タミーとたのしい夜更かし 冬の大瀧週間その4 | 鳥肌音楽 Chicken Skin Music

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冬の大瀧詠一週間 その4です。



すでにヤフーのニュースなどでお知りの方も多いでしょうが米女優デビー・レイノルズDebbie Reynoldsがお亡くなりになりました。享年84歳。R.I.P.

そのニュースで初めて知ったのですがデビー・レイノルズってキャリー・フィッシャーのお母さんだったんですね。当り前ですが父親であるエディ・フィッシャーの苗字ということもあり全然気づいていませんでした、お恥ずかしい。

オールデイズ・ファンには57年の映画「タミーと独身者Tammy and the Bachelor」(日本未公開)の主題歌で全米NO.1となった「タミーTammy」を歌った歌手としてお馴染みかと思います。映画では17歳の役でしたが、実際は25歳ですでにキャリー・フィッシャーを産んだ後だったというのはちょっとびっくりでした。


Debbie Reynolds - Tammy



「タミー」の作者はジェイ・リヴィングストンJay Livingstonとレイ・エヴァンスRay Evansのコンビで、この二人ナット・キング・コールでお馴染みの「モナ・リサ」やクリスマス・ソングの「シルヴァー・ベルズ」、ドリス・デイの「ケ・セラセラ」など印象に残る名曲を書いています。あとモータウンを作ったベリー・ゴーディJrは自分のレコード会社を作るに際し名前を当時ヒットしていた「タミー」からとってタミー・レコードにしたのですが、版権の問題でクレームが入り「タムラ」にしたのだそうです。

閑話休題。


歌手としては「タミー」が一番有名ですが、女優としては何と言っても20歳の時に大抜擢された「雨に唄えば Singin' In The Rain」のキャシー役につきると思われます。ということでFACEBOOKの方で追悼のコメをアップした際に「雨に唄えば」でジーン・ケリー、デビー・レイノルズ、ドナルド・オコナーの3人が歌う楽しいナンバー「グッド・モーニング」を一緒にアップしました。

"Good Morning" ~ Singin' in the Rain



Debbie:おはよう
Donald:おはよう
Gene:夜通しおしゃべりしちゃったな
Debbie:おはよう
Debbie,Donald,&Gene:君に おはよう おはよう おはよう
          夜更かしは素敵だね 
          おはよう 君に おはよう 


Donald:バンドが演奏を始めた時 太陽は輝いていた
Gene:牛乳配達がやって来る おやすみ言うには遅すぎる
Debbie,Donald,&Gene:そうさ おはよう おはよう
          お日様も微笑むよ
          おはよう 君に おはよう 
Debbie:あなたにも あなたにも そして私にも! 


三人で新しいミュージカルについてあれやこれやと楽しくおしゃべりをしている間に夜更かしをしてしまい陽が昇る時間になってしまったことを歌っています。

現在は「グッド・モーニング」と邦題も英題そのままにクレジットされていますが、公開当時はこの歌「夜更かしは楽しいよ」という邦題で知られていたようです。

うん? 夜更かしは楽しいよ、どこかで聞いたことあるような?

早速、検索してみると大瀧さんの次のような言葉がヒットいたしました。


ドナルド・オコーナーとジーン・ケリーとデビー・レイノルズが<夜更かしは楽しいよ>というのを歌ってますよね、今、DVDだと曲名が違ってんだけど。その3人とワタシ、山下、銀次の3人との夜更かしをダブらせたのよ。


そうだったんですね、名盤『ナイアガラ・ムーン』の中の「たのしい夜更かし」というタイトルおよびテーマは「グッド・モーニング」にあったんですね。ホントいろんなとこからネタを拾ってくるお方です、大瀧師匠。

ネタ元といえば、「たのしい夜更かし」に中の”午前0時は宵の口 楽しいよ””午前三時は宵の喉 楽しいよ”の元ネタについて話している音源がありました。

追悼 大瀧詠一さんの言葉2008年「楽しい夜更かしのモチーフ」


午前0時は宵の口だから、午前3時は宵の喉というね。ありゃ「雑排」なんだよねネタは。あのー〈春風亭〉柳昇のー、柳昇さんだよね。「えー口なしや鼻から下はすぐにアゴ」ってんで落ちていく。「アゴなしや・・・」ってだんだん落ちていって「ヘソなしや・・・」で止まるという。あれからちょっといただいた。 

「雑排」だったんですね、落語も好きな師匠らしいネタ元です。柳昇というひょうひょうとしたとぼけた咄家の落語からというのも、個人的に関東だと柳昇は好きな咄家だったので、なんだか分かる、分かると思ってしまいます。


春風亭柳昇(五代目) 雑俳(ざっぱい)


枕の決め台詞「わたくしは、春風亭柳昇と申しまして、大きなことを言うようですが、今や春風 亭柳昇と言えば、我が国では…、わたし一人でございます…」っていうのも懐かしいですね(笑)。

最後に曲の方の元ネタですが、これはもう大瀧さん本人がアルバム『ナイアガラ・ムーン』のライナー・ノーツでネタ明かししていますから有名ですよね。

ニューオリンズが生んだシンガー、アーニー・ケー・ドゥ(ERNIE K-DOE)の名作”いじわるママさん”をもじった曲。尚、この曲のもじりは、ニール・セダカとバリー・マンのコンビで61年にやっています。(スウィート・リトル・ユー)、僕のは二番もじりです。


ERNIE K-DOE - ''MOTHER IN LAW'' (1961)



ポップ・チャート、R&Bチャート両方で全米1位という大ヒットとなった「いじわるママさん」(「ままはは」という身もふたもない邦題もあったようです)の作者はニューオリンズの顔役、故アラン・トゥーサンです。とうさんがママの歌を作ったという分けです。

「いじわるママさん」で印象的な♪マザー・イン・ロウ♪を歌っているのはベニー・スペルマンBenny Spellmanという歌手で、この歌が大ヒットした時に”あれは俺のベース・ボーカルがあったからヒットしたんだ”と言いだして、ちょっとしたもめ事になったようなのです。で、ごねたベニーをなだめるためにアラン・トゥーサンはベニーのために「リップスティック・トレイセズLipstick Traces (on a Cigarette)」という歌を録音し、さらにはアーニー・ケイ・ドゥまでがバック・コーラスで参加してる(異説あり)というのですから、どんだけーという感じがします(笑)。

Benny Spellman - Lipstick Traces (On A Cigarette)



くりかえされる”Don't leave me no more”のところが”Mother-In-Low”そのまんまというのが、この2曲の関係性を物語っている気がしますが、流石に二匹目のドジョウはそうそう居ないようで、こちらはR&B28位、ポップ80位というマイナー・ヒットに終わっています。

ところで、この曲ニューオリンズ好きのリンゴ・スターによって78年カバーされています。




ヴィニー・ポンシアのプロデュース、いい感じなんですけど、パンク/ニュー・ウェイヴの時代にはあって無いですよね。

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