泳げカナヅチ君とチキン・ピッキン | 鳥肌音楽 Chicken Skin Music

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この間の日曜日の「山下達郎のSUNDAY SONG BOOK」を聴いていて「あぁ、そういうことだったのか」と溜飲を下げたお話です。大滝詠一師匠の『ナイアガラ・カレンダー』がらみです。



番組の方は前週に引き続き、今年が酉年ということで「CHICKEN」しばりの特集でした。その8曲目にかかったゴーゴーズGO GO’Sの「チキン・オブ・ザ・シー」についての達郎さんの解説を文字起こししてみました。

お次は歌ものでございますが、歌っているのはゴー・ゴーズ。あのべリンダ・カーライルのいたGO GO’Sじゃありません。あの80年代のグループじゃありません、60年代中期にですね何枚かシングルを出しましたグループですが男性3人組のウェストコーストのグループです、日本ではこれ割と有名な曲であります。ビクターがけっこうプッシュしました。タイトルが「Chicken Of The Sea」という、日本題が「チキン・オブ・ザ・シー ~スイム」B面が「悲しきロンリー・ガール ~スイム」、ようするに「スイム」のブームだったんですね「スイム」というダンスがありまして、ですからまぁオリジナルのタイトルに「スイム」ってつけりゃいい。しかもこれ多分、こっちのB面の、日本のB面のこの「ロンリー・ガール」って曲がたぶんA面として扱われたんだと思いますが日本ではこの「Chicken Of The Sea」というのは比較的あのその当時ラジオでよくかかった曲であります。



えぇ「Chicken Of The Sea」というのは「カナヅチ」、泳げない人のことだそうです。臆病者のチキンのニュアンスが反映された、Chicken Of The Driveというと何だっけな、車が怖くて運転できない人とかそういうことだそうでございますが、まぁどうでもいいです・・・。要するにカナヅチで、浜辺で俺は馬鹿にされているというそういうような歌でございます。

達郎さんも触れているように65年に日本では「スイム」というリズムが流行します、というかビクターが流行させようとしたみたいで、一番有名な曲としては大瀧さん監修でCD化もされていた「あの娘と僕(スイム・スイム・スイム)」で65年の6月に発売されています。同じく6月にはジャニーズによる「チキン・オブ・ザ・シー」のカバーもB面曲ではありますがシングルとして発売されていて、リアル・タイム世代の方はこのカバーでご記憶の方も多いのではないかと思います。

ジャニーズ/チキン・オブ・ザ・シー



橋もジャニーズもビクター所属であり、ウィキによれば”ビクターはこの年、スイムリズムに力を入れ、対象楽曲を7枚購入で、(東レの)ピチ水着が当たるキャンペーンを行っている”となっていますので、ゴーゴーズの「チキン・オブ・ザ・シー~スイム」もおそらくはキャンペーン対象商品として6月に日本発売されているのではないでしょうか。それにしても6月発売で水着があたるキャンペーンって7月末くらいまでにシングル7枚買わないとシーズンに間に合わないわけでわずか2か月で7枚のシングル買うというのはかなりきつかったんじゃないかと想像いたします。

閑話休題

達郎さんの解説でひっかかったのが次の一文。

>「Chicken Of The Sea」というのは「カナヅチ」、泳げない人のことだそうです。

「カナヅチ」と聞いて思い出すといえば、そう大滝さんの『ナイアガラ・カレンダー』の7月の歌「泳げカナヅチ君」のことです。カナヅチ君の歌とはいえテーマとしてはビーチ・ソングということでビーチ・ボーイズを思わせるJack Tones=大滝さんの一人多重コーラスが印象に残るナンバーです。そのコーラスの合間に入るギター(村松邦男)がアストロノウツやヴェンチャーズ、ディック・デイルなどのサーフィン・ヒットのフレーズを弾いているのも洒落ているのですが、最後のほうで何故かチキン・ピッキングのフレーズが出てきて「これだけサーフィンと関係ないのは何故?」とずっと思っていました。

ちなみにチキン・ピッキングというのは番組の4曲目で紹介されていたドン・リッチーの「チキン・ピッキン」というそのものスバリの曲を聴いていただければ分かる、ニワトリのコケーッみたいな音を出す弾き方のことです。

Don Rich & The Buckaroos - Chicken Pickin'



「泳げカナヅチ君」に何故このチキン・ピッキングが出てくるのかと言えばカナヅチ=チキン・オブ・ザ・シーだからだったというわけですね、なるほど。サーフィン・サウンドにのってスイムしたいと思っても結局はカナヅチで沈んじゃうってことをギターのフレーズで表していたのか。さすがは大瀧師匠と思いクレジットを見ると・・・。



アストロノウツやヴェンチャーズ、ディック・デイル、デュアン・エディという名前の後にゴーゴーズの名前がしっかりと書かれていました。ちゃんとネタばらししてあったんですね。おそれ入谷の鬼子母神。

これは発見やとえらそうにブログに書いている僕は、お釈迦様の鼻を明かそうと筋斗雲に乗って何千里も空を飛び、そこにあった大きな柱に自分の名前を書いて鼻高々で戻った孫悟空が、その柱は自分の指だとお釈迦様に明かされぎゃふんと言わさせられたように、僕たちはいつだって大瀧さんの手の平の中。すごいお人です、まったく。



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