人魚の生物学的考察 | 雨 風 呂

人魚の生物学的考察

雨 風 呂

一般に人魚(マーメイド)のイメージはアンデルセン作の童話、
人魚姫(Den lille Havfrue)による影響が大きい。
難破した船から溺死寸前の王子を救い出した人魚姫は王子に恋心を抱き、
魔女に声と引き換えに尻尾を人間の足に変えてもらうと言う話。
この物語でもやはり人魚と嵐による難破と言う関係が崩せない。
西洋の人魚(マーメイド)は一般に上半身が人間、
下半身が魚類の形態として伝えられる。
例外的に尾が2本と言う形態も存在する。
▼某コーヒーショップチェーンのトレードマーク
雨 風 呂
また地域による個体差かあり、生態も多少異なるらしい。

雨 風 呂

■メロウ
メロウ (merrow) は、アイルランドに伝わる人魚。
♀は美しいが、♂は醜い。
この人魚が出現すると嵐が起こるとされ、船乗りに恐れられる。

■ハルフゥ
ハルフゥ (Havfrue) は、ノルウェーに伝わる人魚。
漁師の間では人魚を見たら嵐や不漁の前兆とされた。
♂の人魚はHavmandと呼ばれ、人間に対しては好意的である。

■セイレーン
生息地は地中海。エーゲ海付近。
航海者を美しい歌声で惹きつけ難破させる海の魔物。
古代ギリシャでは上半身が人間、下半身が鳥と言う種属もいたらしい。

■ローレライ
ドイツ、ライン川に住む淡水生の人魚。
美しい歌声で船を引き寄せ、難破させる。
セイレーンの亜種と考えられる。

共通して言えるのは船が難破する様な気象を予知し姿を現す。
♀は美しい。♂は醜いが人間には危害を加えない。
船乗りを引き寄せる能力がある。
これらの要素から導きだされる生物学的生態は・・・
蟻クモや花カマキリの様に獲物を呼び寄せる擬態をし、捕食すると言う事。
水生生物として手とか顔とか髪の毛等は必要無いが、
獲物(船乗り)を引き寄せる有効な手段としてこの形態を持っていると思われる。

♂が美しくないのは船乗りが男で、♀にしか興味が無いと言うのが理由。
では何故♀が屈強な船乗りさえ獲物にし、♂は船乗りに危害を加えないか?
これは繁殖の為の栄養を確保する為だと考えられる。
蚊が産卵の時期に合わせて動物の血液を収集し栄養とする様に・・。
おそらく♂は魚程度で用が足りるのではないかと思う。
もしかしたら♀も産卵期以外や食料の豊富な環境では
人間を捕食しないで済む可能性もある。

産業革命以降、船は動力を得て音を立て高速で移動する様になる。
またレーダーの発達により進路を目視で設定する事も少なくなった。
それにより人魚の歌声も聞こえず、美しい姿も見逃す様になる。
結果、近代において人魚の目撃報告は無く、絶滅したと思われる。
もしくは海洋生物としての存在を諦め、完全な人間としての擬態をし、
人類に紛れ込んで生き延びていると言う事も考えられる。
あなたの身の回りにその様な者は居ませんか?


▼人魚伝説をベースに小説を書いてみました。