「あれが、敵の将か。」

城壁の上で腕組みしながら静かにルブランは言った。

将自ら前線に躍り出て自分の剣で道を開いていく。

将軍というより剣士の名が似つかわしかった。

鮮やかな剣技に幾人もの兵士たちが倒されていく。

剣を振るいながら、生き生きと大柄の男の顔は輝いている。

負傷した金髪の副官を庇っているとは、ほとんど感じさせないほどだ。

「弓で狙わせてはいるのですが。」

ルブランの側にいた士官が恐縮したように言った。

「無駄だな、やめておけ。」

とはルブランの立場では言えなかった。

黙ってルブランは頷いた。

味方は一応善戦している。もはやあとがないからだ。

ここを突破されては、敵兵がカレル市内に入る。

カレル市内には士卒たちの家族が大勢いるのだ。

(だが、私には何もない…。)

暗い目をしてルブランは思った。

(帰るべき家も、守るべき人も。

心がかりはテレーズの亡骸なのだが…。)

「司令官閣下、いかがいたしましょう?」

「そうだな…。」

指示を与えようと手を上げかけたルブランの前に、

一人の兵士がまろびこんだ。

「大変でございます。」