1R
最初から強く振っていくマルチネス。
右を叩きつけ、左を突き上げる。
井岡はディフェンスしながら左ボディを差し込む。
負けてない。下がらせた。
本当に井岡は前で戦うのか。
一旦止みかけたマルチネスの暴風雨が再び押し返す。
それでも井岡、左ボディ。
初回から既に一進一退だ。
2R
マルチネスが行く。乱暴とも思えるほど振る。
しかし井岡、耐えて凌いで、やはり左ボディ。
マルチネス止まる?いや止まらない。
マルチネスの拳に跳ね上げられることあっても、井岡は丁寧に左右のボディを打ち込む。
井岡は本当にこの距離で対処し続けるのか。
前半の、序盤のマルチネスは怖い。
3R
リング中央、引かぬ打ち合い。
いやマルチネスの圧力、風車が上回っていくのか。
それでも井岡の攻撃は丹念、丁寧だ。
時折マルチネスの拳に身体が弾かれても、下へパンチを集めて削っていく。
しかし今までこんな井岡を見たことあったか。
何となく自分の中で、鬼塚勝也さんの最後の防衛戦が重なっていく。
結果は同じになって欲しくないけど。
4R
この回も変わらない。
マルチネスが振り、井岡は一息つくまで耐えしのぎ、そして下へとパンチを集める。
この一進一退でダメージを溜めているのはどっちだ。
しかしこんなに打たれている井岡は見たことない。
そしてこんなに打ち返すことも。
5R
マルチネスは時折まとめて振ってくるが、段々と井岡の方が前に出るシーン多くないか。
左ボディ、右アッパー、右ボディ。
熱いぞ井岡!
井岡はこの場所で、マルチネスを制することが出来るのか。
6R
マルチネスの拳は怖い。
でもやはり井岡がマルチネスを下がらせていないか。
強烈なパンチを受けながら、それでも確実に井岡の拳が下へ下へと突き刺さる。
本当に井岡は前でマルチネスを止め下がらせている。
恐るべき有言実行だ。
7R
ラウンド序盤のマルチネスは怖い。
それでも自発的に起こる井岡コール。
東京で今までこんなことあったか?
グッと胸が熱くなる。
途端にギアが上がったマルチネス。
しかし井岡は細かくボディを叩いて押し返す。
マルチネスの拳も死んでない。
でも行け井岡!
8R
しかし中盤を過ぎても全然落ち着かない。
両者フルスロットルで駆け抜ける。
マルチネスの凶暴な拳の回転が上がった。
井岡の顎が跳ね上がる。
しかしやはりボディ。
ラウンド終盤は井岡が出る。
ラウンド伝い、マルチネスは早くコーナーに帰りたいか。
9R
各ラウンドが終わる毎、フーッと大きく息をつく。
エンドレスな一進一退、このままいくのか、それとも…
マルチネスのスイングを頭上でやり過ごした井岡だが、このラウンドは返しが単発。
マルチネスの回転が止まらない。いや井岡も上がっていくか。
繰り返されるラウンド内の一進一退。
10R
井岡の顔、打ち合ってるほどには腫れてない?
やはり貰っているようでズラしているか。
ふと思う。こんなに打ち合っていてもほとんどクリンチがない。
井岡コールを背に受け、後押しされ、行け!井岡。
マルチネスの左フックに緊張感走るが、右ストレート顔面、ヒットしている。
11R
動きながらマルチネスがボディへパンチを集める。
セカンドウィンド?
しかし前に出ているのは井岡。
マルチネスの風車を上体でかわす。
いやマルチネスの圧を珍しく足でかわした。
12R
最終回、両国にこだまする井岡コール。
リング中央、炎の打ち合い。
井岡は最後まで、自分が言った仕事を貫徹する。
スイッチも交えて打ち合うマルチネスを井岡出れるか、いや出る。
マルチネス倒れた!
ウォー、思わず声が出る。裁定はスリップ。
何度も言う。井岡は自ら発した言葉を最後まで実行し続けた。
死力を尽くした両者に大きな拍手。
スコアが読み上げられる。
116−112
117−111
120−108
えーーーっ
確かにどのラウンドも一進一退だった。
ラウンド毎、それぞれどちらに振り分けるか迷うところ。
しかし、しかし…
採点なんか付けながら見てないよ。
だから感情文なんだと開き直る。
その感情というフィルターで、いつもよりは冷静さを欠き、曇っていたのかもしれない。
でも、でも…
だから感情的に言う。
勝敗は問わない。
でもこの採点は、フルマークは、井岡一翔の奮闘が1ラウンドも評価されてないなんてことは…ない。
でも後で周りと話したら、結構皆さんシビアな見方をしていた。
これも事実。