今回の北海道ツーリングでは、今まで利用したことが無い形態の宿に泊まった。これがなかなか塩梅が良かった。こういう宿が全国に普及すると良いのだが。
この宿は、バイク販売最大手「レッドバロン」が設けている「BIKE STATION(バイクステーション)」と称する簡易宿泊所である。全国に6箇所あるが、その内3箇所が北海道にあり、私はこの3箇所全てを利用した。最初は「バイク屋が運営してる宿泊施設なんて、どんなもんかいなぁ」と疑心暗鬼だったが、初めて泊まった稚内のバイクステーションに着いた瞬間、それは吹き飛んだ。ロケーションは良いし、清潔で設備も必要にして十分だし、所員の応対も申し分ない。

稚内空港近くの牧草地にある「BIKE STATION稚内」
芝生でテントを張っても良い


部屋の内部。二名まで泊まれる。TVは無い
シンプルで清潔だった
これら全て宿泊料のみで無料で使え、石鹸や洗剤、シャンプーなど全て備え付けられているので、自前のモノを一切必要としない。そして何よりも清潔に保たれていること。まあ、決して新しい建物ではないし、感嘆すべき豪華な設備でもないが、不潔であったり不備な点は無く、バイクツーリングで必要とされる設備は十分に備えられている。また、このバイクステーションには、隣接してレッドバロンの整備工場や店舗があるので、オイル交換や修理もやってもらえる(有料)。
さてここの宿泊料だが、レッドバロンでバイクを購入した人(会員)は素泊まり2100円と非常にリーズナブル。コンビニで弁当や酒をしこたま購入し、それらを足しても4000円でおつりがくる。ところが、会員以外のビジターは4090円と約二倍の料金。これでは安いビジネスホテルか民宿と変わらず、さほどメリットは無い。この宿泊施設の目的は会員の囲い込みであろう。こんな低料金ではとても儲かりはしない。しかし、「レッドバロンの会員になればこんなメリットがありますよ」という所を見せたいのだと思う。会員は優遇、非会員は冷遇という図式は、非会員には頭に来ることがあるらしく、それが苦情にもなっていることは、過去の仕事柄、それは知っている。お得意さんを大事にすることと、誰をも平等に扱うことはなかなか両立しない。
これは一バイク業者の小さな試みで、こんな施設が全国各地に点在していればもっとバイクツーリングがやり易くなるかもしれない。そこで思い出したのが、自転車の「サイクリングターミナル」(http://www.j-cycling.org/ct/index.html)である。この存在は意外に知られていないのだが、競輪の収益で作られた「サイクリングターミナル」と称する宿泊施設が全国に25箇所ある。施設によって料金は異なるが、だいたい二食付で6000~8000円。建屋や設備は、一昔前によくあったシンプルな公共施設ぽく、至って質素だが(一部に豪華な施設もある)、料金は比較的安いので私は結構利用している。あまり知られていないので多くはいつも空いているし、もちろんサイクリストだけが対象じゃなく、誰でも泊まれる。ただ、サイクリングターミナルと称している割には自転車に特化していない(精々レンタサイクル程度しかやっていない)のが良い点でもあり、悪い点でもあり、単なる特長の無い安宿に成り下がっているサイクリングターミナルも多い。
一民間企業のレッドバロンの試みには、ビジターにとっては多少不満だろうが、会員でもあり、ツーリングを趣味とする人間としては拍手を送りたい。単なるチープな宿ではなく、ツーリングライダーだけに的を絞り、ライダー同士の交流や自分のバイクを目の前で整備できることは、他のどんな宿泊施設に無いメリットだ。無料のライダーハウスが下火というか、ほぼ壊滅状態になった昨今、この様な施設があっちこっちに出来たら良いなと思う。