先日、日本から世界文化遺産に推薦している群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺跡群」について、ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関であるICOMOS(イコモス)により、「登録が適当」との勧告がなされました。
深夜の朗報に大変喜ばしいと感じるとともに、地元の方々をはじめとして、関係者の皆様が富岡の価値をきちんと世界に発信された成果であると思っています。

富岡製糸場は、1872年に明治政府が西欧の近代技術を導入して設立した最初の官営の器械製糸場で、後に民営化されます。
製糸技術の革新とともに、原料となる良質な繭を大量生産する技術の確立によって、それまでの生産方法ではなしえなかった生糸の大量生産に成功しました。
世界最先端の製糸技術は国内の養蚕製糸業を世界一の水準に牽引し、日本の近代化に大きく貢献するとともに、
かって一部の特権階級のものであった絹を世界中の人々に広め、その生活や文化をさらに豊かなものに変えました。
また、当時としては労働者に配慮した先進的な雇用環境であり、そしてここで働いた工女たちが、その後各地に戻って我が国の製糸業の発展に貢献したと言われています。

こういった、高品質生糸の大量生産を実現した「技術革新」と、世界と日本との技術の「交流」への普遍的価値がイコモスに認められました。
世界遺産に登録されることで、「富岡製糸場と絹産業遺跡群」の価値が国内外に広く理解されることが大いに期待されます。
最終的な結論は6月にカタールで開催される世界遺産委員会で決定される予定で、勧告通りに世界遺産に登録されるよう、最善を尽くしていきます。

日本では13件の文化遺産と4件の自然遺産が登録され、アジアでは中国に次いで2番目の多さです。
来年の世界遺産委員会に向けては、福岡県など8県にまたがる「明治日本の産業革命遺産」を推薦しています。

世界遺産は、保護・継承すべき貴重な人類の遺産であると同時に、国内外から観光客を呼び込む観光資源として地域経済を潤す可能性を秘めています。
今後も、価値ある遺産の保護・継承に努め、積極的な世界遺産登録を目指してまいります。