今日21時から、坂本龍一の直腸がん発覚後から亡くなるまでのドキュメンタリーをやっていたので、観ました。

 

 

今回は、死生観がテーマになっていたせいか、「がん患者坂本龍一」的な演出が多かったようにも感じ、ちょっとな・・・とも思ったのですが(坂本龍一の日記を読み上げる声がジジ声で病人感マシマシに感じましたね。個人的にはもうちょっとドキュメンタリ風の無機質、中性的な声のほうがよかったなあ)、全体としては良かったです。

 

 

本のほうが、坂本龍一そのもの(withがん)って感じで私の気持ちや発想にはしっくりきました。

 

 

「がん患者」っぽさが強めだったとはいえ、坂本龍一や周りの人が、闘病に「夢中」にならなかった、というメッセージが、本人の日記の引用や、周りの人の語りからにじみ出ていたのは、良かったな。

 

 

あとは、途中で医師(本で「アドバイスしてくれる医師」と出ていた人の一人だろう)が、抗がん剤のスキップを異例のことだと評していた部分。

個人的には、すごく、「ユーレカ」した瞬間だった。

そうか、医者は、抗がん剤ファーストなんだ。っていう。

 

 

私にとっては、がん治療も、生きるための治療であって、QOLが下がる治療であれば、自分の生活の質を鑑みながら必要限度においてやりたいと思うものだった。副作用を減らす手段があるならば、必要ならば使いたい。

でも、通ってる大学病院の血液内科の医師は、副作用を減らす手段を検討さえしていなかったし、ゲロゲロ吐いてもう無理、レジメン変えてくれ、といっても、「若いんだから頑張れ」と言ってなかなか変えようとしなかった。頑張って耐えろ、抗がん剤ファースト、が彼の絶対的な思想信条だったわけ。

 

 

間に入ってくれた看護師に、私の健康や生命にかかる治療なのに、なぜ担当医の価値観で治療を進めなきゃいけないんだ!と強めに文句を言ったら、次からレジメンが変わった。患者の意思や都合ってものは、なかなか治療に反映させてもらえない。

 

 

生きるために抗がん剤治療をする。

つまり、自分の仕事とか、大切にしていることをやるための命を長らえるために、抗がん剤を使うのが、患者にとって本当の意味での治療であり医療だと思う。

 

 

仕事や大切なことを犠牲にする医療は本末転倒なのだ。そもそも、無理して治療したら治ることが約束されているわけではない。そして、治療によって、合併症、副作用がほぼ確実に起きる。それも今の科学では趣味の悪いクジ引きみたいに、どの副作用が来るか、いつまで続くか、何を取られるかは、なってみないとわからない。

 

 

患者が自分の仕事や大切なことをやれるように、判断に必要な情報を与えてくれるお医者さんがもっと増えてほしい。患者自身が適切な自己決定ができるように。

 

 

治療法を示され、スケジュールを与えられ、イエスorノーで回答するとなると、従順な多くの患者は無理してイエスというだろうし、生きるための抗がん剤を追求する人はノーが時々出てくる。そして、そのノーが、自分の命にどう干渉するか、教えてもらえることはできないのだ。

 

 

人が行うがん治療が進歩するとしたら、「生きるためのがん治療」を、医療者がもっと理解して、治療スキームを現代的に再構成する(もちろん、医療機関で実施可能なレベルで)、という部分なんじゃないかな。そう感じたドキュメンタリでした。

 

 

それにしても、

 

普段夕食は20時過ぎなのに、たまたま18時過ぎに食べ始める

手持無沙汰になり、ほぼインテリアと化しているTVをたまたまつける

たまたま今日21時からのNスぺの番宣が流れる

 

・・・という流れで、普段TVつけない人間がこの番組をリアタイ視聴してしまったのは、縁があるのかなあ。この間の本も、久々に入った書店で見つけたものだったし。なんちゃって。たまたま、です。