、何度か通り過ぎてしまい、降りたことがなかった。山梨県を走るJR中央本線に「四方津(しおつ)」という駅がある。神奈川県との県境の町上野原市にある町で、東京都八王子駅まで30分少々。そこに一大新興住宅地が出来たというニュースを30年近く昔に聞いた。私がこのニュースを今でも覚えているのは、その住宅地と駅との移動手段が印象的だったから。今回、ようやくそこを訪れることができた。

 

その一大住宅地は「コモアしおつ」という。周囲は自然豊かな場所。つまり、かなりの田舎である。JR中央本線に沿って流れる桂川が眼下に流れ、駅の山側は河岸段丘で急斜面になっている。その段丘の上に広大な住宅地が造成された。そんな山上の住宅地と下の四方津駅とが、「コモア・ブリッジ」という長~いガラスのドームで結ばれている。この光景が30年経った今でも忘れられずにいた。そのドームの中に斜行エレベーターとエスカレーターが走っている。四方津駅は昭和の雰囲気が漂う鄙びた小さな駅だった。この昔ながらの駅と、未来的な長大なガラスのドーム状の通路のアンマッチさがいい。

 

周囲の民家の雰囲気と近未来的なドームとのアンマッチが面白い

 

駅舎から歩道橋で甲州街道(国道20号線)を跨ぐと、コモア・ブリッジの乗り場がある。そこからエスカレーターと斜行エレベーターでコモアしおつへ上がるのだが、エスカレーターは日中でも稼働時間帯があり、私が行った時にはあいにく動いていなかった。ならば斜行エレベーターで行こう。斜行エレベーターに乗ると傾斜30度程度で斜面を登って行く。速度はゆっくりだが、乗車時間約4分標高差約100mを登る(高度計付き時計での計測)。

 

長~い斜行エレベーターで上がってゆく

残念ながらこの時間帯、エスカレーターは休止していた

山上の住宅街に着くと、周囲は山また山

 

段丘の上にあがると、そこは住宅地だった。住宅地は平坦な土地に展開されているようで、全体像を見渡すことはできなかった。あまり人を見掛けなかった(平日の昼間)この新興住宅地の未来までは予想しないが、こんな大規模な移動手段を作ってまで、山中に巨大な住宅街を造成したバブル期のすごさを垣間見た思いだった。