「君は…狂っているのか、スミルナ?」

「どうして…。愛しているだけだわ、シルヴァヌス様、あなたを。

逃げないで。私から逃げないで…!」

じりじりとあとじさっていくシルヴァヌスとの間をさらに詰めようと

両腕をひらいてスミルナが歩み寄っていく。

「スミルナ…

悪いが、私は君を愛していない。

私は行かなくては。愛する姫のもとへ。」

恐怖に駆られて口走ったシルヴァヌスの言葉に、

スミルナは奇妙な表情になった。

「愛して…いない?」

「そう…だ。」

「私を置いて…どこかへ行ってしまう?」

「そうだ、私はリュブディアスへ行かなくては!」

「リュブディアス…! あの女王のところへ…。」

鬼気迫るスミルナに、シルヴァヌスはもう蒼白だった。

「行かせはしない! 行かせはしないわっ!」

どこにそんなものを携えていたのか、

スミルナの火ぶくれした手には白い短剣が掲げられていた。

シルヴァヌスは恐怖に捕らわれながらさらにあとじさった。

「やめろ…、やめるんだ、スミルナ。」

「私を置いていくのなら…あなたを殺す!」

歴戦の将として名高いはずのシルヴァヌスが、恐怖に足を取られ、

尻餅をつくように倒れこんだ。

スミルナが振りかぶる。きらめく刃。

「やめ…ろ!」

現実のものとも思えぬままにシルヴァヌスは絶叫し、

そしてその意識は白くなり、消えていった。