ふっと太陽のように暖かなクリューガーの顔が脳裏をよぎった。
困ったことがあればいつでも俺のところに来いと、あの男気のある将軍は、
何度も言いはしなかったか?
クリューガーの元に行けば、大船に乗ったも同然だった。
力も財力もあるトラキネ伯。
必ずやロマンダルの追っ手から、上手くバルセロナを隠してくれるだろう。
(クリューガー将軍のところへ行こう。)
我ながら打算的だな、と思いながら、バルセロナはその好意に
甘えることに心を決めた。
(私はもう…耐えられない。
あなたの生き方と私の生き方とは…違いすぎる。)
(この子はロマンダル王家とは何のかかわりもない、
私一人の子として育てます…。その方がいい。)
心が決まると表情さえすっきりと晴れやかになって、
バルセロナはてきぱきとわずかな身の回りの品をまとめ始めた。
(出て行くのは、夜。気付かれないように。
どこかで馬を調達できるだろうか…?)
ふいっとテュアレスから貰った愛剣に目をやる。
(これだけは…いただいていってもいいですよね? テュアレス王子。)
かつてロマンダルを去った日の思い出が心に蘇り、
バルセロナの目頭を熱くした。
(どうして…こんな日が来るのだろう…?)
バルセロナの顔が苦痛に歪んだ。