「リジイア、いっしょにいらっしゃいよ。
王妃様がプロセのために楽団を呼んでくださったのよ。」
「いいえ、プロセルピナ、いけません。
リジイアはネストル宮へ帰るのよ。
…誰か、この子をネストル宮へ送り届けて。」
眉間に縦皺を刻んでキュアネレア王妃はうとましそうにリジイアを見る。
小さなリジイアの心は、そんな目つきだけでも粉々になる。
「さ、王女様。」
母王妃の意を受けて女官がリジイアの腕を取る。
見開いたリジイアの瞳に、扉が閉まる寸前、哀れむような父王の顔が
映り、そして厳重に扉は閉じられる。
「さあ、王女様、ダールス様が心配されていますよ。」
「一人で帰れるわ。」
ヒステリックに叫んで、リジイアは女官の手を振り払う。
泣くまいと見張った瞳には、既にぼんやり、もやがかかっている。
リジイアは肩を震わせて立ち尽くし、大粒の涙が珠のように
床で弾ける。
透明な、それでいて鋭い響きが耳を震わせ、
光の破片がますます散らばる。
リジイアはダールスの勧めで、母王妃の誕生日の贈り物を用意した。
最高級のレースを取り寄せて作らせた小物入れで、
王妃の侍女をしていたファーナの母の助けを借りて、リジイア自身の手で
小さく薔薇の刺繍を施したものだ。
誰もが褒めてくれるほど見事な出来映えで、リジイアの胸は誇らしさで
いっぱいだった。