速記という方法があることは

知っていました。

 

国会でも必ず、

速記をされる方がいらっしゃいますよね。

 

議事録をとるために。

 

ですが、速記の詳細は知りませんでした。

 

昨日の日本教育史学会のある発表を聞いて、

速記の世界を少しだけ知ることが出来ました。

 

曰く、

速記は本人が議事録を起こす(反訳という)作業

を終えたら、もとの速記録は廃棄するのが普通。

 

しかし今回、ある資料群の中に、反訳されていない

速記記録のみが残っていることがわかったそう。

 

では、だれが反訳するか?

 

そもそも速記にはいくつかの系統があるらしく、

(〇〇式、〇〇式、というかんじで)速記者は、

自分が何式かはもちろん自覚している。

そして、大原則として、速記というのは基本的に

自分にわかればよいという形で速記していくので、

速記をした本人が反訳をする、

というのが常識だそう。

 

なんだけど、上記資料群の中にあった速記を

作った方はすでに消息を追うことは不可能。

というわけで、イレギュラーに、別の速記者が

反訳をすることになったそうです。

 

これがめちゃくちゃ超絶大変だったと。

 

まず、そののこされた速記が何式かをさぐる。

そして〇〇式ということがわかったら、

その形式に則って反訳をこころみる。

が、基本速記は速記している本人にわかれば

よいので、形式が一定ではなく、反訳不可能な

記号がでてきたりもする。

それをなんとか類推予測とか、タームの検索とかで

訳して行ったそうです。

 

そして反訳が終ったものを、発注者であるその資料の

調査を行っている研究者チームへ渡す。

研究者チームはその反訳を確認し、他の資料との

整合性などを検討し、不明な点が出たら

もう一度確認してもらうべく速記者チームへ戻す。

ということを繰り返す。

 

そしてある程度確定したら、その内容を研究に反映

させていく、という。

 

気が遠くなる。

でもすごいんです。

速記者チームの方々はその速記録(今回は教育関係)

に精通しているわけではないので、

研究者チームから周辺の重要語句を伝えていく。

速記というのは基本的に「音」を記号で記録していく

手法なので、音を反訳したときに、どの漢字が当てはまるか

などは、その分野によるのだそうです。

 

すごい。

速記は奥が深いなあ。

 

テープレコーダーが普及してからは、

そちらに移行していったと考えられます。

 

でもまだ速記をなさる方はいらっしゃるのだそうです。

 

私は編集者になりたてだった頃、

まだICレコーダーは今ほどメジャーでなく、

普通にテープレコーダーで録音していました。

座談会とか。

 

それで座談会が1本終わると、

それを手分けして文字起こししていました。

 

フリーになってからも、

テープ起こしの仕事はいくつか請け負っていました。

だいたいの換算で、テープの時間×3倍の時間が

文字起こしにはかかりました。

自分が出席していた取材や、自分が記事をまとめるための

文字起こしだとらくなんですが、

逐次起こしだとすんごい大変

 

ざーっとおこしてから誤字脱字がないかチェック、

意味が通っているかチェック、

わからない感じはその内容分野で調べてチェック、

と、何重にもチェックしてから納品です。

 

ただ、この仕事をしていたおかげで、

キータイプはそこそこ速くなり、

今回の書籍編集中の編纂委員会議事録は、

ほぼ、オンタイムで聞きながらすべて書き取ることが

できました。とにかく時間がないので、簡単に正確に

済ませたかった。

いろんな技術を身に付けておくと、

どこで何が役に立つかわかりませんね。

 

ちなみに、音声データを自動翻訳させるソフトは

出ていますけれども、

やっぱりまだ、自分で起こす方が時間がかからないかな。

人間の脳は、多種類の処理を一括でしていくことが

可能なので、文字起こししながらどんどん編集したりする。

AIがメジャーになれば、条件を設定しておくとそれに沿った

起こしをしてくれたりもするのかもですが、

今のところはヒトの脳のほうが一歩先に行っている印象です。

 

ちょっと話が広がってしまいましたが。