その頃、カレルにあったリヴィウスとクリューガーとは、
敵将シルヴァヌスがそのような非業の死を遂げたことなど露知らず、
ようようにしてギィーナス軍を打ち破りカレルまで辿り着いた
ドラローシュたちをねぎらうのに忙しかった。
腕に巻いた包帯は痛々しかったが、リヴィウスは久方ぶりに
明るく笑い、よく喋った。
クリューガーはそんなリヴィウスをまるで父親のように見守っていた。
「で、ギィーナス将軍は捕虜となっているのだな?」
と、クリューガーは軍師ベリサリウスに確認した。
「いかにも。
投降された時も、敵将ながらあっぱれなお方でした。」
「そうだろうとも。
グランゴワールにギィーナス、シルヴァヌスありと唄われた
名将だからな。」
「シルヴァヌス将軍の方は、まだ見つかっていないんですよね?」
リヴィウスが口を挟む。
「そうだ。 まだまだ油断できんぞ。」
そちらの方へ歯を見せて笑いかけながらクリューガーは言った。
「早く捕えてしまわんと、ゆっくり眠れんからな。
捜させてはいるんだが…なかなか、な。
なに、グランゴワールには、あとはたいした武人はいない。
まあ、ゆっくり休んでくれ、ベリサリウス、ドラローシュ殿。」
「そう願いたいものですな…。」
さしものベリサリウスも安心したのであろう。
滅多に見せぬ笑みの形に唇の端を吊り上げかけた時、
そのことは起こった。
「将軍っ! 大変です!!」
クリューガーの前に青ざめた部下がまろび入って膝をつく。
「何事だ!?」
一気に空気は緊迫した。