脚注を入れていたらアップできる文字数(4万字)を超えてしまいましたので
「その1の1」と「その1の2」
に分けることにしました。
面倒ですが「なにとぞよしなに」
毎年恒例 山下-大瀧 両巨頭による新春放談
さてさて、今年はどんな話がとびだすことやら
山下達郎(以下Y) みなさん新年あけましておめでとうございます。山下達郎です。
えー毎週日曜日午後2時からの55分間は私山下達郎がお送りいたしております
「JACCSカードSUNDAY SONG BOOK」
(注:Tokyo FM系列ネット)
えー2006年1月元旦の放送でございます。
今年2006年も変わらぬご愛顧何卒よろしくお願い申し上げます。
えー皆様どのような年末年始お迎えでございましょうか
今年もSUNDAY SONG BOOK はりきってやってまいりたいと思います。
毎年お正月は恒例「新春放談」
大瀧詠一さんゲストにお迎えいたしまして今年もはりきって始めてみたいと思います。
昨年の12月SUGAR BABEの「SONGS 30TH ANNIVERSARY EDITION」
30年記念盤が出たばかりでございます。
(注:1975年4月25日発売なので実際は昨年が30周年)
この話を今年は多分中心にお届することとなると思いますが、
また例年のようにあちらこちらに回り道しながら、脱線しながらやってまいりたいと思います。
山下達郎SUNDAY SONG BOOK 1月元旦と言う珍しいパターンでございますが
毎年恒例大瀧詠一さんをゲストに「新春放談」
それではお知らせをはさみまして早速始めてみたいと思います。
-CM-
M1 SUGAR BABE「すてきなメロディ」
- シュガー・ベイブ SONGS 30th Anniversary Edition
Y あのー、 「(ナイアガラ)トライアングル」じゃないですか
- 伊藤銀次,大瀧詠一 山下達郎, NIAGARA TRIANGLE 1
大瀧詠一(以下O) 「ナイアガラ」ね。今年ね。
いよいよ「トライアングル」ですよ。30周年記念、3月21日に
Y それはもうやってるんでしょ
O まだ始まってない
Y あーそうなんすか。あのーボーナス・トラックその他は?
O あれ、だいたいにして長いでしょ元々が
Y そうですね
O あれもう60分近いからね、あんまりボーナスはあんまり入んないじゃないかと思いますよ。
あんまりネタは無いし
Y 前、何でしたっけ。シングルバージョン入れたんだっけ?
(注:95年版には「幸せにさよなら」「ドリーミング・デイ」「ナイアガラ音頭」のシングル・バージョン収録)
O 何入れたっけ せいぜいね。
Y あと「ナイアガラ音頭」のなんか違うやつ
O あります
Y でしたよね。あれとまた変えるんですか、何か?
O いや、せいぜい。
Y せいぜい。ヒャハッハッハツ。
O まぁあれはあんなモンでしょう。だいたいが長かったからねあれは元々からね。
Y あのーシングルバージョンの「幸せにさよなら」を入れたんですよね、10年くらい前には
O 入れましたっけ
Y えー出した時入れましたよね。
O へぇー
Y あのー 僕のバージョンってのは入れます?
(注:3人がそれぞれソロで歌ったものを編集で現在のバージョンにしているため、
個々のソロ・バージョンが存在する。以前新春放談で達郎バージョンをオン・エアした。)
O あなたのはほら「TATSURO FROM NIAGARA」に取っててあげたんだよ
(注:1980年7月10日日本コロムビア。「RIDE ON TIME」の大ヒットを受けて急遽編集されたベスト。
「SONGS」「トライアングル」から達郎がボーカルのナンバーを12曲収録。ナイアガラとの契約終了後で
あったが、80年まで原盤権を持っていたコロムビアが勝手に編集したナイアガラ番外編といった一枚)
Y あーそうですか、ギャハッハツハツ
O 一応ね。
Y あれもやるんですか?
O やりましょうよ、どうですか? いや 嫌ならいいよ
Y いや、何の問題もないですよ。
O まぁただね、 僕が編纂したものじゃ無かったので・・・
まぁ 新たに・・・
Y あれに関しては、あんまり抵抗ないですよ僕
O あのーだから79年?
Y 79年。
O 9年でしょ。だから
Y 「(ナイアガラ)カレンダー」(77年12月25日)の後ですよ
O だから30周年だったら89年じゃないですか、あっ2009年。
うん2009年に予定しております。
(注:上にも書いたように実際は80年。ってことは2010年まで待たされるのか?)
Y なんだかんだ言ったってだけどあと4年ですよ
O まぁあっと言う間ですよ。
Y 今回はだけどすごくハガキがきてるのはね
ああゆう「レッツ・オンド・アゲイン」とかCDになってないやつ
あと ほら「多羅尾伴内」とかああいうのどうするんすか
ああいうのは出すんでしょちゃんと
O 出しますよ、今回は えぇ。
Y 「BLACK VOX」とかあいいうのはどうするんすか
(注:ナイアガラが81年CBSソニーに移籍した際に、売れないだろうとリイシューを見送られた
アルバムが5枚 ありました。「ロンバケ」のヒットによりソニーでの発言力が強まった大瀧社長は
「イーチ・タイム」の発売にあわせ1984年一挙に5枚BOXという形で再発を断行いたしました。)
収録アルバムは
O いや、ああいうのはもう需要が無い と勝手に考えてますけど。
Y たしかは「多羅伴」は・・・
O 「多羅尾」はね2in1にします。
Y フンフンフンそれはCDにしてないでしょ、まだ。
O してなかったでしたっけ? 一回やりましたよね。
Y あの BOX化はしてあるけど単発じゃ出てない。
(注:上記BOXのCD版として87年6月21日にCD化。その時にリミックスが施され曲も差し替えられた
「多羅尾伴内SPECIAL」として全18曲の2in1のCDになった。
ちなみにLPはvol.1 vol.2とも12曲収録。)
O 単発で売れるようなもんじゃないと思うけどね
Y 2in1ですね、じゃぁ
O うん2in1です。
Y わりとプレイングタイムがちょうどいい感じで
O まぁちょうどいいかなと思いますけどね。夏冬ってな感じで。
Y 今年はだからあれじゃないですか「トライアングル」が終わったら
「GO!GO!NIAGARA」でしょ。
O 「GO!GO!NIAGARA」はね、いやぁ秋にしようと思って。間に合わなくて。
大滝詠一 GO!GO!NIAGARA
(注:75年にスタートした大滝DJのラジオ番組の雰囲気をレコード化。76年10月25日発売。
大滝のHPの年頭のあいさつによると30周年盤は9月21日発売予定とのこと。)
Y なるほどね
O うーむ。 今あのスタジオの改装もやってるもんですからね。
ようやっと30周年で全部引越しも終えて 。
Y また建てられるんですか?
O 建てるってほどのものでもないですけどね
Y 一応でも防音のアレはするんでしょう
O いやもうただの倉庫
Y 倉庫?
O うん、倉庫ですね。
Y 前のやつってあの板のあれじゃないですか
元祖パワーステーションみたいな世界で
(注:NYのスタジオ名。エンジニアのボブ・クリアマウンテンの手により80年代の名盤が
数生み出されました。)
O うん出てきましたねー 懐かしかったけどねー壊してたら。
Y でもね僕ね今回の「SONGS」のアレ聴いてね、あの「すてきなメロディ」って
あそこでサンパチのマイクで、ソニーのサンパチのマイクで
(注:ソニーC38B通称「サンパチ」。当時業界標準だったらしい。)
あそこの板のあれで録ったじゃないですか
O 板の後ろのオフ・マイクで、えぇ
Y あれが、二人でやってるからやっぱりものすごく回り込みが、はっきり出てるんですよね。
だからあれがあのモロ、板のあの音になってるじゃないですか。
O えぇ で、ワン・マイクでね、ちょっとバランスがおもしろくなかったですけど。エンジニアが未熟で。
Y いえいえ。
O でピアノが福生スタジオのあのアップライトのピアノの音をダビングしたの
(注:大滝の自宅に作られたプライベート・スタジオ)
Y そうですよね。あれはだから「ナイアガラ・ムーン」のああいう「論寒牛男」とか
- 大滝詠一, NIAGARA MOON
O そうです。あと例の「マーママー、フムフム、ヘイヘーイ」
Y あれもあそこですね
O あれもあそこです。だからけっこうねダビングはいくつか福生スタジオで録りました。
Y これ今回のね。 今回の「SONGS」ってほとんど大瀧さんにもう任かせっきりで
(注:95年の20周年盤は山下達郎監修でWEAから発売されていた。)
O えぇ
Y 全部大瀧さんのマスタリングもそうだしボーナストラックの
その選曲もそうだしいろいろありなんですけど。
O 2曲の選曲は山下くんにやっていただきましたけどね
Y はい。でーえっとまず僕だからね今日初めてね
ずーっと聴かない方がいいと思ってねずーっとね、その方が新春放談が面白いと思って
O あーなるほど。
Y ずーっと伺わなくて今日が初めてなんですけど
僕もねけっこう記憶違いだったんでうけど。
このLFデモと呼ばれるヤツは8トラックだったんだそうですね。
その「夏の終わりに」のこれは8トラックだ
O 8トラックだったんですよ。
Y 4トラックだとばっかり
(注:95年盤の解説でも達郎は4チャンネルと書いていた)
O 僕も4だと思ってた
8だったみたいなんですよ
Y それでその「夏の終わりに」のそのマルチってのはどっから出てきたんですか?
O これがあのあれですよ、あなたもご存知の牧村さんが持ってましたよ。
Y へぇー、何で?
O だからどうして牧村さんの手にあったのって話をね、今度会った時にお話しますってことで
今そのままになってるんですけど。
Y へぇーそもそもねだって僕がえっとあの「GO!GO!NIAGARA」とか「ナイアガラカレンダー」とか
「ロンバケ(ロングバケーション)」までの時はこのマルチがどこに行ったか分からないって
僕言われてたんですよ。
O 「ロンバケ」の時にマルチはあったんですよ
Y へぇー
O あの 4チャンだと僕が思っていた。
でもその4チャンのテレコが無いのでかからないなぁっていう
ブツの係りはしてたの
Y なるほど
O 箱の。で同じ箱でした。
で開けたら8チャンネルで
Y だってこのLFデモって大瀧さんが録ったんでしょ?
O 録りましたよ
Y 大瀧さんがエンジニアしてましたもんね
O えぇしてましたよね恥ずかしながら。
Y あれ あの本物のこっちの16トラックのマスターってのもひところ紛失したって聞いてたんですよ
70年代の・・・
O 16?ありますよ。
Y あるんですよね
O えぇ
Y だからいつ頃から、 それは始めからずっとあったものなんですか
(注:話の流れからすると達郎が20周年盤を監修したときの元になったマスターは
オリジナル・マスターではないということなのでしょうか)
O いやぁ一回どっかなくなったっていう噂があって今はちゃんと
ナイアガラ・エンタープライズに保管してあります。
Y なるほど それは聞くまで知らなかった(うまく聞きとれず)
O えぇーだからあの30周年が終わってまたさらに山下くんにはリミックスというのが
40年目にあってもいいんじゃないかなという意味合いで。
今回は30周年でナイアガラ・レーベルの30周年ということでやらしてもらいました。
M2 SUGAR BABE「夏の終わりに」デモ
- SUGAR BABE SONGS
Y 僕ね だけどリミックス嫌いなんですよ。
(注:ソニーから86年6月1日に初めて発売されたCDは吉田保がリミックスをしていてアナログと
かなり印象が違っていたため、達郎監修の20周年盤はオリジナルのミックスに戻されていた)
O 本来はあまりやるべきではないと
Y だから誰がなんと言おうとこのオリジナル・マスターが唯一あのアレでね
これが一番、やっぱり、なんですよ。これじゃないと「SONGS」じゃないの
O たまたまこうだっただけですけど、あのーエンジニアの笛吹童次としては
(注:大滝がエンジニアをするときの別名)
僕を使ってくれたのはあのー山下くんと大森さんだけなんですよ
Y 嘘つけフッフッフッ
O で大森さんは多分僕がやるから仕方なくやったんだと思うんだけど
でーこれ意外でも使ってもらったのは山下くんだけなんですよ。
Y あーそうなんだ。
O あの「巻き巻きカール♪」と
Y うんそういえばそうでしたね。
O 「電リク75」
Y 「電リク75」!「2000tの雨」の元
Y、O フハッハッハッァ
O 「電リク80」まで録ったんだけど78年くらいで終わったんだよね、「電リク」が。
Y 5、6、7、8ぐらいまで
O あれ持ってないんですか音?
Y あれマスターが紛失したんです。
O あっそう。
Y あのター坊の「電リクは~ちじゅう♪」っての良かったですよね。
Y、O フハッハッハッ
Y そうなんだ
でもね僕このとき74年の後半からじゃないですか、あのレコーディングはじめたの
74年の秋くらい
O 74年の秋
Y 秋からじゃないですか。この頃僕もコーラスのスタジオ・ミュージシャンけっこうやってたんですよね
そうすると
O でジーガムの前にやってました?
Y えぇ。もう矢野さん、あの矢野誠さんとかわりと・・
(注:プロデューサー、矢野顕子の元ダンナ。大貫妙子を発見したのも彼。)
O 9.21より前に?
Y いや、違うコレ74年だから9.21の後ですよ。
O あぁ73年か 俺が言ってんのは。 ジーガムが73年の9月
Y うん9月かそこら。 で翌74年になって
O なってから多かったんだよね。
Y でレコーディングが始めたのが74年の秋口からだから
O うん
Y LFデモってのが4月くらいじゃないですか
O そうそう
Y 74年のね。それから、その間の夏ぐらいにけっこうスタジオで僕仕事してたの
O やってたようでしたね。
Y とにかく、そうすっといわゆる歌謡曲とかロックでも何でもいいんですけどね
あの、やっぱり無指向で回りぐるっと囲んでね、
それこそビーチボーイズの写真とかああいうのがあるから
ヨンナナかなんかで無指向でぐるっと回ってやるもんだと、ずーっと、あの思ってスタジオへ行くと
みんなノイマンが単一指向でもっと寄れってやらされるんですよ。
そうすっと下手すると一人に一本みたいなね、そういうマイキングされるんです。3人だったら3人で。
バンドなんかでも、そうやって人のバンドのレコーディングなんか行くとね
まぁあんまり言うと差し障りがあるから、僕の友達のバンドのレコーディング行っても
例えばAKGのマイクが4本立ってて4人コーラス別々に録られる。
そうすっとリミッターがだから全部別だから位相が、今から考えるとそうなんだけど、
位相が妙に変じゃないですか。
そうすっとだからハモらないですよ、だから音像が違うからね
そうだったらこうその一本のマイクでぐるーっと回ってやった方がいいんじゃないですかって言うと、
「余計なこと言うんじゃない」って言うんですよ
O フフフフ怒られたの
Y うん。そいで人のコーラスいってても 「そんなねスタジオ・ミュージシャンふぜいがね、
マイクがどーたらこーたら言うんじゃない。」って言うんですよ。
そういうことを言われるんですよスタジオ行くとね。何処とは言いませんけど。
だから「SONGS」を始めた時に大瀧さんがサンパチとかで、ねぇ
O 僕はずっと昔から無指向でしたから
Y 無指向でしょ。だからそういうところって他にないから。
だからやっぱり大瀧さんはそういう例えば吉野(金次)さんとか、
(注:日本におけるプロデューサー型レコーディング・エンジニアの草分け。はっぴいえんど、
吉田美奈子、矢野顕子、沢田研二、矢沢永吉、中島みゆき、佐野元春らを手掛ける)
それからやっぱりアメリカ行ってはっぴいえんどの時にご覧になったり
そういうような知識でねそういうのやってんだなっていう、 あのー、って思って。
で最初にあの「ココナツ・ホリデー」やってる時代からそういうレコーディングしてたでしょ。
- はっぴいえんど ライヴ!!はっぴぃえんど
- (注:「ココナツ・ホリデー」LIVE収録)
O やってました
Y だから僕はそんなもんだと思って他のスタジオ行くと全然それが通用しないのね。
O あぁー。まぁね、笛吹童次はアマチュアですからね。
Y いや、だけど、フフ、逆に期せずしてそういうなんかメジャーなレコーディングのエンジニアっていうか
メジャーなスタジオとかメジャーなレコード会社のミキサーっていうか、
それまでの旧態依然といったらおかしいけどそういうロックのノウハウとか何にも知らないね
いわゆる歌謡曲のカラオケに歌が少しでも大きくのっけて歌はっきりさせようって
そういうミキシングで育ってきた人でこういうレコード録ったら
こういう音しないわけじゃないですか
O うーん
Y だから、それは絶対このオリジナル・マスターがね一番ロックンロールしてるんですよ。
「その1の1」終わり
続きは「その1の2」へ↓
http://ameblo.jp/sugarmountain/day-20060106.html