⛄ザ・スノードーム | 雨 風 呂

⛄ザ・スノードーム

 

 

 


エピローグ
太陽系最大の衛星、木星のガニメデ。(惑星の水星より大きい)
宇宙植民地でもっとも地球に近い環境を持つガニメデの首都、ザ・スノードーム。
太古の昔、隕石が氷の衛星ガニメデに落ち、球形の空洞ができる。
隕石は空洞に留まり溶けた氷は隕石の周りに湖を作り、隕石は島となる。
木星探検隊が発見し、空洞に酸素を貯め、宇宙植民地に改造。
島には北欧の木々が生い茂り、氷壁に張られたLED人工太陽が世界を照らす。



木星の冷たい闇の中で、彼らはそれを最初"氷の涙"と呼んだ。
巨大な氷の衛星ガニメデの内部に、
まるで誰かが思い切り裂いた後のような完璧な球体の空洞があったのだ。
発見当時の宇宙飛行士アンナの記録はこう綴っている。
「まるで巨大な水晶の玉を割った内部を見ているようだった。
壁面は青白く光り、中心には黒い岩の島が浮かんでいる。周りの水は鏡のようだった」
中心の島は国立公園となっていて、湖を取り巻くリング状の陸地、
リングシティは隕石が突入した時、ドーム端部に破片やチリが降り積もってできた大地だ。



あの岩——直径三キロほどの鉄質隕石は、1億年も前にガニメデを襲撃し、
衝撃で衛星内部に空洞を作り出した。
溶けた氷が再び凍り、隕石は湖の中心で、まるで故意に置かれたような孤島となった。
ガニメデの氷層にできた空洞は直径10キロにもなり、湖の下には島を支える氷底が広がる。
最初の入植者たちは酸素ボンベを抱えて降り立った。
開発当初は水を電気分解して酸素を得ていたが今では植物が酸素を作り出している。
空洞の壁面に取り付けられた巨大な照明が、まるで朝日のように青白い氷を照らす。
湖は凍らない——隕石の衝撃で地下海までヒビが入り海水と混ざり汽水湖(きすいこ)
となっているからだ。



「ここで育つ木は、必ず地球を思い出すだろう」
入植者の長老、オーレさんが最初に植えたのはシカモアの実生だった。
彼女は地球で最後に見たクリスマスマーケットの蒸気の立つグローウァインの匂いを覚えていた。
小さな苗木は隕石島の黒い土壌に根を張り、驚くほど速く伸びた。
空洞内の重力は地球の八分の一、北欧の針葉樹はここで山ほどの高さに育つ。
三世代目の入植者たちが成人した頃、ザ・スノードームは完全な街になっていた。
中心の隕石島は「ストックホルム(Stockholm:丸太の小島)」と呼ばれ
湖岸には電動ボートや水上飛行船が浮かぶ。



ドーム天井には隕石が通った跡の「天窓」が開き、
そこから見える木星は、巨大な赤い目のように住民を見守っていた。
「おばあちゃん、地球のクリスマスってどんなだったの?」
八歳のミカが訊ねると、オーレさんは温かいココアを啜った。
重力の弱い空間では、湯気が不思議な渦を描いて立ち上る。
「雪が降る前だったよ。街の灯りはオレンジ色で、人々はマフラーを巻きながら歩いていた。
ブリキのトナカイが店先に並び、子供たちは鼻を赤くして駆け回っていた」



彼女の指が「天窓」の外を指す。木星の大赤斑がゆっくりと移動している。
かつて隕石が通った跡の「天窓」は透明な氷で塞がれ
並行して作られたシャフトはガニメデ表面とを繋ぐパイプラインになっている。
市場の広場では、隕石島の古いシカモアが巨大なツリーに変身していた。
実際にはこれは遺伝子改良された雲杉で、
枝は水平に広がり、オーナメントを掛けるための枝が人工的に増やされている。

樹液は自然に甘く、子供たちが指で触れると粘りつく。
「去年のオーナメントは、地球から持ってきた最後のガラス玉だった」
市場の主人エリックが言う。彼の店には手作りの木製オーナメントが飾られている。
これは隕石島の古いシカモアの枝を削って作ったもので、
木星の模様が丁寧に彫られている。
広場の中央では、巨大なアドベントカレンダーが組み立てられていた。

これは二十四個の小さな引き出しからなる木製の箱で、
各引き出しにはこの街の歴史が刻まれている。
十二月一日、最初の引き出しを開けたのは、ちょうど百歳になったオーレさんだった。
「最初のクリスマスはね、缶詰の果物と粉ミルクで作ったプディングだったの」
彼女の声に、周辺の人々が集まる。
引き出しの中には、変色した写真が一枚——若いオーレさんが、
まだ小さかったシカモアの木の前で立っていた。

湖の向こうでは、ボートに乗った家族たちが集まり始めている。
湖面に映る木星の光が、まるで水中にもう一つの惑星があるかのように見える。
子供たちはボートの縁から身を乗り出し、光をすくおうとする。
「お父さん、本当にサンタさんは来るの?」
ミカの父親は、湖の端にある巨大な換気口を指差す。
そこから毎年十二月二十四日の夜、巨大な飛行船が上昇する。
これは古い酸素タンクを改造したもので、
内部にはプレゼントが詰め込まれている。



夜になると、街の灯りが一斉に消えた。
「天窓」から射す光は月夜の明かりのようだ。
そして始まる——光のショー。
空洞の壁面LED人工太陽がスクリーンとなり、
地球の極地で見られたオーロラが再現される。
子供たちは歓声を上げる。
その光のカーテンの中に、なにやら光る物体が見える。
それは飛行船——サンタの到着だ。



飛行船はゆっくりと降下し、
湖の上に浮かぶ特設のプラットフォームに着地する。
中から出てきたのは、もちろんエリックだった。
赤い服は、実は古い宇宙服を染めたものである。
「みんな、今年の特別プレゼントは何だと思う?」
エリックが開けた箱の中から現れたのは、小さな苗木だった。
これは地球最後のクリスマスツリーの種から育てられたもので、
オーレさんが密かに育てていた。

「これを皆で植えるんだ。次の百年のクリスマスを」
子供たちに抱えられた苗木は、まるで生きているように見える。
オーレさんは、百年前に地球で最後に見た雪の結晶を思い出す。
あのとき彼女は、まだ少女で、母親の手を引いてマーケットを歩いていた。
湖の端で、新しい穴が掘られ始める。
これは隕石島の反対側、まだ開拓の余地がある公園の敷地。
ミカが一番に土をすくい、苗木の根に優しく触れる。

「おばあちゃん、これは本当に地球の思い出を持っているの?」オーレさんは微笑む。
「持っているよ。でもね、これはもう新しい思い出を作り始めている。
ガニメデのクリスマスは、もう地球のそれとは違うものなの」
木星の光が、苗木の先端で踊る。
これから百年、この木は見守るだろう——人々が地球の伝統をどう新しく紡いでいくかを。
空洞の壁面には、既に次の世代の子供たちの落書きが描かれ始めている。
小さな手で描かれた木星に、赤い鼻のトナカイが並んでいる。

夜明け前、最後のプレゼント交換が始まる。
これはガニメデ独特の風習で、人々は自分が一番大切にしていたものを、見知らぬ誰かに渡すのだ。
ミカは、オーレさんがくれた古い地球のオーナメントを、見知らぬ少年に手渡す。
少年は驚き、そして自分の作った木製の木星を差し出す。二人は笑い、抱き合う。
その瞬間、空洞の照明が完全に消え、本当の闇が訪れる。
しかしすぐに、住民たちが持つ無数の小さなランタンが灯り始める。
これは昔、酸素不足の危機の際に使った懐中電灯を改造したもので、中には本物の松の葉が入っている。

ランタンの光が、氷の壁に無数の星を作り出す。
オーレさんは、百年前の地球の夜を思い出す。
でも今、ここにいる。新しい家族と、新しい伝統と共に。
「おばあちゃん、また来年も?」
ミカが尋ねると、オーレさんは頷いた。
「もちろん。ここはもう、私たちのクリスマスがある場所なんだから」



木星に太陽の光が当たりガニメデにも朝が来る。
巨大な惑星が、ゆっくりと夜の顔を朝の顔に変える。
住民たちは、新しく植えられた苗木の周りに集まる。
小さな枝には、既に来年のオーナメントを掛けるための紐が結ばれている。
これがザ・スノードームのクリスマスだ。
地球で忘れられたものを、ここで思い出し、そして新しく作り直す。
空洞の中で、北欧の木々は雲まで伸び、木星の光は永遠に降り注ぐ。
飛行船からは霧が放出され、冷えた空気で凍結した氷の結晶が空から降り注ぐ。





🔔宇宙植民地ザ・スノードームは自分のオリジナルアイデアです。
他では見た事が無いので自分だけのアイデアだと思います。
ザ・スノードームは架空の植民地です。

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